後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

ブログは誰でも分かるように書くーそれが鉄則ー(続きの続き)

2008年04月09日 | うんちく・小ネタ

@ヨットは何故風上へのぼれるか?

前回の記事で掲載した帆走の写真をご覧下さい。前帆(ジブセイルと言いますが)が右前方に膨らんで前へ進んでいる写真です。前方の左45度の方向から風が吹き込んできます。すると前帆の外側を回る風の速度は内側の風の速度より早くなります。風の通路の長さが外側では内側より長いから仕方なく外側が早く流れます。

同じ空気が早く流れるとその部分の窒素分子と酸素分子が、遅く流れている部分より希薄になります。従って空気の圧力が小さくなります。前帆の外側の圧力が小さくなり、内側の圧力が大きくなります。すると前帆は外側、すなわち前方へ吸い付けられる訳です。これが右前方へ船を吸い付ける力となります。

急に話が変わりますが、この前帆を左へ横に倒して水平にした形は飛行機の主翼とほぼ同じになります。主翼の上側の空気の流れが速いので主翼が吸い上げられるのです。以前ご紹介した所沢航空博物館には前後は固定してあり上下は自由に動く飛行機の模型があります。前方からの扇風機の風を次第に強くしてゆくと模型の飛行機が上へ飛び上がります。主翼の揚力が大きくなるためです。

これと全く同じ原理でヨットは前方45度の方向へ吸いつけられて前進します。

写真には主帆(メインセイル)の形は映って居ませんが、前帆と同じ形に膨らんでいます。そのような形になるように前帆も主帆も真ん中が少し弛んだ設計になっています。一番重要なポイントは三角形の前の縦の縁(へり)と下の縁をシッカリ固定することです。三角形の縦の後ろの縁(へり)は自由に風に任せてあります。これで飛行機の主翼の上側の曲面に近い形になるのです。この技術を発明したのはエジプトのナイル河を帆走で上下していた数千年前のエジプト人でした。船底に重いキール板を縦につけ横滑りを防ぎ、風上へ上る性能を向上させたのがヨーロッパ人です。とても残念ながらアジア人はこの技術を発展出来ませんでした。

余談ながら、速度の早い流体の圧力が遅い部分より小さいという事実を証明したのが近代ヨーロッパのベルヌイールという科学者です。それで、この定理を「ベルヌイールの定理」といいます。流体力学の分野の基礎をなしている定理の一つで、昔の学校教育で教わったものです。(終わり)


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2008年04月09日 | インポート

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上の写真は前方から風を受け、風上45度の右方向へ上っている走り方の写真です。

船首を45度プラス90度、すなわち135度右に回転すれば風と平行になり風下に走ります。

回頭するときには、主帆の下を固定しているアルミ製の太い棒(上の写真の上のほうに写っている太い棒)の綱をゆるめます。そうすると主帆が風下へ流れて、風の力を受け難くなります。

したがって船の傾きがなくなり直立しますので、舵がよく効いて更に右旋回します。これにしたがって前の帆の下を固定していた綱もゆるめます。こうすれば容易に135度右旋回し、風を真後ろから受けて走る「追い風走法」になります。

この「追い風走法」をランニングという名前で呼びます。船首が左へ向いて風上に上っているときは左旋回をします。同じような手法で主帆と前帆をゆるめますが、今度は左へ2つの帆を広げます。

ヨットの走法はこのランイング走法と前回説明したクローズホールドの2つだけです。

この二つの中間、すなわち風を真横から受けて走る「アビーム走法」がありますが、これはクローズホールド走法の角度を少し風下側へ落とした走法で、クローズホールド走法の一種です。

ヨットの走り方は2つしかありません。しかし2つの走法の走る原理が違うのです。

追い風走法では、風が2つの帆を後ろから押していますので誰でも直感的に理解できます。

クローズホルド走法では、風が2つの帆を前方へ吸いつけていているので前進します。

この原理は直感的には分かり難いので続編でご説明します。(続く)


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2008年04月09日 | うんちく・小ネタ

ヨットの体験の無い人には分からなくても良い!そんな狭量な姿勢で記事を書いていた小生が間違っている!と高山さんが教えてくれたのです。反省しつつ誰にでも分かるように書く努力をして見ました。

高山さんから、「もっぱら、ホーンブロワー・シリーズ(セシル・スコット 著 ハヤカワ文庫 8冊くらい)を読んで楽しむペーパーヨットマンです。」とうご返事を頂きました。
ペーパーヨットマンとは素晴らしい発想ですね。嬉しくなりましたので帆走の2つの基本的な方法をご説明します。
まず4月7日掲載の「暗い空の下の桜、白鳥、ヨット」の記事の下の右端の写真をクリックして大きくしてご覧下さい。この走り方がクロ-ズホールドという走法です。
風は船の前方の45度の角度から吹き付けています。
風が左の方向45度から来るので前の帆と主たる大きな帆を押しています。それで船体が右へ傾きながら右の方向へ走ります。これで時速8kmくらいで走っています。
この方向で500mくらい進んだら、舵を切って、船の方向を90度左に変えます。(名前はどうでも良いのですが、この操作をタッキングといいます)
そして前の帆と主たる帆の形を写真の形と正反対の形に整えます。
すると今度は風上に向かって左45度の方向へ走りますね。
また500mくらい進んだら舵をきり、元の方向へ走ります。これを何回も繰り返すと、航跡をジグザグに描きながら、結局風上へ直角に上ることができます。
ジグザグを描くので時速は8kmでなく正味5kmくらいと遅くなります。
完全にご理解になる為には紙に上から見た細長い船の形と2枚の弧を描いた帆を中心線の右側に描き、左前方45度に風の線を4、5本矢印で描きます。
それが写真の走り方の見取り図ですね。その後で船首を90度変えた図を紙の上の方へ描きます。風の方向は変えずにまた描きます。
これを繰り返すと、風上に帆走するクロ-ズホールドがご理解できると存知ます。
少しこみ入っていますのでここで一休みします。続編では風上へ走れる原理と、追い風を受けて風下へ走る方法をご説明します。(続く)