映画とライフデザイン

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映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」

2023-07-25 06:45:53 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」を映画館で観てきました。


映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」はドイツナチスのゲシュタポに幽閉されたオーストリア人の法律家を描いている小説家ステファンツヴァイク「チェスの本」の映画化である。チェスが絡んだ映画で面白い作品が多い。フランス映画に比較すると,ドイツ映画を見ることの方が少ない。大学の第二外国語がフランス語だったせいもあるかもしれない。最近ナチスを題材にした映画は多い。ほとんど回避しているがチェスが絡むとなると見てみたくなる。

第二次世界大戦の前、オーストリアにナチスドイツが大きく政治に関わるようになった頃,ウィーンで法律事務所を営むユダヤ系のヨーゼフにもナチスの蝕手が伸びてきた。ヨーゼフ(オリバー・マスッチ)は高級ホテルの一室に監禁されて、管理している貴族の銀行口座の暗証番号を教えるまで閉じ込めるとゲシュタポ(秘密警察)のベーム(アルブレヒト・シュッヘ)により尋問される。長期にわたったためヨーゼフの精神は錯乱した。一方で、ヨーゼフは見つけた一冊のチェスの本を読み暗記するのに膨大な時間を費やし、お手製の駒を動かしてシミュレーションしていた。

監禁が解けたあとで、妻とともにアメリカ行きの船に乗る。船内のチェス大会で1人のチェスチャンピオンが大勢の乗船客を相手にしているときに、客船のオーナー(ロルフ・ラスゴード)の打ち手に横から口出しをして引き分けに持ち込んでしまい信頼を得る。ヨーゼフはチャンピオンと試合することになる。

映画の質はそれなりだけどイメージが若干違う展開であった。
別にナチスの代表者とチェスしているわけではない。ナチスに仕掛けたというのはちょっと大げさだ。チェスのチャンピオンと試合している時にたしかに映像にゲシュタポの男が幻のように現れるが現実ではない


主人公のヨーゼフはナチスによる長年の監禁で幻惑に悩まされて精神が錯乱されて統合失調症になってしまう。映画の基調は絶えず、幻惑として現れるナチスのゲシュタポ(秘密警察)の面々を映していく。妻とアメリカ行きの船に乗ったつもりだったけど、実際には1人だったのだ。妻の姿もまぼろしだった。

もともとヨーゼフはウィーンでハイソな世界にいた法律事務所を営む弁護士だ。お抱えのクルマに乗りながら、豪邸に住む。ウィンナーワルツが華麗に流れる舞踏会でも妻と踊る。(解説では公証人となっているが、違和感を感じる。映画のセリフでは法律事務所を主宰する弁護士だ。)


自分が感じるのに、ロンハワード監督ラッセルクロウ主演の「ビューティフルマインド」に流れるムードと一緒だ。ゲームの理論のナッシュ均衡でノーベル賞を受賞したジョンナッシュ暗号解読にかかりっきりになり幻惑を見るようになる。監禁で心の安定を失うヨーゼフとの類似点を見出す。統合失調症にとらわれる男の心の暗雲を映す映像としては、色彩設計や画面構造も含めてこの映画も悪くはない。


ただ、チェスゲームが基調のNetflix「クイーンズギャンビット」や映画「ボビーフィッシャーを探して」のようにチェスゲームの駆け引きや勝ち負けでの興奮を期待すると肩透かしにあうかもしれない。それに、いくらチェスの本を繰り返し読んでも、チェスのチャンピオンと対等に戦うなんて話はありえない気がする。将棋の定石本や棋譜を監禁されて集中してディテイルまで読み込んでも藤井聡太と対決レベルになるはずはない。
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