孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

グルジア  高まる大統領辞任要求 NATO軍事演習へのロシアの反発

2009-04-26 13:16:48 | 国際情勢

(サーカシビリ大統領に退陣を迫る野党勢力の指導者、ブルジャナゼ前国会議長
かつてのバラ革命では、サーカシビリ大統領と共闘した関係ですが・・・
オレンジ革命のウクライナでも同様の争いが展開されています。
東欧のカラー革命の夢は今、厳しい現実に直面しています。
“flickr”より By gipajournos
http://www.flickr.com/photos/37237190@N07/3435459008/)

【苦悩するサーカシビリ政権】
グルジアとロシアと軍事衝突が起きたのが昨年8月。
グルジアのサーカシビリ大統領は当初「最初に侵攻したのはロシア軍」と主張していましたが、11月、グルジア側が先に軍事行動を起したことを認めました。
そのうえで、「ロシア軍がグルジア領内に入っているという情報を何度も確認した」、「(ロシア軍の)干渉から領土を守り、市民を救うために決断した。他に選択肢はなかった。」と、その行動を正当化しています。

2003年11月の“バラ革命”で誕生したサーカシビリ政権は、親欧米を明確にし、NATO加盟・開かれた社会の創設・汚職の撤廃・経済の再建を掲げました。
欧米対ロシアという図式で見ると、グルジアはウクライナと並び、欧米側が旧ソ連圏に築いた橋頭堡となっています。

サーカシビリ大統領はロシアとの衝突・緊張関係でグルジアのNATO加盟が加速されると考えていたとも言われていますが、NATOはこれ以上のロシアとの対立を望まず、12月にはグルジア・ウクライナのNATO加盟を見送り、対ロシア協調を優先するドイツ・フランス主導で対ロシア定期協議の一部再開に乗り出す流れとなっています。

ロシアはグルジアへの圧力を強めており、紛争後はグルジアからの輸入を停止。
これによりグルジアは輸出の70%を失いました。
ロシア・メドベージェフ大統領は、サーカシビリ大統領がその地位に留まる限り貿易再開はないと明言しています。
また紛争により、国外からの投資も激減しました。
更に、その後の世界同時不況の波が押し寄せ、グルジア経済は非常に困難な状態に追い込まれています。

【問われる大統領の責任】
こうしたなか、軍事衝突で大きな負担を抱えることになった国民からは、NATOからもはしごをはずされた形のサーカシビリ大統領に対し、大統領の責任を問う強い批判が起きています。

“紛争時のロシア軍の攻撃でインフラや物資供給網が寸断されたグルジアの経済的損失は10億ドルに上るとされ、最近のグルジア紙の世論調査では「すべての問題の責任は大統領にある」との回答が89%に上ったケースもあるという。
さらに、03年の政変劇「バラ革命」で大統領と共闘した有力女性政治家、ブルジャナゼ前国会議長が11月下旬、反政権野党を旗揚げして対決姿勢を鮮明にした。孤立無援のサーカシビリ氏が求心力回復のために取りうる手段も限られているのが実情だ。”【08年12月7日 産経】

ブルジャナゼ氏は2月、「統一グルジア運動」など八つの野党勢力と、グルジアの独立記念日4月9日までのサアカシュビリ氏の辞任を求める共同声明を発表。
3月15日には首都トビリシで数千人規模の街頭デモを行い、サーカシビリ大統領が辞任に応じない場合は、無期限の街頭デモをするとしていました。

これに対し、政権側は3月22日、武器の不法所持容疑で「民主運動・統一グルジア」の地方支部指導者ら7人を逮捕。
野党側は4月9日、大統領の辞任を求める大規模集会を決行。

****サーカシビリ大統領の辞任要求=野党が大規模集会-グルジア****
昨年8月、ロシアとの軍事紛争が起きたグルジアの首都トビリシで9日、主要野党による大規模な反政府集会が開かれ、サーカシビリ大統領に辞任要求を突き付けた。紛争後、国民の反ロシア感情の高まりで、大統領の求心力は一時強まっていたが、政権存続の正念場に直面しつつある。
インタファクス通信などによると、トビリシ中心部にある議会前広場には6万人を超える市民が集結。野党「民主運動・統一グルジア」を率いるブルジャナゼ前議会議長は「国民の大半が大統領の辞任を求めている」と述べた。
辞任要求の高まりの背景には、大統領への権力集中への批判のほか、ロシアとの軍事衝突を回避できなかった責任を追及する声がある。【4月9日 時事】
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国内的には“正念場”に立たされているサーカシビリ政権ですが、国際的にはNATOの軍事演習がグルジアで予定されており、再びロシアとの緊張が高まっています。

【再び高まる緊張】
****グルジアで来月NATOが演習 ロシア反発、対抗示唆*****
北大西洋条約機構(NATO)が来月、グルジアで計画する軍事演習にロシアが猛反発している。昨年8月のグルジア紛争で冷え切った露・NATO関係はここにきて改善の兆しを見せていたものの、この演習が再び冷や水を浴びせそうな情勢だ。ロシア側はグルジアからの独立を承認したアブハジア自治共和国と南オセチア自治州で対抗演習を行う可能性も示唆しており、ロシアとNATO軍がグルジア領内で100キロたらずを隔てて対峙(たいじ)する緊迫した状況も想定される。

NATOは5月6日~6月1日、グルジアの首都トビリシの東方約20キロで19カ国の約1300人による演習を行う予定。これに対し、ロシアのロゴジンNATO大使が「挑発行為だ」として演習中止を求めたほか、メドベージェフ大統領も計画を「近視眼的で非友好的」と非難し、「必要があれば何らかの決定をする」と述べた。アブハジアのバガプシ大統領も「南オセチアとともに対抗措置をとる」としている。
一方、NATOは演習が紛争に先立つ昨年春から予定されていたとし、米国も「グルジアとの演習に何ら特別なことはない」と計画撤回の考えがないことを強調した。

NATOは今月4日の首脳会議でロシアとの定期協議「NATOロシア理事会」の再開を決めたほか、米露両国は戦略核兵器削減条約交渉を24日から開始することになっている。
旧ソ連のグルジアはウクライナとともにNATO加盟を希望し、両国を「勢力圏」とみなすロシアはその阻止を対外政策の至上課題としている。【4月19日 産経】
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ロシア側は、NATOがグルジアでの合同軍事演習を実施した場合、ロシアとNATOが来月7日に予定している軍トップ会談に応じない意向を示しています。

素人考えでは、グルジアのような紛争の後始末が終わっていない地域での軍事演習というのは、いかにもロシアを刺激するような行為に思えますが、どのような背景があるのでしょうか?
NATO加盟見送りの見返り条件でしょうか?
冷徹なパワーゲームの中の一手でしょうか?


コメント
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