孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型インフルエンザ  依然わからないリスクの程度 遅れたメキシコの対応

2009-04-29 13:44:41 | 世相

(メキシコ 魅力的な女性はマスクをしていても・・・ 
“flickr”より By ALTO CONTRASTE . Edgar AVG
http://www.flickr.com/photos/eantoniovg/3484148699/)

【冷静な判断が必要】
新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)感染が世界中に拡大していることは連日の報道のとおりです。
(被害が集中しているメキシコでの実態はよくわからないことが多いようですが。)
またこれも報じられているように、一番の疑問は、メキシコでの感染が疑われる死者が152名(28日段階)と報じられているように、なぜメキシコだけで重傷者が多いのか? 今回の新型インフルエンザの毒性はどれほどなのか? という点です。

WHOの専門家すら判断に苦慮しているところですので、なんとも言いようのないことですが、明らかなことは、従来からのインフルエンザでも日本国内だけで毎年数百人、多い年には千人を越える死者が出ており、今回の新型インフルエンザの脅威に関しては、そうした全体像の中でそのリスクを冷静に判断する必要があるということです。
その意味で、懸念されていたような鳥インフルエンザからの高病原性の新型インフルエンザ・パンデミックとは少し様相が異なるような感じがしています。

付け加えると、仮に今回の新型インフルエンザの毒性がさほど強くなく、パニックになる必要がないものだったとしても、全く免疫のない高病原性の鳥インンフルエンザ起源の新型インフルエンザ発症の危険、社会全体を麻痺させるようなパンデミックの危険は、依然として続いており、多分いつかは現実のものとなるのでは。
また、今回の新型インフルエンザウィルス自体も、今後の感染拡大の過程で変異していくことも考えられます。

【「世界初のケースだからだ」】
もうひとつ、今回の新型インフルエンザに関して明らかなことは、発生国メキシコ政府の対応の遅さ、情報の不透明さです。

****新型インフル:メキシコ、手薄な検査体制 国民は疑心暗鬼*****
新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の感染が広がるメキシコで、ウイルス感染検査がこれまで1日15検体しかできていなかったことがわかった。同国政府は28日、200検体に検査能力を強化するが、重症肺炎だけでも1995例あり、軽症例も入れれば実態把握は困難を極める。また、政府の情報公開は不十分で、国民の間には「政府は何か隠している」との疑心暗鬼が広がる。
メキシコでは、これまで設備などの制約から、自前では少数の検体しか検査できず、米、カナダの支援で検査能力を引き上げた。最初の症例が確認されたとされる2日から約4週間後の態勢強化だ。
コルドバ保健相は、感染者数は「数週間で明らかになるだろう」と語るが、重症者よりけた違いに多いと予想される軽症者まで政府は把握していない。

また、患者家族への聞き取り調査や治療薬提供について保健相は「人員が十分でなく、すべて対応できていない」と打ち明ける。
AP通信によると、メキシコ市から約65キロ離れた村で2週間前に男性(39)が新型インフルエンザで死亡した。しかし、当局は遺族にも近所にも調査に来ない。男性の妻は26日、AP通信の取材で初めて、夫が新型インフルエンザで死亡したことを知ったという。
メキシコはラテンアメリカの大国だが貧富の差は極めて大きい。貧困層は病院に行けず、病院側も予算不足で機材の老朽化や医薬品の欠乏に苦しむ。

一方、政府は、いまだに最初の発症例や感染の全体像をつかめていない。保健相はこれまで4月13日に発症が確認された女性が最初に把握できたケースとしてきたが、27日の会見で、4月2日に4歳男児の感染を確認していたことを明かした。
政府の対応が遅いとの記者の批判に保健相は「世界初のケースだからだ」と、問題ないとの見解を示した。
情報提供も混乱している。メキシコ市長が独自に市内の新たな死者数を発表。政府発表と食い違いが起こった。また、保健相が記者会見を開かず、地元テレビ1社に患者・死者数を明らかにするケースが続いている。
政府は豚インフルエンザによる死者は20人とするが、死亡日や性別、年齢、職業、感染状況などを明らかにしていない。「政府は隠している」とのうわさも市民に流れている。
しかし、エスピノサ外相は、世界保健機関が国境閉鎖しないよう勧告したことを「メキシコ政府の対策が適切であるというメッセージ」と述べるなど、国際社会の常識とかけ離れた自信も見せる。【4月28日 毎日】
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【検討が必要な今後の初期対応】
世界中がこれほど騒いでいるなかで、発生国メキシコの情報が殆ど開示されていないのは非常に困った問題です。
メキシコ当局が24日に豚インフルエンザの発生を確認したことを発表した段階で、感染が疑われる死者は60人、感染者は800人規模に達しており、いかにも遅すぎます。
“4月2日に4歳男児の感染を確認していた”ということであれば、すでに三週間が経過しています。
この間、WHOへの連絡、もし連絡を受けていたとしたらWHO側の対応はどのようになっていたのでしょうか?

2003年のSARSのときも、中国政府の情報開示が遅れたことが被害を拡大させることになりました。
メキシコが対策のための人的・物的・資金的資源が充分でないということは、ひとりメキシコだけの問題ではありません。
今後、新たな新型インフルエンザ等の脅威が発生するのは、恐らく同様の環境の国でしょう。
そうした国で発生したとき、WHOを中心にどのような対応をとるべきか、今後に向けて検討する課題が多いように思われます。

【困難な感染拡大防止】
インフルエンザがSARSと比べて難しいのは、“SARS(重症急性呼吸器症候群)の場合では、発病から10日後が最も激しい感染期で、患者はそれまでに隔離されていた。これに比較し、豚インフルエンザの感染期のピークは、発病よりも前にあるとみられ、この場合、感染を食い止めるのはより難しいという。”【香港大学の微生物学専門家、袁國勇氏 4月28日 毎日】ということにあります。
本人が体調不良に気づいたときにはすでに周囲にウイルスを撒き散らしているということで、これでは感染拡大防止は困難です

感染拡大防止については現在空港・港での水際作戦が取られていますが、WHOの広報担当は「もしも感染していたり、感染源に接触したとしても、空港にいる時点で症状は現れていないだろう。空港での検査、検疫は役に立たない。搭乗客の体温監視も、潜伏期の患者を見つけ出すことはできない」と語っています。【4月28日 AFP】

完全に水際でチェック・阻止できなくても、対象者に注意を促し、何らかの監視下におくことが出来れば、“空港での検査、検疫は役に立たない”ということはないようにも思えます。
ただ、感染の流入を阻止することは、これだけ人的往来が増加し、スピードアップしている現在の社会では非常に困難なことであることは事実でしょう。

【GW旅行は?】
今、個人的に懸念しているのは、来月2日からのマレーシア・ボルネオ島へ旅行への影響です。
いまのところマレーシアでは感染者は報告されていないようですが・・・。
帰国時の関西空港での乗り継ぎ時間があまりなく、検疫で時間をとられると間に合わなくなるという心配も。

03年SARS感染が問題になっていたときは、ラオスへ行きました。
一応空港ではマスクを・・・と用意はして行ったのですが、実際にマスクをすると息苦しくなかなか着けていられません。特に現地では暑くて、とてもマスクなんてしていられませんでした。
息苦しいためしょっちゅうマスクに手をやることが、SARSのときの医療関係者の院内感染を助長したとの話も聞きます。さもありなんという感じがします。

コメント
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