孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジンバブエ  インフレとコレラ ようやく連立成立か

2009-01-31 11:24:05 | 世相

(不足する水、劣悪な衛生環境がコレラ感染を拡大させています。
“flickr”より By Sokwanele - Zimbabwe
http://www.flickr.com/photos/sokwanele/3092812606/)

【ツァンギライ議長 首相就任へ】
経済崩壊とコレラ禍が深刻化するアフリカ・ジンバブエで大統領選挙が行われたのは去年3月のことですが、1年近くの空転を経て、ようやく収束の動きが出てきたようです。

****ジンバブエ野党、連立への参加を表明 野党議長が首相に就任へ*****
ジンバブエの野党・民主変革運動(MDC)のモーガン・ツァンギライ議長は30日、ロバート・ムガベ大統領との連立政権に参加すると発表した。同国では、約1年前の大統領選に端を発する混乱によって危機的な状況が続いていた。
ツァンギライ議長はMDCの会合後、記者団に対し、南部アフリカ開発共同体の求めに応じ、自らが2月11日に首相に就任すると語った。
ムガベ大統領率いる政府側も、MDCは「外部勢力から転換しつつある」との声が上がるなど、この決定を歓迎する姿勢を示した。【1月31日 AFP】
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【不毛の政治対立】
去年3月に行われた大統領選挙で、野党「民主変革運動」(MDC)のツァンギライ議長は与党「ジンバブエ・アフリカ国民同盟-愛国者戦線」(ZANU-PF)のムガベ大統領を上回りました。
しかし、過半数を取ることができなかったために決選投票に持ち込まれました。

決選投票に向けて、与党・政権側のMDC関係者に対する暴力行為は激しさを増し、結局ツァンギライ議長は選挙のボイコットを決めました。
MDC不在の中行われた6月27日の決選投票では、ムガベ氏が85%の票を得ましたが、投票率はわずかに42%でした。

MDCはこの決選投票を無効であると認めず、多くの欧米諸国もムガベ批判を強めていました。
アフリカ連合(AU)の選挙監視団も、決選投票はAUの民主的な基準に達していないと批判、南アフリカのネルソン・マンデラ氏も、選挙は不当なものであり、ムガベ政権は人権を守るべきだと訴えていました。
ただ、多くのアフリカ諸国は、ムガベ政権と似かよった強権的体質を持っていることもあって、ムガベ批判はそれほどきつくはなかったようです。【08年7月9日 IPS】

その後、昨年9月には、新たに首相ポストを設けて、ムガベ大統領・ツァンギライ首相という形での与野党大連立(いわゆるケニア方式)がまとまりかけましたが、10月に入り、具体的な閣僚ポスト配分において与党・ムガベ大統領側が国防、内務、外務、司法、地方政府、通信など有力ポストを独占することが明らかになり、この大連立案は暗礁に乗り上げていました。

この間にジンバブエでは、かねてよりのハイパー・インフレーションが更に加速、8月頃からはじまったコレラ感染が蔓延し大勢の犠牲者がでるなか有効な対策がうてず、南アフリカなど隣国への難民流失が外国人排斥の運動を刺激するなど、惨憺たる状況が続いてきました。

【インフレ 年897垓(がい)%】
****100000000000000ドル紙幣が登場、異常なインフレ下のジンバブエ*****
ジンバブエの中央銀行は16日、同国の厳しい経済情勢に対応するため、新100兆ジンバブエ・ドル紙幣を発表した。
100兆ジンバブエ・ドルは、15日の闇レートで約300ドル(約2万7000円)だという。ほぼすべての外貨取引はこの闇レートで行われているが、現地通貨の価値は毎日、急激に下落している。
ジンバブエではわずか数日前に500億ジンバブエ・ドル紙幣の流通が始まったばかりだが、すでにこの紙幣の価値は暴落し、一般の労働者が月給を銀行から引き出すにも足りないほどだという。
ジンバブエの公式インフレ率は、最新のデータである前年7月の時点で年2億3100万%だったが、米シンクタンク、ケイトー研究所の試算では、年897垓(がい)%に上るという。垓は10の20乗であり、数字に直すと897の後ろに0が20個つくことになる。【1月17日 AFP】
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年2億3100万%とか年897垓(がい)%とか、全く理解できない状況です。
毎日のように価格が上昇する、朝と夕方で価格が違うという事態です。
多くの取引・売買は現地通貨ではなく、米ドルは南アランドを使用しているとも報じられています。
首都ハラレの商店でも「外貨のみ使用可」の店舗が増加しているそうです。
これでは経済がまともに機能するはずもありません。

【コレラ 過去14年間で世界最悪の水準】
****ジンバブエのコレラ流行、感染者6万人以上に WHO****
コレラ感染が拡大しているジンバブエで、感染者数が6万人を超えた。世界保健機関(WHO)が30日、明らかにした。
29日付けのWHOの最新統計によると、2008年8月のコレラ発生以降の感染者数は6万401人で、このうち3161人が死亡している。【1月30日 AFP】
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過去14年間で世界最悪の水準とされ、泥沼化する政治・経済危機のなかで有効な対策がとられず、過去15日間だけで死者は1000人を超えたと報じられています。【1月29日 AFP】
コレラによる犠牲者の数も、残念なことに、インフレ率同様に報じられるごとにその数字が膨らんでいきます。

【懸念される先行き】
こうしたなかで、ムガベ大統領一家はバカンスで東アジアを訪れ、大統領夫人が1月9日、宿泊先である香港の五つ星ホテルで、写真を撮ろうとしたカメラマンをボディガードに押さえつけさせ、その顔面を殴打するという大立ち回りも報じられています。

昨年問題になった閣僚ポスト配分がどのようになったのかについては、まだ報じられていません。
本当に連立が成立するのか疑わしくも思えますし、仮に成立しても“遅きに失した”と言うほかありませんが、とにもかくにも、一刻も早く、インフレとコレラに呑み込まれている状況に正面から向き合う必要があります。

もっとも、現実に政府が何か動こうとすると既得権益者の利害を侵害することになり、政治的摩擦を激しくすることが想像されます。
ムガベ大統領がそんな軋轢を抑えるように働いてくれればいいのですが、これまでの言動を見る限りは全く期待できません。

コメント
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