孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  総選挙始まる 台風の目「大衆社会党」の選挙戦 投票から阻害される「第3の性」ヒジュラ

2009-04-21 21:00:25 | 国際情勢

(インド・バラナシ 投票日前日 混乱防止のため街頭に立つ兵士
“flickr”より By  Al Jazeera English
http://www.flickr.com/photos/aljazeeraenglish/3445548108/)

【ダリッドの女王】
「世界最大の民主制選挙」と言われるインド下院の総選挙が始まっています。

****投票に1か月、インド総選挙始まる*****
インド下院議会(定数545)選挙の第1回投票が16日、始まった。
「世界最大の民主制選挙」の有権者は7億人を超え、投票は5回に分けて実施、1か月を要して5月13日に終了する。選挙結果の発表は5月16日。

世論調査では、各政党が単独過半数を確保することは難しいとみられ、また与党連合が崩れ、政権交代の可能性も示唆されている。与党連合内の2大政党、国民会議派とインド人民党(BJP)のどちらも単独で絶対安定多数を確保することはできないと予測されている。
また、すでに選挙絡みの暴力事件が発生しており、東部のジャルカンド州で極左武装組織インド共産党毛沢東主義派のグループが、投票所の監視にあたっていた兵士6人を殺害した。

545議席のうち約半数は、各州の地方政党などが占める見込みだが、最終結果を受けて大政党らが連立に動き出してからの駆け引きが注目される。しかし急激な景気後退と、内外の安全保障に関する懸念が高まる中で、統一政策のない連立政権が誕生すれば政権運営の見通しは暗い。
次期首相に就任する可能性が高いのは、現職のマンモハン・シン首相(国民会議派、76)と、これに対抗するBJPの重鎮L.K.アドバニ(81)氏で両者ともに高齢だ。
2大政党の連立以外に実現性のある選択肢としては、「第3戦線」と呼ばれる左派勢力と地方政党の緩やかな連合体が挙がっている。また現在交渉中だが、「最低位カーストの女王」を自認するマヤワティ・クマリ氏と第3戦線がさらに連携する可能性も出ている。マヤワティ氏はインド初の「不可触民出身首相」を目指すと公言している。(後略)【4月16日 AFP】
************************

ばらまき公約の乱発、殺人などの多数の犯罪者が議員となっているインド国会の実情、および、ウッタル・プラデシュ州の地域政党である大衆社会党(BSP)の女性党首で、「最下位カースト・ダリット(「抑圧されし者」を意味する)の女王」と称されるマヤワティ氏が台風の目になる可能性があることについては、3月26日ブログ「インド 「世界最大の民主主義国」の総選挙  ばらまき選挙、犯罪者議員、「ダリットの女王」」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090326)でも取り上げたところです。

****インド総選挙、殺人罪で拘束のマフィア対エリート博士*****
今月13日午後9時すぎ。停電で真っ暗な貧民街の広場は、異様な熱気に包まれていた。「ムクタル・アンサリ候補を当選させれば、停電はなくなる。停電の責任を取らない電力会社の担当者は、すぐに絞首刑だ」。弁士が声を張り上げて過激な主張をすると、千人近い聴衆が「アンサリ万歳」と叫び始めた。
4人の有力候補が争うバラナシ選挙区は「マフィアのボスと博士の戦い」と呼ばれた。地元マフィアの顔役と、2大政党が擁立するエリートの対決を例えたものだ。

アンサリ氏はマフィアの1人。殺人などの罪状で起訴され拘束中。それでも「彼は庶民に薬をくれる」「娘の結婚資金を出してくれた」と支持者は感謝の言葉を口にする。
警察・司法が末端では公正と言い切れないインドでは、マフィアが庶民のトラブルを解決することが珍しくない。同候補を擁立したのは、カースト最底辺のダリット(不可触民)を支持基盤にする、ウッタルプラデシュ州が地盤の大衆社会党(BSP)のマヤワティ党首だ。同党は、2大政党の貧困対策の不備を批判し、「第3勢力」の中心として台風の目になりつつある。【4月18日 朝日】
*************************

上記はバラナシでの大衆社会党(BSP)の戦いぶりを伝える記事ですが、3月26日ブログでも取り上げたように、犯罪者が多いインド国会のことですから、マフィアを担ぎ出しているのは別にマヤワティ氏のBSPだけのことではないでしょう。
BSPのアンサリ氏の集会にはイスラム教徒が目立つとか。
カースト最底辺のダリット(不可触民)だけでなく、カースト外のイスラム勢力をも取り込めば、BSPは大きな力を示せるかもしれません。

【「第3の性」ヒジュラ】
そんなインド選挙に関して興味深く思ったのが、もうひつとのカースト外の人達を報じた下記の記事です。

****総選挙のインド、投票を避ける「第3の性」*****
16日から総選挙の投票が始まったインドで、男性でも女性でもない「第3の性」に属するヒジュラと呼ばれる人びとが重大な問題に直面している。
インドには、男性から女性への性転換手術を受けるなどしたヒジュラが約100万人いると言われている。インドの選挙では投票箱が男女別に別れているため、性別を明確にしたくないヒジュラの人びとの多くが投票を棄権しているのだ。
女性として投票に臨むヒジュラもいるが、多くは男女別の明確化を拒否し、身分証明書の性別欄に「第3の性」を設ける運動を進めている。(中略)
偏見と闘いながら「第3の性」の確立に向けた活動を続けてきた結果、ヒジュラへたちはいくつかの成果を手にした。その一つが、旅券や公式書類のいくつかについて、性別欄に男性でも女性でもない「E」の項が設けられたことだ。
しかし、保守的な傾向が比較的強いインドで、ヒジュラ専用の投票箱が設けられるまでの道のりは遠い。(後略)【4月20日 AFP】
**********************

ヒジュラについては、以前読んだインド旅行記などで、その存在を聞いたことがあります。
異性装を扱う「ようこのとりかえばや物語」(http://inuiyouko.web.fc2.com/folk.html)というサイトから、ヒジュラに関する説明を抜粋します。

********************
ヒジュラとは、ウルドゥー語で「半陰陽、両性具有者」を意味します。つまり、ヒジュラは女性器と男性器を併せ持った存在とされており、カースト制度から外れた特異な存在です。もともとは、子供の誕生や婚礼の祝いの場によばれ、歌や踊りで祝福するシャーマン的な芸能者であったといいます。
ヒジュラは先天的な半陰陽者であると自らは主張しますが、実際にはヒジュラとしての自覚を持った者が去勢してなるケースがほとんどです。
ヒジュラは決して自分たちのことを女性であるとは主張しません。周りの社会が彼らを女だとはみなしていないだけでなく、彼ら自身も自分たちを女だとは認識していないということです。女性のように生活することは彼らにとって去勢と同様に、生まれ持った男性という性を放棄するための象徴的な行為であって、女性そのものになろうとしているわけではないのです。つまり、彼らは男性というジェンダーから女性というジェンダーに移行するのではなく、あくまでも“ヒジュラという第3のジェンダー”に移行するのです。
********************

なお上記サイトによると、ヒジュラには、半陰陽、不能者、去勢した者、その他一切の性的に不完全である“チブラ”、女装してはいるが、去勢していない“アクワ”、男装のままで女性のように振舞う“クルクルムンディ”の3種類がいるそうです。

インドだけでなく、タイなどでも、いわゆるオカマ達はよく目にします。
何かこうしたものは“オカマ文化”的な共通の土壌があるのでしょうか?

【ネール王朝とLTTEのテロ計画】
なにやら深遠なテーマのようにも思えますが、そちら方面の見識もないので話をインド選挙に戻すと、与党「インド国民会議派」内では、故ラジブ・ガンジー首相の妻ソニア総裁(62)の長男、ラフル幹事長(38)の首相就任を期待する声が高まっているそうです。
会議派はすでにシン首相(76)の続投方針を決めていますが、低迷する党勢の打開策としてラフル氏への「世代交代論」は根強く、選挙で伸び悩めば執行部の若返りが一気に進む可能性があるとか。【4月20日 毎日】

“ネール王朝”待望論ですが、スリランカの反政府組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」がソニア・ガンジー総裁と長男ラフル氏などの家族を標的とするテロを計画しているとして、内務省が全国の警察に警戒を指示したとの報道もありました。【4月9日 読売】

LTTEは、1991年にガンジー総裁の夫ラジブ・ガンジー元首相を爆弾テロで殺害していますが、スリランカで最終段階に追い詰められているLTTEにその余裕があるでしょうか?
あるいは、追い詰められているからこそ暴発することもあるのでしょうか?

とにかく、インド総選挙の結果発表が待たれます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする