孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スリランカ  近づく最終段階 懸念される市民犠牲者

2009-04-22 22:06:36 | 国際情勢

(LTTE支配地域から脱出するタミル系住民 スリランカ政府提供写真 “ロイター”より)

【人間の盾】
スリランカの反政府武装組織「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)に関しては、これまでも度々話題にしてきました。
最近では取り上げるたびに、“いよいよ最終段階に近づいている”というふうに書いてきましたが、その割に決着はまだついていません。意図的に政府軍は遅らせているのでは・・・と勘ぐるぐらいでした。
しかし今度こそ、1972年以来続いてきたLTTEとの戦闘にようやく終止符が打たれる“最終段階”のようです。
このブログを書いている間にも事態が動くこともあり得ます。

最高指導者のプラバカラン議長率いるLTTEは、沿岸と内陸を完全に包囲された十数平方キロの北東部地域に追い込まれており、スリランカ政府は21日正午を降伏期限に定めて通告を行っていました。
そして、その期限も過ぎ、進軍を開始したとの報道もあります。
LTTEがたてこもるこの地域には、21日段階で、国連の推定では依然10万人前後の民間人がいるとみられ、多くがLTTEに「人間の盾」として利用されている可能性が高いとされています。

国連や西側諸国は、市民解放のために軍が停戦を延長するよう要請していますが、スリランカのラジャパクサ大統領は20日のブラウン英首相との電話会談で、軍事行動を停止する考えがないことを言明しています。
一方、LTTE側も、徹底抗戦の構えを見せています。【4月22日 ロイター】

赤十字国際委員会(ICRC)は、現状を「壊滅的な事態」として、軍とLTTE双方に対し、市民にこれ以上の犠牲者が出ないよう呼び掛けています。ICRCによると、この2日間で市民数百人が死亡しているとのことです。
また、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は20日、「民間人の犠牲は戦争犯罪と考えられる」と警告しています。

スリランカ政府は、市民保護のため砲撃をしない「安全地帯」を設けていると説明してきましたが、市民の死傷者の多くがこの「安全地帯」で発生していると国連人権高等弁務官は声明を出しています。
LTTE側は市民を「人間の盾」とし、また、兵士への強制徴用をしているとも。

****スリランカ内戦 国連「市民2800人以上死亡の恐れ」*****
政府軍と武装組織「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」の内戦が最終局面にあるスリランカ北部の状況について、国連人権高等弁務官は13日、「信頼できる情報筋によれば、1月20日以来、(戦闘による砲撃で)2800人以上の市民が死亡し、7千人が負傷した可能性がある」とする声明を出した。
声明は、15万~18万人の市民が戦闘地域に閉じこめられていると推計。死傷者の3分の2以上が、政府がLTTE支配地域内に設けた「(砲撃をしない)安全地帯」で出ているとし、「市民の被害のレベルは本当に衝撃的であり、戦闘がこのように続けば、犠牲が破滅的になる恐れがある。紛争地域では食料や医療品も手に入らない」と深刻な懸念を表明した。
LTTEに対しては「報道では、市民を『人間の盾』として囲い込み、子供を含む市民を強制的に兵士として徴用している」と批判した。
AFP通信によると、スリランカのサマラシンハ人権担当相は「根拠のない数字」と否定した。しかし、政府は紛争地域へのメディアの立ち入りを認めず、戦闘被害の確認は非常に困難な状況が続いている。【3月14日 朝日】
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【制圧か降伏か 大量脱出】
最終段階が近づいたここ数日で、LTTE支配地域からの市民の大量脱出がおきています。

****「人間の盾」8万人以上が避難=制圧作戦間近か-スリランカ*****
内戦が最終段階にあるスリランカで、敗色鮮明な反政府組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」のゲリラが潜伏、抵抗を続ける北東部の海岸地域から、人間の盾として留め置かれていたとみられる民間人が雪崩を打つように流出し、軍当局者によると22日までの3日間だけで8万1423人が避難した。

この地域は本来、民間人の安全を確保するための「非交戦地帯」だが、事実上、LTTEの最後の支配地となっている。沿岸と内陸を完全に包囲された十数平方キロの地域には最高指導者のプラバカラン議長以下、戦闘員少なくとも200人がいるとみられている。
政府が呼び掛けていた降伏期限は21日に切れており、近く最終制圧作戦が行われるとの観測が高まっている。軍は残り数千人とみられる人間の盾の救出を続けながら、制圧のタイミングを見極めている。【4月22日 時事】
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“200人”というのは相当に少ない数字です。
その程度の人数で十数平方キロの地域に何万人もの市民を人間の盾して閉じ込めるのは困難にも思えます。
一方で、どのくらいの市民が残っているかも、よくわかりません。
“残り数千人”というのも、根拠はあまりない数字のようにも思えます。
これまでも、政府側・LTTE側双方とも、被害状況や戦闘成果について大本営発表的な自分達に都合のいい全く食い違う発表を重ねてきていますので、数字的なところは何を信用していいのかわかりません。

ここに至っては、 “完全降伏”に近い形で市民の犠牲者がこれ以上増えない決着を望みますが、自爆攻撃を世界で最初に実施した組織と言われる戦闘的なLTTEですので、難しいところです。
大勢の市民犠牲者は、今でも国際的批判を受けているスリランカ政府側にとっても好ましいものではありません。
本来なら、こういう場面でこそ国連の仲介があってしかるべきなのですが・・・。

(続報)
LTTEからの幹部投降が出始めているようです。

****LTTE主要幹部が投降、市民10万人が避難 スリランカ****
スリランカで22日、大勢の市民が避難できずに取り残されているとの国際社会からの警告にもかかわらず、スリランカ軍が反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ(Liberation Tigers of Tamil Eelam、LTTE)」への掃討作戦を続行する中、LTTEの主要幹部2人が投降した。

投降したのは、LTTEの主要な対外窓口を務め「Daya Master」の呼び名で知られたVelayudam Dayanidi広報担当と、LTTEの政治部門トップ、S.P.タミルセルバン(S. P. Thamilselvan)氏。

また、スリランカ軍によると、LTTEが今もなお支配を続ける地域から、市民10万人以上が避難した。また、国防省は、スリランカ軍は避難できずにいる市民らを攻撃しておらず、「救助活動を行っている」と語った。スリランカ軍は、LTTEが「人間の盾」として市民らを人質に取り、避難する市民らを銃撃していると主張している。
軍によると、避難する市民の中にLTTEメンバー3000人がいたという。

赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross、ICRC)のピエール・クレーヘンベール(Pierre Kraehenbuehl)事業局長によると、LTTEの支配地域には、まだ数万人の市民が取り残されている可能性がある。また、避難民のための救助施設が足りなくなっているという。
国連(UN)によると、避難が始まる前、LTTEの支配地域には市民15万人が取り残されていた。【4月22日 AFP】
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コメント
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