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【一口紹介】
■出版社からの内容紹介■
国連で難民事業に携わる里佳は上司で、元夫のエドがアフガンで死んだという知らせに立ち直れない。市井で懸命に生きる人を描く6篇 。
国連の難民事業に携わる里佳は、上司であるエドと恋愛し、7年間の結婚生活の末、2年前に離婚した。
そのエドがアフガニスタンで死に、立ち直れないでいる里佳を、アフガンでエドが救った難民の少女に会ったという記者が訪ねてくる……。
表題作他、我儘なオーナーパティシエのために最高の器を捜し求める秘書、捨て犬の世話をするボランティア、仏像に魅入られた修復師など、市井でこつこつと懸命に生きる人たちを描く、ハートウォーミングでちょっぴり泣ける短編集。
■内容(「BOOK」データベースより)■
愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々を、今日も思っている。
大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。
【読んだ理由】
第135回(平成18年度上半期)直木三十五賞受賞作。直木賞HP
【印象に残った一行】
『ああ・・・そうだな。たしかにけったいな話だ。人の運命ってのは奇妙なもんだとつくづく思うよ、己の力ではどうにもならない不運があり、幸運がある』
『もう君は聞き飽きたと思うけど、僕はいろんな国の難民キャンプで、ビニールシートみたいに軽々と吹きとばされていくものたちを見てきたんだ。人の命も、尊厳も、ささやかな幸福も、ビニールシートみたいに簡単にまいあがり、もみくしゃくになって飛ばされていくところを、さ。暴力的な風が吹いたとき、真っ先に飛ばされるのは、弱い立場の人たちだ。老人や女性や子供、それに生まれて間もない赤ん坊たちだ。誰かが手をさしのべて助けなければならない。どれだけ手があっても足りないほどなんだ。だから僕は思うんだよ。自分の子供を育てる時間や労力があるのなら、すでに生まれた彼らのためにそれを捧げるべきだって。それが、富める者ばかりがますます富んでいくこの世界のシステムに加担してる僕らの責任だって』
【コメント】
読後、一生懸命に生きている者たちを描き、心に温かみを残してくれる六つの短編集。

