(イスラエル軍によるガザの学校攻撃によって死亡した犠牲者を悼むパレスチナの人々 “flickr”より By PRIMAVERA®
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パレスチナ・ガザ地区での軍事衝突に関して、アメリカの棄権はありましたが、とにもかくにも国連安全保障理事会は8日夜、停戦要求決議を採択しました。
アメリカは賛成する意向を示していましたが、採決直前にライス国務長官に(棄権するよう)新たな指示が入ったとか。【1月10日 産経】
棄権したライス米国務長官は採択後の演説で、米国は決議の趣旨や目的には賛同するとしたうえで、「エジプトによる調停の結果を見てから判断したかったため、棄権した」と述べています。よくわからない言い様ですが、国際社会とイスラエルの間で板ばさみ状態にあるようです。
しかし、イスラエル・ハマス双方ともこの受け入れを拒否しており、戦闘は続き、犠牲者は増え続けています。
そんななか、軍事的に圧倒的優位な立場にあるイスラエル軍への批判が強まっていますが、イスラエルの国内世論はまったく別のようです。
****停戦拒否、世論が後押し=9割超がガザ軍事作戦支持-「壊滅」に恐怖・イスラエル****
パレスチナ自治区ガザで大規模な軍事作戦を展開するイスラエルは9日、国連安全保障理事会の停戦決議を「役に立たない」(オルメルト首相)として拒否した。背景には、イスラム原理主義組織ハマスのロケット弾攻撃への対処だけでなく、イスラエルを敵視する周辺勢力の「戦略的脅威」に対する恐怖が国民の間で広がり、強硬姿勢を世論が後押ししているという事情がある。
9日付のイスラエル紙マーリブが掲載した世論調査結果によると、ハマスに対する軍事作戦について、ユダヤ人市民の91.4%が賛成。反対はわずか3.8%だった。この極端な世論動向は、2月10日に総選挙を控えるイスラエルの政治家にとって、8日に採択された同決議より圧倒的な重みを持つ。
同国のユダヤ人社会にとっての戦略的脅威とは、特に「イスラエル壊滅」をうたう勢力を指す。南隣ガザのハマス、北隣レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラ、そしてハマスやヒズボラを支援し、核開発を進める東方のイランだ。
こうした中、ハマスが支配するガザに強圧的な対応を取ることに社会は寛容だ。ガザ軍事作戦で、子供や女性多数を含むパレスチナ人犠牲者は、イスラエル側の100倍近いペースで増加しているが、自己批判の声はほとんど聞かれない。 【1月10日 時事】
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6日には、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する避難民が集まる学校が攻撃され40人が死亡する事件がありました。
9日には、下記のような報道もありました。
****イスラエル軍:住民を住宅に集め砲撃…30人死亡 ガザ****
国連人道問題調整事務所(OCHA)は9日、パレスチナ自治区ガザ地区のガザ市近郊のザイトゥン地区で5日、イスラエル軍が約110人のパレスチナ人市民を1軒の住宅に集めた上でそこに複数回砲撃を行い、子供を含む約30人が死亡したと発表した。負傷者が運び込まれた同市のシーファ病院は死者数を32人としている。
OCHAは住宅内にいた半数は子供だったとし砲撃を非難、同病院の救急医療部長も「虐殺だ」と非難している。イスラエル軍は毎日新聞の取材に対し「情報を持っておらず、調査する」とコメントしている。(中略)
砲撃から生き残った主婦、オーラさん(29)が、ガザ市在住の毎日新聞助手に語った話によると、数十人の武装イスラエル兵が4日朝、ザイトゥン地区の一角に固まって住む市民100人以上を、銃を突きつけ1軒の建設中の平屋建て住宅に集め、「動くな。何もするんじゃない」と言い残し、立ち去った。
ところが5日朝、戦車が住宅を砲撃、1発は住宅を直撃し、もう1発は敷地内に着弾した。オーラさんの子供6人のうち2人は死亡。オーラさんと夫は、負傷した他の子供たちを抱きかかえ外へ避難したという。(中略)
赤十字国際委員会は7日、3時間の攻撃停止時間中に初めて同地区に入り、3軒の住宅で15体の遺体を発見、負傷者18人を含む生存者計30人を救出した。しかし、同地区内には依然として相当数の死傷者が取り残されたままとみられる。【1月9日 毎日】
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そのままは俄かには信じがたい記事で、書かれていること意外に、何か別の事情・要素もあると思われます。
しかし何か事情があったにせよ、6日の学校の件といい、上記9日の件といい、多数の市民を犠牲にしている結果において、これを正当化する理由はない非道な行為に思われます。
そうした見方はイスラエル国民には理解されないのもまた現実です。
あるイスラエル国民の「相手が倒れるか、こちらが倒されるか-。これが戦争だ」という声が紹介されていました。
“民主主義”とう価値観が普遍的なものとなった現代では、強権的な、あるいは、一党支配的な政治体制であっても、多くの政権は国民の声、世論、あるいは選挙というものを意識して動きます。
しかし、一旦激高した国民の声というものは往々にして相手を思いやる想像力を欠いています。
こうしたことは、ひとりイスラエルだけの問題ではありません。
“民主的”というものが、はたして私たちを本当により良い方向に導いてくれるものなのか、疑問に感じることもあります。