7年前の秋から、海上の森を歩き始めた。その年はどんぐりの豊作の年であったらしく、雨が降るごとくどんぐりが降ってくるのに驚いた。何もかも、見るもの、聞くも
のに心を奪われた。だからこそ7年間森に通っても飽きないのだろう。
その年、私を虜にしたものの一つがアオツヅラフジの実だ。藍色なんだけど、白い
粉をふいていて実に美しい。葡萄まではいかないが、房状に実はつく。美しいバラに
刺があるごとくアオツヅラフジには毒がある。果実だけでなく全草有毒であるが、
蔓や根は生薬にもなる。
アオツヅラフジの別名をカミエビという。果実につく白い粉をカビにみたてての名
前である。ではエビは? 直径5ミリほどの果実のなかにいる。種子は小さな小さな
オオムガイの形をしている。昔の人はオオムガイなんて知らないから、エビとみたてたの
だ。 ツヅラフジ科アオツヅラフジ属の落葉つる性木本で普通に見られる。つるはかなり
丈夫であり、手でちぎるのは難しいが、なんとも細いので利用されたか分からない。
科名になっているツヅラフジはもっと山地に自生するそうでまだ見ていない。こち
らはオオツヅラフジとも呼ばれ、つるが5~10mになり蔓細工に利用されるそう
だ。