人間は後期高齢者になると考え方が劇的に変わるものでしょうか?
私もいろいろな事柄に対する考え方が最近非常に変わりました。
そこで「後期高齢者になると考え方が変わる」という題で、変わったことの幾つかを連載風に書いて行きたいと思います。
今日の第一回は後期高齢者になると容姿に関する劣等感が消滅するという話です。
私は毎週一回、リハリビ施設に3年間ほど通っています。午後の4時間ほど若い男女の指導員が相手をしてくれます。
集まるのは18人ほどの男女の後期高齢者です。
仔細に観察すると男女のみんなが等しく見る影もない容姿です。当たり前と言えば当たり前ですが、18人まとめて見るとかなり衝撃的なのです。
若い男女の指導員は6人ほどですが、皆輝くような美しさです。
私は戦前生まれで食糧難の時代に育ったので短足で容姿は自慢ではありませんがかなり悪いのです。
長年それを劣等感として持っていました。しかし毎週、18人ほどの男女の後期高齢者の見る影もない容姿を見ると、その劣等感が消滅してしまったのです。
その施設で知り合ったある後期高齢者は映画女優でした。東映のニューフェイス審査に合格したのです。
若尾文子と同期だったそうです。私は女優だったという歴史に敬意を表しました。すると彼女は容姿はご覧の通りですが歌声だけは衰えていませんと言います。
そしてその後、カラオケのマイクを持ってきてリハビリ施設い声を響かせたのです。その唄い方はプロそのもにのでした。その時施設にいた全員が聞き惚れて、拍手喝さいをします。
しかしその姿は若尾文子とは違い過ぎます。
そこで私は確信しました。容姿の劣等感ほど馬鹿々々しいものが無いと。
この私の確信を一層強めてくれたのが若い看護師です。施設に常駐している女性の看護師です。
はっきり言えば容姿が悪い看護師です。
しかし彼女の老人へ対する優しさに圧倒されたのです。毎週来る18人の後期高齢者の自宅での健康状態をそれとなく聞きます。
怪我や出来物があると簡単な治療もしてくれるのです。18人の後期高齢者へ完全に等しく優しいのです。
ある時、私は背中に出来物ができました。すると彼女は私をトイレに連れ込んで裸にさせます。背中と腹の全体を観察します。そして専門医から特効薬を貰えば簡単に治ると言います。言った通りしました。簡単に直ったのです。
私は彼女を尊敬しました。その結果、彼女の忠告どうり毎晩飲む酒の量を半減したのです。これには家内も吃驚しました、
しかし残念なことに彼女は最近辞めてしまったのです。看護師資格の他にもう一つの国家資格を取るために学校に戻ったのです。
彼女は私に人生で大切なものは容姿ではないと教えてくれたのです。若いのにその真理を確信していたのです。
この彼女の香しい心情を理解出来たのは私が後期高齢者だったからです。若かったなら理解出来なかったと思います。
もうこれ以上は長くなるので止めます。
今日の挿し絵代わりの写真は昨日撮ってきたカルミア(アメリカシャクナゲ)と西洋シャクナゲの花です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)