@インターネットとベンチャー起業の密接な関係の実例
ベンチャー企業の隆盛のために必要な社会構造や文化的背景はインターネット、とくにブログの普及によって醸成される。その因果関係を論述する前に筆者の個人的な体験をご報告したい。
13、4年前に代々木高等学院というところで4年間ほど働いた。理事長は一色真司氏で、現在もJRの代々木駅の北側に看板が見える。彼が考え出した大変ユニークな高等学校である。
国民学校、新制市立中学校、県立高校、国立大学の教育しか受けなかった筆者にとっては驚くべき体験の連続であった。一色氏の信念は「学校は生徒のために有るもの。決して先生や経営者のためにあるのではない」というものであった。
学校は立身出世のため、そして国家繁栄のためにあると考えていた筆者は一色氏とよく議論した。ある日、彼は自分の家からコンピューターを持ってきて「これで、インターネットで広く情報をとる方法を覚えて下さい」と言う。
彼はインターネットを駆使し不登校に関する情報を集め、どの様な学校が必要とされているかという問題に一つの結論を出した。
中学校までは個人的な理由であまり勉強出来ず高校へ進学出来ない生徒。しかし高校は卒業したいし大学へも進みたい。そんな若者も多い。そこで通信教育制の高校と提携し、交通の便の良い代々木で実質的には普通の高校と同じ学校を続けることにした。
不登校の原因は複雑で簡単には解明出来ない。しかし学校で成績を重視しすぎているのが不登校を増加させている一因であろう。
「生徒のための学校」を実現する具体的な方法は多岐にわたる。まずそれを実行しようとする先生を集めなければならない。採用試験は一色氏の考えに共鳴し、かつその変革への実行力が有るか否かできめる。
日常の教室での先生と生徒の関係の築き方、職員室での机の並べ方、生徒の自由な出入りとある種の規制、などなど多い問題を一つ一つ解決しなければならない。ある時、修学旅行で行った観光地での集合写真を持ってきて一色氏が言う、
「この写真では先生が真ん中に座って居るでしょう。これでは従来の学校の考え方です。先生は端の方に映っていて丁度良いと思いますよ」またこうも言う「学校はある意味ではレストランと同じでお客が生徒です。お客の好みの料理を出さないで、シェフの好みで料理をだすレストランは良くない」
先生が偉いから集合写真では真ん中に座る。生徒は何を勉強すべきか分からないから先生の考えで教える内容を決める。こんな考えが従来は強すぎたのではないでしょうか?このような事業が成功し、もう15年も続き卒業生も1500人になるという。これは一色氏の個人的な企画・実行になる一種のベンチャー企業であり、その企画と生徒への広報活動においてはインラーネットが非常に重要な役割を果たしたことが明白である。(続く)