孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

加速する中台蜜月  WHO、ソマリア沖、故宮博物院

2009-01-16 21:08:47 | 国際情勢

(中国北京の故宮博物院にある“大禹治水図玉山” ひとの背丈をはるかに越えます。(高さ2m 重さ5t)
玉の産地、新疆の和田(ホータン)で見つかった玉を運ぶのに3年、更に天禹の治水の伝説を彫り込むのに8年かけたという逸品です。
今回台湾側に貸し出される文物に含まれているのかどうかはしりません)

【WHOオブザーバー参加】
台湾の国民党・馬政権成立依頼の中国の台湾接近ぶりには驚かされるところがあります。
こうした中台蜜月にとって、ひとつのハードルとみられていた台湾のWHOオブザーバー参加についても、中国はこれを容認する方針を固めたと正月に報じられています。

****WHO総会 中国、台湾参加容認へ 「中華台北」名 オブザーバー****
関係筋が31日語ったところによると、中国は2009年5月の世界保健機関(WHO)年次総会(ジュネーブ)で、「中華台北」名で台湾のオブザーバー(観察員)参加を認める方針を固めた。馬英九台湾政権発足以来、改善著しい中台関係を加速させる狙いだが、台湾がWHOはじめ国連機関への加盟の動きに出ることを警戒しており、近く台湾側との調整に入る見通しだ。

台湾は、国際的地位回復の一環として李登輝政権時代の1997年以来毎年、「中華民国」名義でWHOへの参加を申請。陳水扁前民進党政権は2007年、「台湾」名での申請に切り替えたが、中国は「一つの中国」に反するとし加盟もオブザーバー参加も一貫して反対、申請は失敗した。
03年に中国で新型肺炎(SARS)が猛威を振るい、被害が台湾にも及んだ際、台湾は当初、WHOから情報や支援を得られなかった。鳥インフルエンザなど感染症への国際的対応が急がれる中、日米を中心に台湾のオブザーバー参加に支持が広がっていた。

台湾では、WHO参加に広範な支持があり、05年に訪中した当時の野党国民党の連戦主席も胡錦濤中国国家主席に加盟承認を求めたことがある。しかし中国は陳水扁政権の「独立陰謀」と警戒、主権国家で構成されているWHOに、台湾は参加資格はないとの立場を取ってきた。
08年5月、対中重視路線の馬英九国民党政権の誕生で、状況は変わった。馬氏は総統当選後の4月、国際オリンピック委員会(IOC)など国際組織で使わ れている「中華台北」名で加盟したい意向を表明。同5月末に訪中した呉伯雄国民党主席に対し胡錦濤主席は検討する意思を示した。(後略)【1月1日 産経】
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また、中国の胡錦濤国家主席は昨年末の31日、「台湾同胞に告げる書」発表30周年記念座談会で演説。その中で「台湾の国際組織活動への参加」について、「二つの中国」「一中一台」をつくらない前提下で「両岸(中台)の実務的協議を通じ、情理に合った処理ができる」と述べています。
これは、当面最大の焦点になっている台湾のWHO参加問題に関した言明とみられています。【1月1日 産経】

中国側としては“「二つの中国」「一中一台」をつくらない”という基本線を崩さないことが大前提ですので、
こうした中国側の動向について、“台湾側関係者は「中国は台湾の参加に向け準備中だが、なお慎重だ」とし、オバマ米次期政権の台湾政策や台湾社会の反応を見極めようとしているようだと述べた。”とも報じられています。
それにしても、これまでの中国側対応を考えると、驚きです。

【抱き合うふたり】
1月7日には、台湾の対中国交流窓口機関、海峡交流基金会トップ、江丙坤理事長の率いる訪中団が広東省深セン入りし、金融危機で深刻な影響を受ける台湾企業を視察、また、中国側の海峡両岸関係協会トップ、陳雲林会長らとも会談しています。
会談内容よりも、このニュースを伝える記事【1月7日 共同】に掲載されていた、両代表が抱き合うようにしてにこやかな笑顔を見せている写真が印象的でした。

また、新華社通信によると、海賊対策のためにソマリア沖に派遣された中国海軍の駆逐艦2隻が12日、台湾商船を含む4隻を護衛したそうです。【1月12日 毎日】
更に、中国中央テレビは14日、北京の故宮博物院が、所蔵する貴重な文物17点を台北の故宮博物院で10月に開かれる「雍正帝展」に貸し出すことに同意したと伝えています。
1949年の中台分裂で離れ離れになった故宮の文物が一緒に展示されるのは初めてです。【1月14日 時事】

【警戒感も】
台湾海峡が緊張する事態は日本の安全保障にとってもゆゆしいことであり、中台蜜月はその意味で歓迎すべきところでしょう。
ただ、台湾の立場で考えると、大国中国に飲み込まれていくような不安もあるのではないでしょうか。

****台湾:総統府を捜索、職員ら拘束 中国への機密漏えい容疑****
台湾総統府の職員らが、中国の情報機関に総統府の機密を漏えいしていたとして、台湾の検察当局が14日、総統府を家宅捜索した。総統府が捜索を受けるのは初めてで、緊張緩和が進む中台関係にも影響を与えそうだ。【1月15日 毎日】
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上記の記事も、そうした台湾内部にある不安感・警戒感を反映した動きのように思えます。


コメント
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