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スペイン映画「マジカルガール」 

2016-04-14 20:58:40 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
スペイン映画「マジカルガール」を映画館で見てきました。

スペイン映画界の鬼才ペドロ・アドモドバルが絶賛しているスペイン映画が公開されているという。不思議ちゃんみたいな雰囲気に魅かれて映画館に向かう。


いきなりアニメが好きなような少女がでてくると、バックでは日本語の歌が流れて踊っている。一体何じゃという感じだ。そうするとその少女がばったり倒れる。少女が不治の病にかかっているようだ。父親は文学の先生だったようだが、リストラにあって無職だ。治療費もかかるし、子供のために娘が好きなアニメキャラクターグッズを買いたいんだけど金はない。そんな父親に主人公の女性が絡んでくる。


マジカルガールは不思議系の映画と思いしや、若干サスペンス的な要素もおりまぜる。基調は恐喝だが、それだけでは済まない。確かにペドロ・アルモドバルを思わせる独特な雰囲気で、一筋縄にいかない。カルロス・ベルムト監督はけったいな登場人物を次から次へと映像の中に放つ。徐々にそれぞれの出演者が人間としてのリズムを失っていく構図を見せ、緊迫感が高まる。美術、編集が上手で悪夢のような映像に引き寄せられる。傑作とまでは思わないけど、妙な後味を残す個性派の作品だ。

白血病で余命わずかな12歳の少女アリシア(ルシア・ポジャン)は、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。彼女の願いはコスチュームを着て踊ること。 娘の最後の願いをかなえるため、父ルイス(ルイス・ぺルメホ)は失業中にもかかわらず、高額なコスチュームを手に入れることを決意する。
どうしても金策がうまくいかないルイスは、ついに高級宝飾店に強盗に入ろうとする。まさに大きな石で窓を割ろうとした瞬間、 空から降ってきた嘔吐物が彼の肩にかかるー。

心に闇を抱える美しき人妻バルバラ(バルバラ・レニー)は、逃げようとするルイスを呼び止め、自宅へと招き入れる。 そして…。バルバラとの“過去”をもつ元教師ダミアン(ホセ・サクリスタン)は、バルバラと再会することを恐れている。 アリシア、ルイス、バルバラ、ダミアン―決して出会うはずのなかった彼らの運命は、交錯し予想もしない悲劇的な結末へと加速していく……。(作品情報より引用)

かわいい少女が白血病で余命少ないと診断される。父親は彼女のために何とかしたいと思うが、失業していて金がない。宝石泥棒に入ろうとした途端に、自虐的で少し心が病んでいる主婦であるもう一人の主人公が自家中毒でげろをした嘔吐物が彼の身体に落ちてくる。悪いことをしてしまったと反省する主婦が彼を家に入れようとすることですべてのリズムが狂いはじめる。

以下ネタバレあり
1.ユスリ(強請)
精神科医の旦那がいないのをいいことに、ふとしたことで知り合った男と寝てしまう。翌朝男から電話があると、旦那にばらすぞと脅しをかけてきたのだ。このユスリに対して、自分の身体を売って脅迫の代償を支払おうと主人公が動くのがこの映画のベースである。


強請は古今東西の映画の題材になってきたものである。強請が繰り返されていくうちに被害者による殺人事件が引き起こされるというのがよくあるパターンで、テレビ朝日のサスペンスドラマや韓国のクライムサスペンス映画では繰り返し広げられる。

2.強請への対抗
強請に対して、自分の立場を守るためにお金を用意する。それもやりたくないことをしながらだ。そこで脅迫者の言うなりになって金を支払う。このときに例えば交通事故の示談みたいに今後何も異議申し立ては致しませんなどと、一筆を書くようにはならない。これでいいのかと思うと案の定再度ゆすられる。ヤクザさんの恐喝も一回二回じゃ済まない。そういえば、飲み屋の女に「やったこと奥さんにばらすわよ」と百万単位でとられたという人を知っている。

こういう時ってどうしたらいいんだろう。やっぱりばれても仕方ないと腹をくくって警察に訴えるしかないんだろうなあ?

3.長山洋子「春はSARA SARA」
長山洋子というと演歌歌手としてのイメージしかないけど、アイドル歌手でデビューしていたんだなあ。監督のカルロス・ベルムトは大の日本びいきだそうだ。アニメ系アイドルも大好きなんだろう。来日している時は新宿ゴールデン街を徘徊しているようだ。自分も月の2,3回は夜の谷間におぼれているけどわからないなあ。今は外人多いからね。

4.大富豪の家
旧知の女性に頼んで高いお金を自分を買ってくれる女性のところへ行き、大富豪を紹介される。なんせ8時から15時までの拘束時間で7000ユーロ(約86万円)で買ってくれるわけである。この雰囲気がペドロアドモドバルの映画に出てくる大富豪にダブる。スペインの金持ってちょっと半端ないんでしょう。


さくっと脱いだバルバラ・レニーのヌードがエロっぽい。このあと何したんだろうと妙に想像させてしまう。そして出てくるのが黒蜥蜴だ。ご存じ美輪明宏の十八番で明智小五郎探偵のライバルだ。変装に次ぐ変装であらわれる盗賊である。その黒蜥蜴をクローズアップするところがすごい。

それにしてもラストに向けての動きはちょっと予想外
途中までの動きはいかにも物語の定石を歩む。ユスリへの対抗は、目には目をといった過激なスタイルなんだけど、突如バーンと来て驚き、そのあとも収まらない。こういう展開に持ち込むという発想が日本人脚本家にあるだろうか?いかにも中世から近世に至るまでイスラムに領土を奪われていたスペインらしい気がする。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (ここなつ)
2016-05-06 13:29:54
こんにちは。
弊ブログにご訪問下さりありがとうございました。
チョイスしている作品が結構似通っているので、ちょくちょくご訪問させていただいておりました。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
返信する
こちらこそ (wangchai)
2016-05-08 11:31:06
コメントありがとうございます。

マジカルガールの最後にむけての展開が驚きでした。娘のために脅迫をしていた父親が撃ち殺される場面、しかも何も関係のない店員が一気に消されてしまう場面、そしてその足でマジカルガールのもとへ行く悲劇的な場面、このあたりの連鎖はむごいというよりただ驚くしかない印象を受けました。

あとは黒蜥蜴の部屋の中でどういうむごいことがなされていたのかそれを連想するだけでもドキドキしてしまいます。

日本人の感覚でいうときっとこういう展開にしなかっただろうなと思い、この映画をつくったスタッフの次の仕事に期待しています。
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