日本男道記

ある日本男子の生き様

短命

2007年07月24日 | 私の好きな落語
【まくら】
原話は享保12年の『軽口はなしどり』の中の一編、【元腹の噂】。
いわゆるバレ噺(=艶笑落語)。

【あらすじ】
隠居のところへ飛び込んできた八五郎。入ってくるなり可笑しな事を言った。
「伊勢屋の養子が三度も死んだんだよ!」
『伊勢屋』というのは表通りの質屋だが、はて『三度死んだ』とはどういう意味か・・・?
詳しく聞くと、伊勢屋の先代というのが大変な人格者で、その娘であるお嬢さんもまたすばらしい人柄に育ったんだとか。
さて、その娘が年頃になって婿をもらう事になり、やってきたのが「錦絵から抜け出したような」いい男。
当然お嬢さんとの中も良好だ。
そんな二人の様子を見て、気が抜けたのかは定かではないが今度は伊勢屋のおかみさんが死んだ。
当然、家は娘が継ぐことになったのだが・・・。
しばらくすると、養子の顔色が何だか可笑しくなってきた。
だんだん青白くなっていき、「変だな?」と思っているとまもなく床について死んでしまった。
お葬式や何やらを済ませた後、後家さんになるのはまだ早いといって二人目の養子を迎えたのだが、今度来たのは影で《ブリのアラ》なるあだ名がつけられるほどの醜男だったのだ。
この"アラ"、前の旦那同様やけにお嬢さん-今ははおかみさんだ-と仲がいい。
そのうち段々顔色が悪くなってきて、何だろうと考えているうちにまた死んだ。
そして、三人目の養子が死んだのが昨日・・・。
要は八公、葬式の作法や悔やみの文句を教わりに来たのだ。
一応の作法を教わった後、八五郎は今まで考えてきた疑問を隠居に尋ねてみる。
「なぜ、養子は三人とも若死にしたのか・・・?」
おかみさんは三十過ぎの年増だが、めっぽう器量もよく性格も父親譲りの人格者。おまけに店はしっかりしているから、養子に余計なストレスがかかるはずもないのだが。
しばらく考えた後、隠居はこういった。
「おかみさんが美人・・・というのが短命の元だよ」
隠居いわく、美人と結婚した旦那は短命、そうでない人と結婚した人は長命になるのだという。
よく分からないと言う八五郎に、隠居はこんな話をした。
「食事時だ。お膳をはさんで差し向かい、おかみさんが旦那によそったご飯なんかを渡そうとして手と手が触れる。白魚を五本並べたような、透き通るようなおかみさんの手だ。そっと前を見る、ふるいつきたくなるいい女だ。これが短命の元だよ」
八五郎、なんのことだかわからない。
「お前、ちょっと鈍すぎやしないか? その内冬が来るだろう。炬燵に入る、何かの拍子で手が触れる。白魚を五本並べたような、透き通るようなおかみさんの手だ。そっと前を見る、ふるいつきたくなるいい女だ。これが短命の元だよ」
八五郎、やっぱりなんのことだかわからない。
「じゃあ分かりやすく川柳で説明しようか?」
その当座 昼も箪笥の 環(かん)が鳴り
新婚は 夜することを 昼間する
何よりも 傍が毒だと 医者が言い
それでやっと八公も事の真相を理解。
一応のお礼を言い、呆れながらご飯を食べに帰宅するといきなりかみさんに怒鳴られた。
「さっき、隠居のところでカカアの声を『遠吠え』呼ばわりされてきたけど、確かにそのとおりだな・・・」
仲がよすぎて死ぬぐらいのあっちの養子と、俺と何でこうも違うんだろう。
幻滅する八五郎だが、ふとあることを思いつく。
「給仕をしろ。そこに放りだしちゃいけねえ。ちゃんと手渡すんだ」
お椀を邪険に突き出したカカアの指と指が触れ
「手と手が触れる。そっと前を見る・・・俺は長命だなぁ」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

【オチ・サゲ】逆さ落ち(立場が入れ替わるもの)

【語句豆辞典】
【伊勢屋】古典落語に登場する伊勢屋は、大抵がお金持ちで、商売は質屋が圧倒的に多い。また、吝嗇といえば、これも伊勢屋と相場が決まっている。

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『積善の家に余慶あり 』

【この噺を得意とした落語家】
・五代目 古今亭志ん生
・五代目 柳家小さん
・初代  桂 歌丸
・五代目 三遊亭園楽
・七代目(自称五代目)立川談志
・十代目 柳家小三治

【落語豆知識】 預かり弟子
師匠が弟子の面倒を見られない時、別の師匠の門下に入ること。

 




Daily Vocabulary(2007/07/25)

2007年07月24日 | Daily Vocabulary
4306.quest(追求、探索、探求)
The quest for peace in the world is never ending.
4307.roster(名簿、勤務当番表、勤務表)
Your name is not on the roster.
4308.slim chance(望み薄)
We have a slim chance of success.
4309.on the spur of the moment(とっさの思い付きで、衝動的に)
I bought a laptop computer on the spur of the moment.
4310.inaugurate(就任させる、任命する、開設する、落成させる)
The mayor inaugurated the new art museum in the city.
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憑神(つきがみ)

2007年07月24日 | 読書日記
憑神

新潮社

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【一口紹介】
◆内容(「MARC」データベースより)◆
婿入り先から追い出され、職を失い、すがった相手は神は神でも人に仇なす厄病神。
時は幕末、動乱の世に、貧乏旗本・彦四郎の選んだ真実の生きる道とは?

貧乏旗本の次男の身ながら、その才を見込まれて大身の入婿となった彦四郎。
だが、跡継ぎを授かったとたん離縁され、実家に出戻るはめに。
ふとした気まぐれから、疲れ果てた祠を拝んだ彦四郎の前に現われたのは、人に不幸をもたらす神だった。
三河武士として、あくまでも輝かしい武士道を守ろうとする彦四郎に、災いが次々と襲いかかる・・・・。
『小説新潮』連載を単行本化。

【読んだ理由】
浅田次郎作品。2007年映画化作品(6/23全国公開)

【印象に残った一行】
人には命があり、その命は親から授かるのである。そしておのれもわずかな命の間に子をもうけ、代々の苦労を上乗せして、子らに申し送る。そうした営みが遥か太古から続いており、またこの先も遥かに続くのかと思えば、神々が言うていた通り、人間などはやはり虫らだという気もしてきた。

【コメント】
幕末の動乱を背景に、貧乏神、疫病神、死神が絡み浅田ワールドが展開される。
映画も是非みてみたい。

 



Daily Vocabulary(2007/07/24)

2007年07月24日 | Daily Vocabulary
4301.exit interview(退職者面接)
HR will first do an exit interview with Susie to look into the circumstance under which she is leaving.
4302.stay on(今のままの状態を続ける、居続ける、留任する)
We will stay on an extra day to have some fun.
4303.put a positive twist on(~に前向きのニュアンスを加味する、~に明るい展望をみる)
I doubt there is any way to put a positive twist on the latest outcome.
4304.thumbs-up(親指を立てる身ぶり、激励、賛成、承認、賛成の、承認する)
Investors gave thumbs-up to the X deal and thumbs-down to the Y deal.
4305.auspicious(幸先の良い、縁起の良い、吉兆の)
He made an auspicious start by hitting a home run the first time.
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