孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北朝鮮  脱北ビジネスにも経済危機の影響

2009-04-02 22:05:52 | 国際情勢

(中国吉林省延辺朝鮮自治州の豆満江をはさむ北朝鮮国境 “flickr”より By kenpower
http://www.flickr.com/photos/kenpower/162681966/in/photostream/)

世の中、需要のあるところにはビジネスが生まれます。
誘拐が多発する南米コロンビアでは、拉致したゲリラ側との交渉にあたる交渉人、誘拐された場合の身代金支払いのための誘拐保険など、誘拐ビジネスが盛んだとか。
一方、脱北希望者が多い北朝鮮・中国国境では、脱北を仲介するブローカーによる脱北ビジネスが行われています。
そして、ビジネスである以上、景気の動向に左右されるようです。

****脱北者:ブローカー動かず激減 韓国からの支援金細り****
北朝鮮から中国へ逃れる脱北者が大きく減っている。国境を接する中国吉林省延辺朝鮮族自治州延吉。
脱北ビジネス最大の拠点だが、脱北者を手引きし、暗躍してきたブローカーらの動きは今、止まったまま。
中朝国交樹立60周年の今年、国境警備が強化されたほか、金融危機などの影響で韓国から彼らへ渡るカネが途絶えたためだ。ただ、ブローカーに支えられた脱北は「必要悪」でもある。国境の向こうで困窮しきった人々が滞る。【延吉で西岡省二】
延吉の喫茶店。50歳代男性の中国人朝鮮族ブローカーがたばこの煙を吐き出した。「北朝鮮のミサイル発射? 関心ないよ。それより客がいないんだ」。「客」とは脱出を試みる北朝鮮住民。地元の公安関係者も「北朝鮮から逃れて来た者はここ1年、大きく減った」と証言する。
男性は中国の元軍人。国境の図們江(朝鮮語名・豆満江(トゥマンガン))を渡った脱北者を延吉のアパートにあるアジトへ移す役割だ。男性によると(1)北朝鮮側の協力者と連携し、国境越えを手引きする越境班(2)男性ら輸送班(3)アジトの管理班(4)北京などへの遠距離輸送班--などがある。脱北者が韓国亡命に成功した場合、謝礼に相当する手数料は主に韓国の支援団体が提供する。

脱北が減ったのは韓国側の事情が大きい。「中国のブローカーに渡る手数料は1人平均10万元(約140万円)かかる」(支援団体関係者)とされる。男性の依頼主は韓国の宗教関連団体で、企業や個人寄付も有力資金源だったが「韓国経済が冷え込んで寄付が激減し、カネの流れが悪くなった」と付け加えた。
また、韓国政府は脱北者へ支給される「定着支援金」が支援団体を経由し、手数料支払いで消える例が多いとみる。政府は脱北者を対象にした定住教育で、手数料を支払わないよう指導を強化する。
ブローカーの手引きなしに脱北者は国境を渡れない。男性は「いつでも動く。だが、カネが必要だ」と話す。【3月30日 毎日】
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記事にもあるように、脱北者が減少しているのは景気悪化のよるカネの流れの悪化以外に、国境警備が強化されたこともあります。
延吉の近く、図們江の状況に関する記事もありました。
図們江は、取材中の米国人記者2人が北朝鮮当局に身柄拘束される事件が起きた場所でもあります。

****脱北者取り締まり、両国で強化*****
図們江は春になっても凍りついたまま。人影もない。川幅は狭いところで約20メートル。外部から来た多くの人が「越境は簡単」と錯覚する。
だが、北朝鮮側には約50メートルごとに監視小屋が建てられたり、土中に穴が掘られ、中で朝鮮人民軍兵士が24時間見張っている。
中国側も脱北が相次いだポイントに監視カメラを設置。国境線から200メートル以内に人が侵入すれば、国境警備隊が出動する。昨年の北京五輪前、中国側は多くの河川敷に鉄条網を張った。
中朝国交樹立60周年に合わせ「中朝友好年」と定めた今年は、さらに神経をとがらせる。「中国政府は脱北者問題で北朝鮮を刺激したくない」。延吉の脱北ブローカーの見方だ。【3月30日 毎日】
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上記記事では、中国東北3省(吉林、黒竜江、遼寧)に潜伏する脱北者は3万人との推測が紹介されています。
多くが90年代後半以降、越境してきた「長期滞在組」で、朝鮮族に嫁ぎ、地域社会に溶け込んだ女性も多いとか。
ただ、警察への通報をちらつかせて脱北者の人身売買や性的関係を迫る悪質ブローカーも後を絶たず、韓国の人権団体などが改善を訴えているとも。

国民が生活苦から国を捨てざるを得ない状況で、衛星だかミサイルだかに執着する政治というものは、外交的にはどうであれ、常軌を逸しているようにしか思えませんが、そのような常識が通用しない国でもあります。
26日ロンドンで開かれた南北の交流行事に出席した南北両国大使がやりあった話が報じらています。

「苦しい経済状況で『宇宙開発』に貴重な資源を浪費しようという意図が問題だ」「数千キロ離れた土地に穴を掘るため、数千万ドルを投資する理由はない」と韓国の千英宇駐英大使が指摘したのに対し、北朝鮮の慈成男駐英大使が「生活が苦しいから宇宙開発できないという国連決議はない」「衛星を打ち上げるミサイルを問題視するなら、食卓で使う包丁まで軍縮対象になる」と応じたそうです。【3月27日 朝日】


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