(アフガニスタンで女性教育を進めるNGOの運営する学校 お母さんについてきた少女でしょうか タリバンを受け入れ難い最大の問題は、国民の半分を占める女性について、その権利を殆ど認めていないように思われることです。
“flickr”より By thechildrenofwar
http://www.flickr.com/photos/tcow/3203042453/in/set-72157612623743205/)
【あいかわらずのアフガン情勢】
最近あまり目立った動きを聞かないアフガニスタン情勢ですが、あいかわらずタリバンの攻勢は続いているようです。
昨年12月28日には、東部ホースト州で地元政府の建物を狙った自動車による自爆攻撃があり、子ども14人を含む16人が死亡しています。
また今月17日には、首都カブールの米軍基地とドイツ大使館の近くで車を使った自爆テロがあり、米軍の1人を含む計5人が死亡、28人がけがをしています。タリバンは「ドイツ人武官の車を狙った」との犯行声明を出しています。
ドイツはアフガニスタンでは対タリバン戦の前面には出ていませんが、「ドイツ軍はアフガン北部で住民殺害に関与している。今後はアフガンに部隊を送るすべての国を標的にする」(タリバン報道官)とのこと。
【米軍3万人増派】
20日の就任式にのぞむオバマ次期大統領は、かねてよりイラク戦には批判的で、テロの闘いの主戦場はアフガニスタンにあると主張してきました。
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は13日、オバマ次期大統領がアフガニスタンに最大3万人を増派する国防総省の計画を承認する意向だと報じています。これによりアフガン駐留米軍の規模はほぼ倍増します。
“ただ、同紙によれば、オバマ次期政権は、アフガンの治安情勢をこの増派で劇的に転換させられるとはみておらず、抜本的なアフガン戦略見直しを行うための時間稼ぎと考えている。”【1月13日 時事】
アフガニスタン戦略にとってマイナスとなりそうな動きも伝えられています。
“AFP通信は17日、中央アジアのキルギス政府が近日中に、領内にある米軍基地の閉鎖を命じると伝えた。
これはロシアの要求に基づく措置で、見返りとしてロシアは大規模な財政支援をキルギスに供与するという。
キルギスは米軍にとって、アフガニスタンに兵員や物資を運ぶ重要な拠点。実際に基地閉鎖を求められれば、オバマ次期政権のアフガン戦略には打撃となる。”【1月17日 読売】
キルギスの米軍基地は、ロシアにとっては伝統的に自国勢力圏と見なす中央アジアへの米国の勢力拡大を象徴する施設であり、メドベージェフ大統領はキルギスに対する総額20億ドル(約1800億円)の資金供与によって、キルギスのバキエフ大統領に米軍撤退を求めるとのことです。
普段“2兆円の定額給付金”などを耳にしていると、“1800億円”というのは世界情勢に変化をもたらす金額としては少ないような気もします。“2兆円”のほうが巨額すぎるのでしょうか。
【和解促進にイスラム国軍を】
いずれにしても、前出【1月13日 時事】にもあるように、国際社会には、「タリバンを武力で打ち負かすことはできない」との認識が定着しつつあります。
アフガニスタンのカルザイ大統領はタリバンとの和解対話に乗り出しており、米国もこれを支援する姿勢をみせています。
オバマ次期大統領も3万人増派と対話のふたつの方策を同時に模索することになると思われますが、米軍撤退を求めるタリバンとの両面作戦は厳しそうです。
しかし、今の情勢での一方的米軍撤退はアフガニスタンの内戦を再び引き起こすことも予測されます。
そんななかで、米軍にかわるイスラム国軍のアフガニスタン駐留を求める意見もあるようです。
****アフガン安定化:イスラム国軍が駐留を…前パキスタン大使*****
パキスタンの前駐アフガニスタン大使、モハメド・ルスタム氏(65)が11日、毎日新聞と会見。アフガン安定化を実現させる策として、「武装勢力タリバンが敵対視する米軍など既存の駐留外国軍に代わり、インドネシアやマレーシアなどイスラム国家の軍隊を、国連の承認を経て駐留させることが望ましい」との考えを示した。
ルスタム氏はパキスタン部族支配地域出身の有力者。02~05年に大使としてカブールに駐在した。アフガン、パキスタンの国境地域の有力者がテロ対策を協議する「アフガン・パキスタン大会議(ジルガ)」でパキスタン側の責任者を務める。
氏は「タリバン指導部の考えを熟知している」と述べたうえで、タリバンとの和解交渉について、「アフガン政府が米軍の駐留と増派を拒否できない以上、和解は困難」との見通しを示した。
一方で、アフガン再建には「外国軍の駐留が当面不可欠」とも述べ、「米国は軍を撤退させ、イスラム諸国に代替派遣を求めるべきだ」と主張した。
米軍がアフガンから撤退したうえで、タリバンが受け入れ可能な「イスラム国家によるアフガン管理」を行うというものだ。(中略)
ルスタム氏は「パキスタンやイランなど、過去にアフガン支配に野心を持った国が派遣されれば再び混乱を誘発する恐れがある」と述べ、派遣されるべきイスラム国家について、利害関係を持つ近隣国ではなく、インドネシアやマレーシアなどを挙げた。
タリバン指導部の考えを熟知しているとする同氏は、これらの国軍による駐留が実現すれば「タリバンは政治勢力となり、駐留軍を攻撃することは絶対にない」と強調した。(後略)【1月13日 毎日】
***********************
ひとつの考えではありますが、パキスタン・イランならともかく、インドネシアやマレーシアが敢えてアフガニスタンに出て行くか・・・。
これもなかなか実現は厳しそうです。
【民兵組織やバイアグラ】
こうした和戦両方の取組みのほか、イラク・スンニ派で成功したとされる民兵組織をつくる動きもあるようです。
“24日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、イスラム原理主義勢力タリバンの掃討支援に当たらせるため、アフガニスタン当局と米軍が地元住民に武装を施す計画を進めていると報じた。来年から中部ワルダク州で実施し、効果があれば全土に拡大する方針という。
米当局はイラクで部族勢力を武装し、反政府過激派の鎮圧で成果を上げたとみており、アフガンでも同様の措置を取ることにした。同紙によれば、カルザイ・アフガン大統領も今月に入り計画を承認。地区ごとにライフルなどで軽武装した100-200人の民兵部隊を組織するという。”【12月24日 時事】
変わったところでは、性的不能治療薬「バイアグラ」が情報収集に役立っているとか。
“ワシントン・ポスト紙は情報機関筋の話として、CIAによる情報提供者への報償の支払いは以前から行われていたが、アフガニスタンの地元有力者らから情報を得るのにバイアグラを利用するようになったという。
CIAはこれまでに部族長らに対し、ポケットナイフや工具、玩具や学校用備品、旅行ビザや手術などの医療サービスのほかに、時折「バイアグラ」を提供してきたという。現金や武器を渡すという手段もあるが、武器の場合は流出の危険性があり、また、現金を突然手に入れた人は目立ちやすいという問題があるという。
ワシントン・ポスト紙によると、アフガニスタンの部族長には複数の妻がいることが多く、バイアグラは「彼らが権威ある立場を回復する」ために効果的だという。”【12月27日 AFP】
あの手この手ではありますが、アフガニスタンの人々自身はどのような国を望んでいるのでしょうか?