映画とライフデザイン

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映画「豚と軍艦」今村昌平&長門裕之&吉村実子

2020-12-15 18:56:50 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「豚と軍艦」は1961年(昭和36年)の監督に昇格して3年目の今村昌平監督作品である。助監督は翌年「キューポラのある街」を撮る浦山桐郎がつとめる。日米安保条約の改定が終了した翌年の横須賀で地元のヤクザがシノギのため養豚を始めてあたふたするドタバタ話である。


昭和40年代前半自分がまだ小学校低学年だった頃、東京品川で育った自分は父に連れられてよく久里浜沖の火力発電所が見えるところで釣りをしたものだ。行く道中車が横須賀を通るとき英語文字の大きな看板が続く横須賀の街並みに異様な光景だと思ったものであった。

ここではもう少し時代が遡る。まさに戦後を引きずっている横須賀の街を山の上から鳥瞰する映像を織り交ぜ、まだ貧しく米国軍人に食い扶持を頼りっぱなしの横須賀住民が、貧乏長屋でギリギリで生活している姿も映し出している。安保闘争翌年の終わりには政治色は少ない。むしろ裏社会で悪いことをして生き抜こうとするヤクザに焦点を当てる。

港に軍艦が停泊する米海軍基地がある横須賀では、中心地のドブ板通りに米軍兵相手のキャバレーが立ちならんでいる。裏売春の元締め日森(三島雅夫)率いる一家は当局の取締りで根こそぎやられてしまった。そこでハワイからきた崎山(山内明)が基地の残飯を提供する話もあって大量の豚を飼育するしてしのぐことを考えついた。

チンピラの欣太(長門裕之)は兄貴分の鉄次(丹波哲郎)や軍治(小沢昭一)大八(加藤武)、そして星野(大坂志郎)とともにゆすったり、押し売りしたり、労働者のスト潰しまでやって金をつくり「日米畜産協会」なんてもっともらしい名前をつけて事業をスタートしようとした。


そんな時、やくざの春駒が勝手なことをするなとばかりに横須賀に戻ってきた。鉄次たちは面倒なやつを始末すると、春駒の死体を沖合まで捨てに船を出した。そして、兄貴分たちは欣太には万一のことがあったら代わりにムショに行け、そうすれば出所したら幹部になれるとおだてる。

使い走りの欣太は豚の飼育係をやらされる。春子(吉村実子)という彼女がいて、ハラまして中絶もさせている。春子は母(菅井きん)とオンリーの姉の弘美(中原早苗)と暮らしている。ハチャメチャな暮らしに嫌気がさして早くこの境遇から脱して欣太と横須賀から逃げたいと思っていた。

ある夜、鉄次が吐血して病院に担ぎこまれる。胃癌で余命短いとされ診断結果を受けた鉄次はがっかり、失意のあまり線路に飛び込んで自殺までしようとした。でも結局誤診で、鉄次は単なる胃潰瘍だったのだ。鉄次は、あとが短いから殺してくれよと頼んだ殺し屋に殺されるのではとまた血を吐いてしまう。

鉄次がよたっているうちに日森一家は組長の日森と、軍治・大八とに分裂してしまう。その上、崎山はハワイに逃げ帰ってしまうのだ。分裂したどちらも豚を売りとばそうと企み、トラックに乗せた豚を巡って取り合いの争いが起きて板挟みの欣太は右往左往するばかりであるが。。。

⒈昭和40年代のTVドラマで活躍する人たち
自分が小中学生時代にTVドラマでみる常連たちが演じているので、昭和36年の映画という感じがしない。後年は偉そうだった長門裕之もここではヤクザの下っ端というよりチンピラじみているし、長門よりももっと偉そうだったその兄貴分の丹波哲郎もまったくヤクザらしくなくオドオドする。胃がんになって失意のあまり京浜急行に飛び込もうとするシーンがご愛嬌だ。線路脇にある生命保険の宣伝看板の横であたふたするところが面白い。

長門裕之の奥さん南田洋子はここでは丹波哲郎の姐さん役、昭和40年代のドラマではむしろ善人のおじさん役であった三島雅夫や大坂志郎がヤクザ役で、今村作品の常連小沢昭一と加藤武の麻布中学同級生コンビも悪さをしまくる。


ここでは吉村実子のはち切れんばかりの若さが際立つ。当時17歳としてはかなり大胆、深作欣二夫人で意地悪おばさん的役柄が多かった姉役中原早苗もまだ若くてキレイだ。50年以上個性的脇役で欠かせない存在だった菅井きんもお母さん役で出ている。

⒉どぶ板通りに放たれる豚の群
街に豚が放たれることで有名な作品である。やけっぱちになった欣太(長門裕之)が機関銃を撃ちまくりながら、トラックにいる豚を道路に放り出す。そのシーンが有名なわりには豚が疾走はしない。ゆっくりと走っているだけである。


このどぶ板通り半分はセットだとは思うけど、イスラム教徒が大嫌いなこんな臭い豚が街に放たれたらたいへんだろうなあ。

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