記念日といえば、俳句では、ヒロシマ忌や終戦記念日。
でもこれは短歌のお話しです。
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 俵万智
いま振り返れば、この歌の登場した1985年前後は、
時代の大きく変わった年だったといえます。
なにが変わったのか?
俵万智さんの歌にそくして言えば、記念日、という言葉の使い方に
その変化がよく表されているような気がします。
また、1997年の歌。
男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす
ここではチョコレート革命というコトバを創造しています。
記念日といえば、建国記念日。革命ならロシア革命。
記念日、革命、ともに個人を超えたものを表しています。
そういう言葉を個人のものにしてしまったのが俵万智さんの歌だったのです。
この変化に私のような世代は鈍感でした。
サラダ記念日が出版されたのは1987年。
280万部というベストセラーに。出版社は河出書房。
当初、角川書店から出版される予定でしたが、
角川社長は、自身が俳人であり、歌集、句集など
短詩型文学の書籍は売れない事を知っていたため
出版に反対したという。
角川社長は後に「人生最大の失敗だった」と言ったとか。
この頃、国鉄が民営化され、現在のJRが生れています。
記念日や革命の私物化は、世界の中心は「私」にある
という主張をやわらかく表現しています。
ある意味で、戦後民主主義の一つの到達点だったのかも。
しかし頂点に達した時は、逆転の始まり。
現在は、これまでの影が光に逆転しはじめているような気がします。