【まくら】
別名「不動坊火焔」。もとは上方落語であったが、東京にも移植された。後家の再婚噺。
江戸時代の結婚は、じつに現実的なものであった。
西鶴の『万の文反古(よろずのふみほうぐ)』に、「そうじての女、をとこを持ち申す事、一生の身過ぎづくにござそうろう」とある。
女が結婚するのは生活のためだ、とずばりと言っている。
今のように生命保険があるわけではない。
女性が夫を失ったら、生きて行くには仕事をもつか次の結婚しかないわけで、まわりも心配していろいろ結婚話を持ってきてくれる。
というわけで、離婚にしろ死別にしろ、再婚は多かった。
三回も四回も再婚する例もある。
そういうことを冷たい目で見ることもなかった。
「二夫にまみえず」などという倫理は、生活の前ではお題目にしか過ぎなかったのだ。
男性も再婚を繰り返す。お金に困って、女性の持参金めあてに結婚したり婿に入ったりする例も多い。どっちもどっちである。
出典:TBS落語研究会
【あらすじ】
長屋に住む利吉は真面目に働きこつこつと金をためている。
そんな利吉に感心した家主が「この長屋にはやもめが四人おるが、お前はんが一番しっかりしとる。」と縁談を持ちかける。
裏に住む講釈師不動坊火焔が九州巡業中に急死した。
その未亡人お滝の後添えにならないか、ただし、不動坊の葬式代35円を立替える条件だがと勧める。
喜んだ利吉は二つ返事で承諾し、では今晩にでも祝言を挙げようということにる。家主から今夜は花婿だから風呂に入っておけといわれ、利吉はいそいそと銭湯に行くが、風呂の中であれこれと今夜のことを思い、お滝さんが俺にこんな事を言うかなあと妄想にふけ、独り言を口走るうちにうっかり同じやもめ仲間の三人、新さん、裕さん、徳さんの悪口を言ってしまう。
折悪しくその徳さんが居合せていた。「利吉さん。一体だれのことでんねん。」「あっ。うっかり言ってもた。・・・ほなさいなら。」と逃げるように去る利吉。
あとに残った徳さんは怒りが収まらない。
裕さん、新さんを呼んで復讐を企てる。
不動坊の知人の講釈師軽田道斎を不動坊本人の幽霊に仕立て縄を使って天井からぶら下げ、「わしが死んで四十七日にもならんのに別の男と世帯持つとはけしからん。
二人とも坊主になれ!」と恨み言を述べて二人を怖がらせ、坊主にさせようというのだ。
道斎もお滝に横恋慕して振られた遺恨があるものだから喜んで加わる。
婚礼も無事終わり夜更けとなったころ、徳さんたちは利吉の家の屋根に登り、不動坊の偽幽霊を使って利吉を脅かす。
だが、利吉は「不動坊さん。わざわざ遠い十万億土からご苦労さんでんな。しかしな。わて、再婚するときあんたが残しはった葬礼代の肩代わりしましてんで。」
と言い張る。「ええ。そら知りまへん。」「ここに10円の金がおまっさかい、これを回向料としときま。さっさと往生しなはれ。」
偽幽霊の道斎は金を貰い「四海浪静かに」と謡を歌いながら消えようとする。
だが、身体を支えていた縄が切れて道斎は下へ落ち、徳さんたちは逃げてしまう。逃げ遅れた道斎は利吉に捕まり「こら!おのれは誰や!」
「えっへへ。同じ講釈師の軽田道斎でおます。」「講釈師やとオ。講釈師が幽霊の真似さらすんかい。」「へい、幽霊稼ぎ人でおます。」
サゲは「遊芸稼ぎ人」のモジリで、地口落ち。
前半の利吉のモノローグは「延陽伯」(東京の「たらちね」)と同工異曲である。後半は徳さんらのドタバタ騒ぎ。
道斎扮する幽霊の出で芝居がかりになるなど山場の多い噺である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
【オチ・サゲ】地口落ち(ことわざや成句などの語呂合わせのしゃれ(同音異義語)で笑いを誘うもの。)
【語句豆辞典】
【鬼子母神】キシボジンと言っているが、正確にはキシモジン。仏教の神の一つ。安産幼児教育の神。
【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『疝気は男の病むところ、悋気は女の慎むところ』
(疝気は、漢方で下腹部の痛む病)
【この噺を得意とした落語家】
・九代目 桂 文治
・五代目 柳家小さん
【落語豆知識】 追い出し
終演の太鼓。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/fd/4b90a9e10c650546e478a72d64b698ce.gif)
別名「不動坊火焔」。もとは上方落語であったが、東京にも移植された。後家の再婚噺。
江戸時代の結婚は、じつに現実的なものであった。
西鶴の『万の文反古(よろずのふみほうぐ)』に、「そうじての女、をとこを持ち申す事、一生の身過ぎづくにござそうろう」とある。
女が結婚するのは生活のためだ、とずばりと言っている。
今のように生命保険があるわけではない。
女性が夫を失ったら、生きて行くには仕事をもつか次の結婚しかないわけで、まわりも心配していろいろ結婚話を持ってきてくれる。
というわけで、離婚にしろ死別にしろ、再婚は多かった。
三回も四回も再婚する例もある。
そういうことを冷たい目で見ることもなかった。
「二夫にまみえず」などという倫理は、生活の前ではお題目にしか過ぎなかったのだ。
男性も再婚を繰り返す。お金に困って、女性の持参金めあてに結婚したり婿に入ったりする例も多い。どっちもどっちである。
出典:TBS落語研究会
【あらすじ】
長屋に住む利吉は真面目に働きこつこつと金をためている。
そんな利吉に感心した家主が「この長屋にはやもめが四人おるが、お前はんが一番しっかりしとる。」と縁談を持ちかける。
裏に住む講釈師不動坊火焔が九州巡業中に急死した。
その未亡人お滝の後添えにならないか、ただし、不動坊の葬式代35円を立替える条件だがと勧める。
喜んだ利吉は二つ返事で承諾し、では今晩にでも祝言を挙げようということにる。家主から今夜は花婿だから風呂に入っておけといわれ、利吉はいそいそと銭湯に行くが、風呂の中であれこれと今夜のことを思い、お滝さんが俺にこんな事を言うかなあと妄想にふけ、独り言を口走るうちにうっかり同じやもめ仲間の三人、新さん、裕さん、徳さんの悪口を言ってしまう。
折悪しくその徳さんが居合せていた。「利吉さん。一体だれのことでんねん。」「あっ。うっかり言ってもた。・・・ほなさいなら。」と逃げるように去る利吉。
あとに残った徳さんは怒りが収まらない。
裕さん、新さんを呼んで復讐を企てる。
不動坊の知人の講釈師軽田道斎を不動坊本人の幽霊に仕立て縄を使って天井からぶら下げ、「わしが死んで四十七日にもならんのに別の男と世帯持つとはけしからん。
二人とも坊主になれ!」と恨み言を述べて二人を怖がらせ、坊主にさせようというのだ。
道斎もお滝に横恋慕して振られた遺恨があるものだから喜んで加わる。
婚礼も無事終わり夜更けとなったころ、徳さんたちは利吉の家の屋根に登り、不動坊の偽幽霊を使って利吉を脅かす。
だが、利吉は「不動坊さん。わざわざ遠い十万億土からご苦労さんでんな。しかしな。わて、再婚するときあんたが残しはった葬礼代の肩代わりしましてんで。」
と言い張る。「ええ。そら知りまへん。」「ここに10円の金がおまっさかい、これを回向料としときま。さっさと往生しなはれ。」
偽幽霊の道斎は金を貰い「四海浪静かに」と謡を歌いながら消えようとする。
だが、身体を支えていた縄が切れて道斎は下へ落ち、徳さんたちは逃げてしまう。逃げ遅れた道斎は利吉に捕まり「こら!おのれは誰や!」
「えっへへ。同じ講釈師の軽田道斎でおます。」「講釈師やとオ。講釈師が幽霊の真似さらすんかい。」「へい、幽霊稼ぎ人でおます。」
サゲは「遊芸稼ぎ人」のモジリで、地口落ち。
前半の利吉のモノローグは「延陽伯」(東京の「たらちね」)と同工異曲である。後半は徳さんらのドタバタ騒ぎ。
道斎扮する幽霊の出で芝居がかりになるなど山場の多い噺である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
【オチ・サゲ】地口落ち(ことわざや成句などの語呂合わせのしゃれ(同音異義語)で笑いを誘うもの。)
【語句豆辞典】
【鬼子母神】キシボジンと言っているが、正確にはキシモジン。仏教の神の一つ。安産幼児教育の神。
【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『疝気は男の病むところ、悋気は女の慎むところ』
(疝気は、漢方で下腹部の痛む病)
【この噺を得意とした落語家】
・九代目 桂 文治
・五代目 柳家小さん
【落語豆知識】 追い出し
終演の太鼓。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/7a/2f0b2e593dd7e2b9b9e6e23918f38b17.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/a0/b13210b95f8308e9df90ef8f0430e71a.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/fd/4b90a9e10c650546e478a72d64b698ce.gif)