(1989年6月の北京 天安門広場での学生達の民主化要求運動を鎮圧に向かう戦車 その車列の前に立ちはだかる男性 中国が変わるのでは・・・との思いでTV画面を見つめていました。 “flickr”より By laihiu
http://www.flickr.com/photos/laihiu/159409428/)
【再評価の動き警戒】
大躍進政策の失敗、文化大革命の混乱を経て、GDPですでにドイツを抜き、やがて日本を抜いて世界第2位になるのも数年後と見られている経済大国・中国、政治的にも国際的に大きな影響力を行使し、アメリカがカウンターパワーとして意識する存在となりつつある中国ですが、胡耀邦とか趙紫陽、あるいは天安門事件に関係した時節・事柄になると今でも穏やかではいられないようです。
古傷がうずくと言うか、過去の亡霊の呪縛から解き放たれていないと言うか、自らの手を汚した血におののくと言うか・・・。
****天安門契機 胡耀邦氏死去20年 再評価の動き警戒 中国当局****
中国での民主化運動を弾圧した天安門事件(1989年6月)のきっかけとなった胡耀邦元総書記の死去から、15日で20年を迎えた。胡氏の再評価や、当時のハンスト学生を見舞ったことなどで失脚した故趙紫陽元総書記の名誉回復を求める動きが出ているが、当局はこうした状況を警戒し、締めつけを強化している。
関係者によると、胡氏が眠る江西省北部の「共青城」で15日、遺族らにより追悼行事が行われたもようだ。「遺族らは取材には消極的」とされ、当局から天安門事件に関した取材は受けないよう要請されている可能性がある。
天安門事件で鎮圧した側の人民解放軍兵士、張世軍氏は3月に外国メディアの取材で「(鎮圧には)罪悪感がある」と語ったがその後、行方不明となった。当局に拘束されたとみられている。民主化活動家によると、山東大学の孫文広元教授は趙元総書記の墓地を訪れた際、暴漢に襲われ重傷を負った。
「当局は今年、極めて敏感になっている」(孫氏)という中、北京の一部大学では、学生が集団討論する動きを大学側が牽制(けんせい)。北京大学では部外者の構内入校に際し、身分証の検査と登録を始めるという。
胡績偉・元人民日報社長など70~90歳代の元幹部12人は、胡耀邦氏らの徹底した名誉回復と天安門事件の再評価を求める文集を今月、香港で出版する予定だ。しかし、ネット上からは同事件や胡氏に関する文章や書き込みが削除されている。
昨年12月に一党独裁体制の集結を求めた「08憲章」も一連の規制に阻まれており、起草者で反体制派作家、劉暁波氏の拘束は「実際は天安門事件20年の刊行物発行を計画していたことが理由」(関係者)とも指摘されている。【4月16日 産経】
******************************
例外的には、“中国の改革派月刊誌「炎黄春秋」4月号だけは「胡耀邦に学ぼう」と題した故毛沢東主席の元秘書、李鋭氏の追悼論文を掲載した。同誌は執筆陣に党元幹部が名を連ね、広く読まれる大衆誌でもないため、当局から黙認されているようだ。論文は「党史の出版物で胡耀邦の名前を見ることはできない。(共産党の)唯物主義者がしてはならないことだ」と批判した。”【4月15日 毎日】といったこともあるようです。
「胡耀邦に学ぼう」というストレートな論文ですから、単に“広く読まれる大衆誌でもないため黙認”という訳でもないようにも思えますが。
多くの問題を抱えつつも冒頭にあげたような経済的・政治的実績を達成しながら、自らに自信がないのか、自己変革を迫るような動きに対して寛容になれない体質、一党独裁の殻に閉じこもり異論を許容しない体質というのは理解できないところです。
政治理念の問題と言ってしまえばそれまでですが。
【中国社会の今】
ここ数日で目にした中国社会に関する記事。
****中国の億万長者82万人 最多の北京、113人に1人*****
資産が1千万元(約1億5千万円)以上ある富豪が中国には82万5千人いる――。中国の民間の研究機関「胡潤百富」が15日に発表した調査で、こんな結果が出た。都市別では北京が最多で113人に1人の割合。中国都市部を中心とした購買力の高さが裏付けられた形だ。
胡潤が個人の投資金額や納税額、車や家の購買状況などをもとに算出した。富豪は大都市に偏っており、1位の北京は14万3千人で全体の17%。2位の広東省(13万7千人)、3位の上海(11万6千人)の3地域で、ほぼ5割を占めた。富豪の割合は、中国全体では約1700人に1人だった。
資産には株式のほか近年、値上がりの著しかった不動産も含まれるという。
胡潤によると、同規模の資産家の割合は英国が150人に1人、米国が100人に1人で、北京や上海は肩を並べた形。今回の調査に協力した人の8割は、金融危機後も生活に大きな影響はなかったと答えたという。
一方、資産が1億元(約15億円)以上ある大富豪は中国全体で5万1千人にのぼった。【4月18日 朝日】
***********************
113人に1人が大富豪とは・・・貧乏人の私としては驚きです。
一方で、中国社会の歪を示す記事も。
****中国で人口男女比に大幅な不均衡、数十年間続く見通し 研究成果****
男児を好んで産む傾向がある中国では、女児より男児のほうが3200万人多く男女不均衡が今後数十年間続くことが予測されるとの調査報告が、10日の英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」電子版に掲載された。
「この問題には思い切った対策がいくつか提案されているが、どのような対策をとっても男性過多の世代が間もなく登場するのを防ぐことはできない」と、報告は指摘している。
ほとんどの国では、女性の数より男性の数がわずかに上回り、男女性別比は103-107程度(女性を100とした場合)になるのが普通だ。
ところが中国やアジアのいくつかの国では、男女性別比が大幅に不均衡となっている。伝統的に男児が好まれている上、安価な超音波検査で出産前に性別が分かり中絶が可能であることから、男女産み分けに拍車がかかっているためだ。とりわけ、一人っ子政策が徹底していた地方や地方都市では男女比不均衡の傾向が顕著にみられる。
2000年以降、中国政府はこの不均衡の緩和に乗り出し、女児の必要性を訴えるキャンペーンを展開したほか、相続法の改正にも着手している。
1992年に男女性別比が229という驚異的な水準を記録した韓国では政府が対策に乗り出し、啓発キャンペーンを行うとともに男女産み分けに関連する法律の適用を厳格化した。この結果、04年までに男女性別比は110に回復した。ある専門家は中国も韓国と同じ方向性に進む可能性があるとみている。【4月10日 AFP】
**********************
一人っ子政策や男児を望む社会風潮の問題のほか、生まれてくる子供の基本的人権に関する認識の問題でもあります。
中国が人権の問題で大きな課題を抱えていることは周知のところですが、
【人権】
人権と言えば、こんな話も。
****中国が人権に関する行動計画を発表*****
中国は人権に関する行動計画を発表し、国民の法的保護強化や所得拡大などの方針を示した。新華社が伝えた政府計画は「中国は依然、多くの課題に直面しており、人権の向上に向けた取り組みにおいての道のりは長い」としている。
その上で「必要最低限の生活や発展のための国民の権利保護を最優先する」と表明。
さらに、政府は「公共医療サービスにおける平等の権利」を目指すほか、貧困層、高齢者、障害者のためのより良い福祉や、農民の所得拡大を約束。「厳正かつ公平な裁判」を保証するとしている。
また、国民が政府に請願する際、政府職員の嫌がらせや拘束などを受けるという状況を踏まえ、電話や電子メールなどでの請願受付を増やす方針を示した。【4月13日 ロイター】
***************
“国民が政府に請願する際、政府職員の嫌がらせや拘束などを受ける”というのはどういうことか・・・なんてことはともかく、きちんとした成果を望みたいもおです。
かつて胡耀邦は“チベット視察に訪れ、その惨憺たる有様に落涙したと言われ、ラサで共産党幹部らに対する演説にて、チベット政策の失敗を明確に表明して謝罪し、共産党にその責任があることを認め、ただちに政治犯たちを釈放させ、チベット語教育を解禁した。更にその2年後中国憲法に基づき、信教の自由を改めて保証した上で、僧院の再建事業に着手させ、外国人旅行者にもチベットを開放した。しかし、この政策は党幹部から激しく指弾され、胡耀邦の更迭後撤回された。”【ウィキペディア】とか。
また、趙紫陽は“天安門広場で絶食を続ける学生たちの前に現れ、「我々は来るのが遅すぎた。申し訳ない」と声を詰まらせながら約8分間、拡声器を手に学生たちに絶食をやめるよう呼びかけた。”とか。【ウィキペディア】
彼等を生かせる体制であれば、人権問題も今とは違った状況になっていたのでは・・・とも思えます。