奥入瀬渓流の流れはやや早くなり、両岸の滝を集め水量も安定する。水ほど多様な
物質はない。地異の変容に巧みに対応する。奥入瀬渓流の魅力はここにある。自然
の複雑な地形をまるで約束事の様に流れる。・・・人生もかくありたい、流れの如くに。
今日(2007.7.22)は黒石温湯温泉の丑湯祭りだ。やっと雲の合間からお日様が顔を
出し例年の暑い夏、丑湯は真夏のお祭という実感がしてきた。黒石の丑湯祭りは初め
て、嘗て加賀山中温泉の丑湯祭りに遭遇したが、浴場に菖蒲が溢れていた記憶がある。
温湯の丑湯は文字通りお牛様を神輿に乗せ町内を一周、お祈りの後浴槽に入れるもの。
最初は男湯、次が女湯。入浴者はこの牛に触れると一年間健康で居られるとか。共同
浴場の周囲には出店が並びこの小さな温泉地の伝統的な湯祭りは佳境を迎える。湯に
親しみ、湯に遊び、湯に守られ、湯で生活する伝統的な温泉郷が永遠である事を祈る。
参照#温湯温泉 (黒石温泉郷 鶴の名湯)
ピラミッド、キリストの墓、ナニャドラヤ・・・狭い地域に不思議がいっぱい。トドメが
『迷ケ平』!新郷村から秋田、十和田湖へ抜ける県境の高原。恐らく霧深く、道に迷う
ことからこの地名になったのだろう。演歌が高々に流されていた。これも耳印の意味か?
記録:ここは十和利山 (標高990m )への登山口、頂上からは十和田湖を一望できる。
新郷村には不思議な伝承がある。その中の一つがキリストの墓。信じるも信じないも
此処に墓があるのは事実だ。言い伝えは、いつか尾ひれが取れ純化し分りやすくなる。
其処にはいろいろな前提、例えば、があった筈。人の噂も然り時には大きな嘘、間違
いが伝わる。人間の愚しい一面でもある。幾多の人々が謂れの無い事で苦しんだ事か。
検証:喜び、悲しみ、怒り、祈り、恐れ、憧れ、自然現象‥・それらが誇張、純化を繰
り返し伝えられるのは地域の特徴として問題ない。しかし虚偽、憎しみ、暴力、呪い、
謀略がまいの悪意の伝達・伝承は排除されるべきだ。人間の素朴で純心な思いのみが
許される。新郷村の奇異な伝承は人々の素朴な願い、想いが込められているのだろう。
南部の名湯に浴す。鷲が傷を癒したと伝えられる新郷村の山間の温泉。ここには温泉施設
が2つ並んである。野沢温泉とその手前の新郷温泉館。地元の多くは奥の野沢温泉へ入る。
その理由は明解、源泉100%、昔からの地元湯だからだ。昔は、低い温度を沸かし入浴
していたが、故郷創生資金1億円でボーリングし今の適温になったという。浴室温度41.5
度は狭いながらも快適な湯心地であった。ここからは迷ケ平を抜けて十和田奥入瀬へ向う。
【Data】 単純温泉 43.6℃ pH8.82 源泉:温泉沢源泉
鑑定:源泉掛け流しという事で分類的には「青森推奨湯」になるのだが、この施設の責任で
ないが筆者入浴時に湯船に不純物を確認した。この温泉に限らず、幼児や老人の下
が緩むことが多々ある。これは公衆浴場管理者の隠れた悩みでこの施設に限らない
のだが、遭遇した筆者にとっては印象度が悪いのは必然、次回迄「青森まあまあ湯」。
参照#青森県の共同・公衆浴場(公共系)一覧
山形・蔵王の温泉探査は終了した。山形で温泉以外で心を開放したものがある。山形
市内の『喜三郎さくらんぼ園』山形温泉協会の方々が用意した研究外の楽しみ。子供
の様に気に入った木に取り付き摘んでは頬張る。さくらんぼ狩りを堪能。筆者はこの
甘い果実を『桜の精』と命名。山形は『桜の精』の里だ。 (2007.7.3蔵王研究大会:完)
今回の山形(蔵王)最後の温泉探査は『羽根沢温泉』。新庄市国道13・47分岐点より
約21Km、走りに走り迷いながら午後7時ごろ到着。宿の紅葉館ご主人(鮭川村村長)が
玄関でお出迎えしてくれた。温泉場の川岸辺りを見て気付く、此処は嘗て訪れている。
解説:大正8年、石油試掘作業中に湧出し、県内唯一の間欠泉で、肌がツルツルになる
事から、別名「美人湯」ともいわれている。現在は3軒の旅館が営業、山奥の簡
素な温泉街だ。宿の最上階にある浴場は、身体と心に残る夢の様なお湯殿だった。
【Data】含食塩ー重曹泉 47.2℃ PH8.2 ナトリウム1204㎎、塩素915㎎、炭酸水素1636㎎
次の温泉は近くのおもだか温泉「旅館鈴の湯」。道路沿いの普通の農家の内湯の様な
温泉。遠慮がちに流れる源泉(加温)に浸かりたい衝動に駆られる。これは街中名湯?
【DATA】単純温泉 27℃ P h7.9 源泉:おもだか温泉
山形蔵王学会終了後、もう一つの目的、新庄周辺の温泉地を探査。先ず、
新庄方面途中の『湯船沢温泉』へ。カーナビが何とか道案内。温泉は一
軒宿。ご主人がひょっとしたら寄るかもしれないと温泉協会から謂れた。
建物は情緒あるのだが沸かし循環が温泉を殺していた。それにご主人が
気付いていないのが残念。専門家がそのうち指導することを願って次へ。
【Data】単純硫黄冷鉱泉 20.4℃ PH9.6 源泉: 大泉1号・2号
映像:足元から源泉が噴出する浴槽の特徴であるスノコ状の床が観察される。
蔵王の共同浴場の中で唯一足元からお湯が沸いてくる。多少加水であるが自然
の恵みの真っ只中の快感が全身を覆う。朝、目覚めたら先ず、この浴場で体を
覚醒させるなんと贅沢なことか。車での半野宿もこの快感事があるからだ。後
はコンビニで朝食のパンとコーヒーを求めれば、一日の始まりの準備は万端だ。
【Data】含硫化水素ー明礬・緑礬泉 48.1℃ PH1.45 源泉:川原湯共同浴場源泉
映像:蔵王の共同浴場でもっとも風情がある下湯共同浴場の源泉掛流し。
気候によって湯面は変化。今日も綺麗な湯華膜が形成されていた。
蔵王温泉には共同浴場が3つある。嘗ては24時間入浴OKであったが、今
は朝6時半、夜10時で終了。これも心無い利用者が増えたせい。こうし
て開放的な共同浴場の文化は消えていくのは、草津をはじめ全国的な傾向。
参照#下湯共同浴場の浴室(蔵王温泉)
映像:いまや蔵王温泉のシンボル的存在の大露天風呂
今回の旅の目的、日本温泉地域学会研究発表・総会の開催地蔵王温泉にやってきた。
蔵王温泉は山形市内から車で20分、標高900Mの高地にある。背後に蔵王連峰が
控えており、特に冬の樹氷群のスキーコースは素晴らしい。それと酸性硫黄泉が湧
出する温泉街は東北屈指の観光地でもある。山村先生の言葉を借りれば、『東北の
草津温泉』と言っていいほど似ている。その蔵王温泉の露天風呂が今日の朝湯だ。
泉質:緑礬・明礬泉(含硫化水素強酸性) 50.8℃ PH1.9 735L/分 源泉名:馬滝源泉
春に訪問、その温泉力に感じ入った公衆浴場。地域の方々が出資し合って開いたという
温泉。もう一度、今度は朝湯でと訪ねたが、なんと今日は一ヶ月振りの定休日空振りで
ある。映像は前回訪問時の露天風呂景観。前面に蔵王連峰が連なる。真後ろにはピラミ
ッド型の富神山(402メートル)を従えて居る。名山名湯を配す。道に迷ったらこの山
を正面に進むが良いだろう。トンボの一本道で分かりやすい『ふだん着の温泉』は健在。
【Data】食塩泉 54.8℃ ph7.5 源泉:百目鬼温泉