映画とライフデザイン

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映画「658km 陽子の旅」 菊地凛子

2023-07-30 22:38:37 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「658km 陽子の旅」を映画館で観てきました。


映画「658km 陽子の旅」菊地凛子上海国際映画祭で主演女優賞を受賞した作品である。監督は熊切和嘉「夏の終り」「私の男」など連続していい作品を作ってきたが、今回久々に彼の作品を観る。疎遠だった父親が亡くなり東京から青森までヒッチハイクで向かうロードムービーだということは事前情報でわかる。ストーリーは何となく想像できるが、菊地凛子の演技が気になり映画館に向かう。この映画の菊地凛子は疲れている役柄だけど、近況の姿はすごくきれいになった感がある。

東京の古いアパートで引きこもり気味に1人住む42歳のフリーター陽子(菊地凛子)の元を従兄弟の茂(竹原ピストル)が、青森にいる陽子の父親が亡くなったと伝えにくる。陽子は呆然とするが、一緒に車で青森に向かおうと茂にいやいや引っ張られ同乗する。

ところが、高速のサービスエリアでの休憩中に、茂の子どもがトラブルに巻き込まれてその場を一時離れる。トラブルが起きた時に別の場所にいた陽子のスマホは使えない状態になっていた。茂の車が自分を置いて先に行ってしまったと思い、駐車中の車に北の方面に行ってくれと頼む。

主人公は最初からヒッチハイクで青森へ行こうとするわけではない。高速のサービスエリアで置いて行かれてしまうのだ。しかも、スマホもないし、所持金は2000円足らずだ。やむなく、誰かの車に同乗せざるを得なくなるのだ。


典型的なロードムービーで、青森に向かう菊地凛子をひたすら追う映画である。出ずっぱりの菊地凛子は東京のアパートに引きこもりに近い状況である。人との関わりがなくなって他人とのコミュニケーションがうまくとれない。ヒッチハイクで同乗した人ともうまく話せない。そんな状況をうまく演じている。そこにファンタジー的にあの世に行ったオヤジ役のオダギリジョーがからむ。これも趣きがある。


ただ、脚本は欠点だらけだ。青森に送っていく従兄弟とハグれないとストーリーが成立しないのはわかるけど別れ方の設定が強引すぎるし、菊地凛子が携帯持っていないのがわかっていての従兄弟の行動ではない。当初人との会話ができない菊地凛子の表情に途中から変化がみれるのはわかるけど、何か不自然にみえる。ロードムービー特有の色んな人との出会いも強引な流れが目立つ。時間が2日くらいあるならともかく、一晩の設定ではこれだけの出会いと移動はキツすぎる。

自分は福島から東北青森方面に運転したことあるからわかるけど、高速だけでなく下道も走るのにこんな早く明るいうちに着くわけない。しかも、福島の海側からだ。


それでも、「私の男」で雪景色を美しく映した熊切和嘉監督北国を撮るのはうまい。ラストで撮った菊地凛子とそれを取り巻く雪が積もるショットはよく見えた。余韻をもった素敵なラストだと思う。
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