(12月30日、ロケット弾発射地近くでロバ車に乗っていたところイスラエルの爆撃にあい死亡したガザ地区の少年(4歳)の埋葬 “flickr”より By Amir Farshad Ebrahimi
http://www.flickr.com/photos/farshadebrahimi/3159836888/)
【生命線のトンネル】
パレスチナ・ガザ地区での衝突は、エジプトの仲介で停戦交渉が具体化しつつあるようです。
イスラエル軍は7日夜、境界の地下に掘られたトンネルを狙った攻撃を強めており、停戦の流れが固まる前に最大限、密輸基盤を破壊しようとの思惑とか。
エジプト側への国際部隊の配置のほか、境界一帯に水路を建設したり、コンクリート壁を地中深く埋め、ガザ・エジプト間を遮断する案も検討されていると報じられています。【1月8日 毎日】
トンネル網の破壊に使われたのが、正確な攻撃能力を誇る米国製のスマート爆弾だそうで、イスラエル議会は昨年9月の段階で、最大で1000基のSmall Diameter Bombs(SDB)『GBU-39』を米国から購入することを認めています。
【1月6日 WIREDVISION】
これまでは“ガザ封鎖”と言いつつも、エジプト側からの大小さまざまなトンネルがあって、武器弾薬だけでなく、市民の生活物資の輸送ルートともなっていました。
今後、このトンネルが機能しなくなると、文字通りの“封鎖”状態となって、これまでも厳しかった生活が食料・医療など、本当に窒息状態になってしまうのではないでしょうか?
【冷静なヒズボラ】
昨日の記事で目についたのは、レバノンのヒズボラとエジプトの動向。
パレスチナ、周辺国ではイスラエルの侵攻に激高し、自らも武器を手にとろうとする若者などの様子が伝えられていますが、イスラエルと激しく対立しているヒズボラは比較的冷静なようです。
*****イスラエルにロケット弾攻撃、レバノン国境でも交戦状態*****
イスラエル軍によると、レバノン国境に近いイスラエル北部ナハリヤに8日朝(日本時間同午後)、少なくとも2発のロケット弾が着弾、2人が負傷した。
イスラエル軍は即座に発射元のレバノン南部に対し、砲撃を加えた。パレスチナ自治区ガザでのイスラム原理主義組織ハマスに対する掃討作戦に続き、レバノン国境でも戦端が開かれれば、イスラエルは南北2正面の交戦を強いられることになるため、緊張が高まっている。
レバノン南部からのロケット弾攻撃は、12月27日にガザへのイスラエルの軍事作戦が始まってから初めて。
2006年夏のレバノン紛争では、レバノン南部を実効支配するイスラム教シーア派組織ヒズボラが多用した戦術だが、ヒズボラは今回の攻撃について「関与していない」と否定した。同国のミトリ情報相がAFP通信に明らかにした。在レバノンのハマス幹部も8日、攻撃を否定した。【1月8日 読売】
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レバノン国境も緊張云々より、ヒズボラがこの機に「関与していない」と静観を崩していないことに目がいきました。
ヒズボラとしてもイスラエルと事を構えることは組織の存亡をかけた行為となりますので、そうそう一時の感情で動くわけには行かないということでしょうか。
その冷静さは事態の不拡大には好ましいことです。
【沈静化を望むエジプト】
一方、仲介に乗り出しているエジプトには、これ以上ハマスに騒いでほしくない国内事情があります。
エジプト国内にはムスリム同胞団というイスラム原理主義組織があって、事実上の最大野党勢力です。
宗教政党が禁じられているため非合法化され、無所属で立候補する形をとっていますが、近年の世界的イスラム運動の高揚を受けてエジプトでもその影響力が増しており、ムバラク政権を脅かす存在となっています。
ハマスはもともと、このムスリム同胞団から派生した組織ですから、ハマスの活動が活発化すると、エジプトのムスリム同胞団の活動も刺激されることになります。
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停戦案を提示したムバラク・エジプト大統領はハマスに対し、「停戦の実現にはロケット弾攻撃の停止が不可欠だ」と説得を続けている。その最大の理由は、パレスチナ自治区の分断が固定化することへの懸念だ。
米国のボルトン前国連大使は最近、「ガザをエジプトに、ヨルダン川西岸をヨルダンに戻す」とのパレスチナ分断策を提唱した。ハマスはエジプトのライバル・イランと関係が深く、国内の「野党勢力」ムスリム同胞団の流れをくむ。そのハマスが支配するガザをエジプトが抱え込むことは「悪夢」と言える。
エジプトにとって、停戦の仲介は第1段階にすぎず、アッバス議長の出身母体ファタハとハマスの和解をどう実現させるかに真の関心がある。 【1月8日 毎日】
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普通は領土が手に入ることは歓迎されることですが、上記のような事情で、エジプトにとってはハマスの温床となっているガザ地区を押し付けられることは“悪夢”とのことのようです。
なんとしてもガザが沈静化し、ハマスとファタハが和解して情勢が落ち着くことが、エジプト・ムバラク政権にとっては最優先される事項です。