後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

山林の中に小屋を作る方法(7)

2008年01月19日 | うんちく・小ネタ

Dscn0948 @近所の農家に挨拶に行こう!

武川村の山小屋は1973年の暮れに完成した。翌年の早春の頃に初めて妻に娘、息子の一家4人で山林の東側で乳牛牧場をしているIさん一家へ挨拶に行く。

小屋のそばの清流の向う岸を登れば一面の白樺林。その下草を分けて道なき林を進むと突然青々とした牧草地に飛び出る。はるか向うに二十頭以上の乳牛が黒と白のまだら模様を浮き上がらせている。西側には残雪で白く輝く甲斐駒、下の岸壁が蒼く光っている。牧場のIさん一家へ挨拶をする。「西の方の白樺林の下に山小屋を作った藤山と申します。これから良く来ますので宜しく御願いします」同行した妻が東京からのみやげを出し、長女、長男も挨拶する。Iさんが「うちの牛は皆おとなしいから近くに行って見ても良いよ」小学6年と4年の子供たちが歓声を上げて牛のそばへ走って行く。ウグイスの声がこだまして空気が甘い。Iさんが言う「山小屋の完成のお祝いに明日の朝、絞りたての牛乳を届けるよ」。

翌朝、牛乳を一升瓶2本に入れて届けてくれたのは牧場のお婆さん。「今絞ったばかりだから温かいよ。でも生の牛乳は必ず沸騰させてから飲んでください」

絞りたての牛乳!朝食の時、沸騰させて飲む。気のせいかレモンの香のようでもあるし何か新鮮な果物と野菜の香が漂い、山小屋の中の空気が一気にほのかな匂いに満たされる。その後I牧場には随分世話になった。絞りたての牛乳の他にも色々珍しい食べ物も貰った。取れたての竹の子、白菜、豆餅、甘い赤飯など縁側でご馳走になったのも懐かしい。

何時行っても一家はニコニコして歓迎くれる。

牧場より少し登ったところにH養鶏場があった。孵化させてヒヨコにする種卵を生産していた。普通の卵の3倍くらい大きく、親鳥へ与える餌の栄養が良いので卵の味が一段と良い。何度も貰って朝食の卵料理にした。養鶏場のおばさんは花が好きで庭一面に色々な花が咲いていた。切花を頂き山小屋に飾った。椎茸も胡桃も貰った。みんな自分の手で作った物なのに、こちらからの土産の品は全て店から買った物なのが恥ずかしい。

4、5年して、ある時訪ねてみる。「おばさんも、おじさんもお元気ですか?」おばさんが奥の座敷にある新しい仏壇を指して言う「あんなふうになってしまいました」

急病であっという間に亡くなったという。淋しそうながら庭の花の話をしてくれた。

その後、ブルド-ザーなどの特殊車両の運転で収入を上げた独り息子が立派な家を建てあばさんと同居してりる。最近久ぶりに行って見る。留守で誰も居なかったが、庭一面に咲き誇る花々は昔のままである。花々が「おばさんは元気だよ」と言ってくれる。

山林の中に小屋を作るときには必ず近所の農家へ挨拶に行くのが良い。地元の人々は実に親切で山小屋へ行く楽しみも大きくしてくれる。山林に道が無くて、牧場と養鶏場へ挨拶に行ったのは小屋の完成後であった。しかし小屋を作る前に挨拶に行くのが礼儀であったと反省している。(続く)