映画「オペレーション・フィナーレ」は2018年のNetflix映画
1960年、イスラエルの諜報特務庁モサドの選抜された部隊が、アルゼンチンのブエノスアイレスで密かに生活しているユダヤ人大惨殺の責任者アドルフ・アイヒマンを捕らえて母国イスラエルに輸送するまでを描いている。
以前自分がブログアップした映画「ハンナアーレント」では、主人公である哲学者ハンナアーレントが傍聴するアドルフ・アイヒマンのイスラエルでの裁判が焦点になっている。ニュース映画映像で裁判の模様が挿入されていた。映画「ハンナアーレント」ではアドルフ・アイヒマンが捕らえられたシーンは一瞬だけど、今回はその経緯に焦点があたるということでみることにした。
アドルフ・アイヒマンをオスカー俳優ベン・キングスレーが演じ、アイヒマンを捕らえようとするイスラエルの秘密部隊ににオスカー・アイザック、フランスの美人女優メラニー・ロランが登場する。バックで流れる音楽も緊迫感を高め、映画の質は高い。傑作というわけではないが、これによっていろんな歴史的背景がよくわかり楽しめた。
1960年のブエノスアイレス、ユダヤ人のシルビアがひょんなきっかけでクラウスと知り合う。2人は恋に落ちていく。クラウスがシルビアの家に招かれ、盲目のシルビアの父と食事をしているときに、ドイツ人のクラウスの父親はすでに戦死していて、今は伯父と暮らしていることを話す。その後、クラウスはある集会にシルビアを連れて行く。反ユダヤ人で一致団結する集会でシルビアは圧倒されその場を去って行った。一連のことでシルビアの親子はその伯父リカルド・クレメントがユダヤ人虐殺の指揮官アドルフ・アイヒマンではないかと疑い、イスラエルに通報する。
イスラエルの諜報特務庁モサドに情報が入り、ピーター・マルキン(オスカー・アイザック)やハンナ(メラニー・ロラン)をはじめとしたチームが結成された。ピーターはアイヒマンと誤ってオーストラリア人を殺したことがあった。部隊のミッションはアイヒマンを見つけてその場で射殺するのではなく、そのままイスラエルに連行して裁判にかけるというシナリオである。
モサドのメンバー2人がシルビアとともにアイヒマンが住んでいると思われる家に向かった。シルビアが訪問する口実はクラウスとともに行った集会から先に帰ってしまった失礼を詫びるということである。家では母親と伯父(ベン・キングスレー)が出迎えた。帰宅したクラウスがシルビアに対してそっけない対応したために伯父は怒る。そのとき、横にシルビアがいたが、父さんわかったと思わず言ってしまう。
改めて、クラウスの父親がアイヒマンだということがわかった。モサドの特殊部隊がアイヒマンをおびき寄せて本人の身柄を確保する作戦を組み、夜分にアイヒマン宅の近くで待機するのであるが。。。
映画「ハンナアーレント」でもアドルフ・アイヒマンが捕まるシーンがある。「オペレーションフィナーレ」ではまったくの異国でアイヒマンの身柄拘束するまでの長い道のりを映画でじっくり追っていくのかと思っていた。ところが、意外に早い時間でアイヒマン本人を捕まえてしまう。あれ?という感じ。どちらかというと、この後がたいへんなわけである。単純にはいかない。この映画の焦点はむしろそこである。
1.イスラエル収監への道
アイヒマンを確保して、隠れ家に連れて行く。まずは、アイヒマン本人であることを認めてもらわなければならない。それに時間がかかる。しかも、自分で手を下したことも認めてもらう必要がある。アイヒマンはあくまで上の命令と主張する。しかも、アイヒマンは裁判を受けるならイスラエルでなく、アルゼンチンで受けるとも言っている。そう簡単にはいかない。この手順に時間がかかる。
もともと、アイヒマン本人を確保してアルゼンチンからイスラエルに連れて行くミッションがある。何でアルゼンチンに来るのかという口実も必要だ。アルゼンチン建国150周年を記念して、政府要人がアルゼンチンへ行って祝う名目で向かう。要人を乗せる空港会社の乗務員に諜報部隊が扮するのだ。この脱出劇は映画「アルゴ」なども連想させる。ある意味、滞在国の隙をついて脱出するということではカルロス・ゴーンの日本脱出も近い気がする。当然国際法に違反する。たやすいことではなかったのだ。
2.親ナチスのアルゼンチン政権
アルフレッドヒッチコック監督の作品に日本題「汚名」という1946年の映画がある。ケイリー・グラントとイングリッド・バーグマンがこれでもかという位熱いキスを何度も交わす映画である。この映画では、イングリッド・バーグマンの父親がナチスのスパイとして裁かれているという役柄で、ケイリー・グラントが南米に逃亡したナチスの残党を探し出すFBIの捜査官という設定だ。そして、映画「カサブランカ」の人情派警官クロードレインズが演じるナチス残党の親玉を南米リオ・デ・ジャネイロまで追っていくという話だ。
「汚名」をみたときには南米に逃れたナチス残党もいたのかという感じだった。その後「ハンナアーレント」、そして「オペレーション・フィナーレ」と併せた三作を通じて、南米にナチスの残党が数多く居住していた事実がよくわかる。
「ハンナアーレント」ではアドルフ・アイヒマンが南米で捕まったシーンが出てくるが、一瞬でそのシーンが終わるので、現地の警察が捕まえたと推測していた。ここでのイスラエルの特殊部隊はアルゼンチン政府に承認されたものではない。しかも、ナチス残党は離陸ギリギリまでアイヒマンを取り戻そうとしていたのだ。
南米にはもともとドイツ移民が多く居住しており、第二次大戦中にもアルゼンチンとナチスドイツは親しい関係にあった。大戦中は基本的に中立の立場でいたが、独裁政権を率いるファン・ペロン大統領はナチスドイツに恩義を感じていたのだ。戦後多くのナチス残党が亡命するときには人道的立場でローマカトリック教会も絡んだ。1955年にいったんファン・ペロン大統領が失脚するが、政策の流れは大きくはかわらない。この事件のあった1960年当時もナチス残党は勢力を保っていたのであろう。
高校の世界史では、当然のことながら1940年代半ばからアルゼンチンは親ナチスのファン・ペロン政権だったとは習わない。まったく知らない世界であった。映画は勉強になる。
1960年、イスラエルの諜報特務庁モサドの選抜された部隊が、アルゼンチンのブエノスアイレスで密かに生活しているユダヤ人大惨殺の責任者アドルフ・アイヒマンを捕らえて母国イスラエルに輸送するまでを描いている。
以前自分がブログアップした映画「ハンナアーレント」では、主人公である哲学者ハンナアーレントが傍聴するアドルフ・アイヒマンのイスラエルでの裁判が焦点になっている。ニュース映画映像で裁判の模様が挿入されていた。映画「ハンナアーレント」ではアドルフ・アイヒマンが捕らえられたシーンは一瞬だけど、今回はその経緯に焦点があたるということでみることにした。
アドルフ・アイヒマンをオスカー俳優ベン・キングスレーが演じ、アイヒマンを捕らえようとするイスラエルの秘密部隊ににオスカー・アイザック、フランスの美人女優メラニー・ロランが登場する。バックで流れる音楽も緊迫感を高め、映画の質は高い。傑作というわけではないが、これによっていろんな歴史的背景がよくわかり楽しめた。
1960年のブエノスアイレス、ユダヤ人のシルビアがひょんなきっかけでクラウスと知り合う。2人は恋に落ちていく。クラウスがシルビアの家に招かれ、盲目のシルビアの父と食事をしているときに、ドイツ人のクラウスの父親はすでに戦死していて、今は伯父と暮らしていることを話す。その後、クラウスはある集会にシルビアを連れて行く。反ユダヤ人で一致団結する集会でシルビアは圧倒されその場を去って行った。一連のことでシルビアの親子はその伯父リカルド・クレメントがユダヤ人虐殺の指揮官アドルフ・アイヒマンではないかと疑い、イスラエルに通報する。
イスラエルの諜報特務庁モサドに情報が入り、ピーター・マルキン(オスカー・アイザック)やハンナ(メラニー・ロラン)をはじめとしたチームが結成された。ピーターはアイヒマンと誤ってオーストラリア人を殺したことがあった。部隊のミッションはアイヒマンを見つけてその場で射殺するのではなく、そのままイスラエルに連行して裁判にかけるというシナリオである。
モサドのメンバー2人がシルビアとともにアイヒマンが住んでいると思われる家に向かった。シルビアが訪問する口実はクラウスとともに行った集会から先に帰ってしまった失礼を詫びるということである。家では母親と伯父(ベン・キングスレー)が出迎えた。帰宅したクラウスがシルビアに対してそっけない対応したために伯父は怒る。そのとき、横にシルビアがいたが、父さんわかったと思わず言ってしまう。
改めて、クラウスの父親がアイヒマンだということがわかった。モサドの特殊部隊がアイヒマンをおびき寄せて本人の身柄を確保する作戦を組み、夜分にアイヒマン宅の近くで待機するのであるが。。。
映画「ハンナアーレント」でもアドルフ・アイヒマンが捕まるシーンがある。「オペレーションフィナーレ」ではまったくの異国でアイヒマンの身柄拘束するまでの長い道のりを映画でじっくり追っていくのかと思っていた。ところが、意外に早い時間でアイヒマン本人を捕まえてしまう。あれ?という感じ。どちらかというと、この後がたいへんなわけである。単純にはいかない。この映画の焦点はむしろそこである。
1.イスラエル収監への道
アイヒマンを確保して、隠れ家に連れて行く。まずは、アイヒマン本人であることを認めてもらわなければならない。それに時間がかかる。しかも、自分で手を下したことも認めてもらう必要がある。アイヒマンはあくまで上の命令と主張する。しかも、アイヒマンは裁判を受けるならイスラエルでなく、アルゼンチンで受けるとも言っている。そう簡単にはいかない。この手順に時間がかかる。
もともと、アイヒマン本人を確保してアルゼンチンからイスラエルに連れて行くミッションがある。何でアルゼンチンに来るのかという口実も必要だ。アルゼンチン建国150周年を記念して、政府要人がアルゼンチンへ行って祝う名目で向かう。要人を乗せる空港会社の乗務員に諜報部隊が扮するのだ。この脱出劇は映画「アルゴ」なども連想させる。ある意味、滞在国の隙をついて脱出するということではカルロス・ゴーンの日本脱出も近い気がする。当然国際法に違反する。たやすいことではなかったのだ。
2.親ナチスのアルゼンチン政権
アルフレッドヒッチコック監督の作品に日本題「汚名」という1946年の映画がある。ケイリー・グラントとイングリッド・バーグマンがこれでもかという位熱いキスを何度も交わす映画である。この映画では、イングリッド・バーグマンの父親がナチスのスパイとして裁かれているという役柄で、ケイリー・グラントが南米に逃亡したナチスの残党を探し出すFBIの捜査官という設定だ。そして、映画「カサブランカ」の人情派警官クロードレインズが演じるナチス残党の親玉を南米リオ・デ・ジャネイロまで追っていくという話だ。
「汚名」をみたときには南米に逃れたナチス残党もいたのかという感じだった。その後「ハンナアーレント」、そして「オペレーション・フィナーレ」と併せた三作を通じて、南米にナチスの残党が数多く居住していた事実がよくわかる。
「ハンナアーレント」ではアドルフ・アイヒマンが南米で捕まったシーンが出てくるが、一瞬でそのシーンが終わるので、現地の警察が捕まえたと推測していた。ここでのイスラエルの特殊部隊はアルゼンチン政府に承認されたものではない。しかも、ナチス残党は離陸ギリギリまでアイヒマンを取り戻そうとしていたのだ。
南米にはもともとドイツ移民が多く居住しており、第二次大戦中にもアルゼンチンとナチスドイツは親しい関係にあった。大戦中は基本的に中立の立場でいたが、独裁政権を率いるファン・ペロン大統領はナチスドイツに恩義を感じていたのだ。戦後多くのナチス残党が亡命するときには人道的立場でローマカトリック教会も絡んだ。1955年にいったんファン・ペロン大統領が失脚するが、政策の流れは大きくはかわらない。この事件のあった1960年当時もナチス残党は勢力を保っていたのであろう。
高校の世界史では、当然のことながら1940年代半ばからアルゼンチンは親ナチスのファン・ペロン政権だったとは習わない。まったく知らない世界であった。映画は勉強になる。