サミット、主要先進国先進首脳会議の第一回会議は1975年11月、フランスのジスカールデスタン大統領の提案により、フランス、米国、英国、西ドイツ(当時)、日本、イタリアの6カ国の首脳がパリ郊外のランブイエ城に集まり、開催されました。
それ以来、毎年開催され、今年のG7サミットはイタリアで開催されました。
この1番目の写真は今年の出席者です。左右の端に写っている2名はヨーロッパ連合の代表者です。
このサミットは元来、経済的な諸問題を議論し、先進国の間で調整する目的で開催されていました。
しかし1975年の当時は冷戦の最中だったので西側勢力がソ連や中国との対立の構図の中での西側首脳会議でした。従って経済的な問題もさることながら冷戦の問題への影響も大きかったのです。その影響は西側勢力とロシアと中国との対立での勢力争いにも及ぶと考えらられます。
従って従来のサミットは団結を誇示する傾向があったようです。しかし今回はアメリカ第一主義のトランプ大統領の出席でこの団結が弱くなった印象があります。
今回のサミットのそんな様子を報道した記事を以下に連載いたします。
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『米大統領はサミットでわが道行く-G7、首脳宣言でぎりぎり合意』
Helene Fouquet, Arne Delfs and Josh Wingrove
2017年5月28日 09:27 JST、https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-05-28/OQMYU26TTDS001
トランプ米大統領はイタリア・シチリア島のタオルミナで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)で、地球温暖化対策の「パリ協定」で他国に追従せず、自由貿易にもより懐疑的なアプローチを迫り、国際的な枠組みに従わない決意を示した。
G7サミットは27日午後(日本時間同日夜)、議論を呼んだ2つの議題でぎりぎり合意し、首脳宣言をまとめて閉幕した。米国はオバマ前大統領が署名したパリ協定を押し戻し、貿易は「自由で公正で、互恵的」である必要との文言を首脳宣言に盛り込むことに成功した。
トランプ大統領はサミットについて「極めて生産的な会合」で、「真に歴史的な週」を締めくくったと述べた。会議後にイタリア国内の米軍基地で演説した。
米国を除くG7首脳はトランプ政権が「気候変動に関する政策を見直して」おり、「コンセンサスに加わる状況にない」として、6カ国でパリ協定を再確認。トランプ大統領は会議中に、来週決断を下すとツイートした。
自由貿易に関しては、トランプ大統領と他国の調整で技術的な交渉が27日午前3時まで続いた。議長国イタリアのジェンティローニ首相によると「均衡点」が見いだされ、「貿易は常にすべての人々の利益になるわけではない」と認める一方、「開かれた市場を維持するとともに、保護主義と闘う」ことで合意した。
原題:Trump Goes His Own Way as G-7 Cobbles Together an Awkward Truce(抜粋)
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このようにサミットの団結が弱くなると、現在の混迷する世界情勢の中でその意義や重要性は低下せざるを得ません。
1990年頃、冷戦構造が解消し、平和が来たような気分になりましたがアメリカでの同時多発テロをきっかけに中東が激しい戦争状態になりました。
そして中国が世界2位の経済大国に成長し航空母艦隊を編成し太平洋に乗り出したのです。南シナ海には埋め立てて軍事基地を作りました。尖閣諸島の領海をたびたび侵しています。
その上、北朝鮮が核兵器を開発しながら弾道ミサイルを何度も日本海へ打ち上げています。
世界的視野で見ると、タイの軍事独裁政権でタイは混乱状態です。またブラジルの大統領の汚職でブラジルは政情が不安定です。
中東はますます激しい戦争が続行しています。いつまでも「イスラム国」が陥落しないで抵抗しているのです。
ウクライナの東部はロシア勢力に占領されたままです。
1990年頃の冷戦まではそれなりに分かり易い秩序がありました。悪い秩序でもそれなりに平穏でした。
それが現在は世界全体が混乱し、政情が安定していません。
このような情勢のなかでG7主要先進国主要会議の重要性が低下するのも止むを得ません。
経済の協調はEUもありアセアン貿易協定や中国主導の会議やその他の各種の貿易協定もあります。サミットの役目を必要としません。
軍事的にはNATOがヨーロッパを守っています。アジア地区では日米安保があり韓国とアメリカの間にも軍事同盟があります。
その上、アメリカは単独で北朝鮮の沖に航空母艦打撃隊を張りつけています。
主要先進国首脳会議は実質的な役割が無くなったと言っても過言ではありません。
しかし私はこの会議は主要西側諸国の民主主義の価値観の共有を確認し、それを公表するという非常に重要な役目を担っていると信じています。
個人の自由と平等が一番大切だという思想です。それはあらゆる独裁政権を否定しています。共産主義も否定しています。
この重要性の故にG7サミットは将来も長く存続し、毎年開催されるでしょう。
さて皆様のご意見はいかがでしょうか? コメントを歓迎いたします。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)