孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  「サハリン2」記念式典で日ロ首脳外交か 人道支援中止

2009-01-29 22:03:20 | 世相

(サハリン 倒れたままになっている“遠征軍上陸記念碑” “flickr”より By shinyai
http://www.flickr.com/photos/shinyai/274523863/)

【日本との関係強化の姿勢】
日本の商社も出資してロシア極東サハリン州沖で進められている石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から、日本へ液化天然ガス(LNG)の輸出を開始する積み出し式が2月18日に行われますが、この式典にメドベージェフ大統領も出席します。
更に、大統領は麻生首相との電話会談で、首相を招待する考えを伝えた上で「2国間のすべての問題について話し合いたい」と述べ、日ロ首脳会談の開催を提案していました。
“大統領の(式典への)立ち会いは、ロシアの同事業に対する期待の大きさとともに、日本との関係強化の姿勢を示している。”とも報じられていました。【1月23日 共同】

このロシア側の呼びかけに対し、麻生首相は「検討の上、回答したい」と返答したそうですが、河村建夫官房長官は29日午前の記者会見で、この式典に麻生首相が出席する方向で調整に入ったことを明らかにしています。
実現すれば、現職首相が戦後サハリンを訪れるのは初めてだそうです。

日本の商社が参画する「サハリン2」は、「ロシアの資源はロシアのもの」との資源ナショナリズムが強まるロシア側の対応によって、06 年9月、「環境破壊」を理由に事業停止を命じられ、経営権をロシアに奪取された経緯があります。

【起死回生の一手?】
それはともかく、このLNG輸出を契機に日ロの話し合いが進み、懸案事項である北方領土問題が少しでも前進するのであれば結構なことです。
支持率が2割を切る麻生総理にとっても、結果がさせれば起死回生の一手となりえます。

麻生総理は昨年12月9日、訪日したロシアのナルイシキン大統領府長官と首相官邸で会談し、領土問題の解決と平和条約締結問題について「来年のプーチン首相の訪日の際、また次回以降のメドベージェフ大統領との首脳会談で具体化していきたい」と述べ、早期打開に強い意欲を示していました。

なお、日本政府も出資するロシア極東の石油・天然ガス開発 事業「サハリン1」のほうは、2009年予算をめぐり、事業を主導する外資とロシア政府の交渉が難航し、ロシアが予算を承認しない場合はサハリン1の操業が新年から“違法”ととられかねない・・・と昨年末に報じられていました。【12月31日 産経】

その後どうなったのかは知りません。
サハリン1は開発契約に基づいて毎年、予算・事業内容の承認をロシア政府から受ける必要がありますが、昨年末の12月29日段階では交渉はまとまっていませんでした、なお、過去にも予算交渉が越年したケースはあるようです。
こうした交渉難航もロシアの資源ナショナリズム高揚の一環と見られています。

【出入国カード】
今回のLNG輸出を機に、両国間関係が改善する・・・そんな期待も少ししたのですが、そんなに状況は甘くないようです。
昨日は、北方4島に対する日本側の人道支援による物資供給、いわゆる「ビザなし交流」について、ロシア側の頑なな対応(まあ、ロシアの立場にたてば、そういうこともありなのでしょうが)によって、中止に追い込まれました。

****外務省、北方四島の人道支援中止 ロシア、出入国証要求で****
外務省職員らが、北方4島のロシア人住民に対する人道支援のため国後島に上陸しようとしてこれまでなかった出入国カードの提出を要求された問題は、ロシア側との交渉が決裂し、職員らは上陸を断念し根室港に帰還することになった。同省が28日、発表した。これに伴い、2008年度の人道支援は中止することを決めた。日本側は外交ルートを通じ遺憾の意を表明。今後あらためてロシア側と協議することにした。【1月28日 共同】
*******************

この問題に関し、ロシア外務省は28日、声明を発表し、「問題を政治化しようとする非生産的な試み」と、領土主権を理由に記入を拒否した日本側の対応を批判しています。
“「政治的な理由で人道支援を中止するのなら、支援の真の狙いは何だったのかとの疑問が生じる」とも主張した。
声明は、「出入国カードの記入が、国境画定を含む2国間平和条約締結交渉における日本の立場を変えてしまうとの見方はとらない」との解釈を示し、日本側の懸念を打ち消した。”【1月29日 読売】
ロシアの経済発展で、北方4島の経済も日本に頼る部分が次第に少なくなっている・・・という話も聞きますが、そのあたりも関係しているのでしょうか。

27日には、鳥取県境港市の水産加工会社「日吉水産」所有のカニかご漁船「第38吉丸」がロシア当局に拿捕されるという事件も起きています。

2月18日の式典への麻生総理招待と、ここ数日のロシア側の強硬な姿勢というのをどのように考えたらいいのか。
意図的にハードルを高くしているのか、たまたま重なっただけなのか、中央と地方で意思疎通が欠けているのか・・・
いずれにしても、相変わらず付き合いが難しい国ではあります。


コメント
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