(今年4月のG20で、オバマ大統領と握手を交わす胡錦濤国家主席
“flickr”より By handshake
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【途上国に軸足を置いた首脳外交】
23日、中国の胡錦濤国家主席が中国の国家主席として初めて国連総会の一般演説を行いました。
これまで国家主席が国連の場に出てこなかったというのも、自らは赴かず、周辺“属国”が朝貢に中国を訪れてきた中華外交の歴史でしょうか。
そのあたりの事情は下記の記事に。
****中国主席:国連総会で初の一般演説 途上国の立場を強調*****
中国の胡錦濤国家主席が気候変動や核不拡散・核軍縮などニューヨークでの一連のサミットで途上国に軸足を置いた首脳外交を展開している。23日には中国の国家主席として初めて国連総会の一般演説を行い、途上国の立場を強調しながら先進国をけん制した。
「中国は責任ある発展途上国の大国として、ほかの途上国を全力で支援していく」。胡主席が一般演説で、不況に苦しむ発展途上国への債務減免などを表明すると、国連多数派の途上国代表たちから拍手がわき起こった。
歴代の中国国家主席が国連総会での一般演説を見送ってきたのは、地球規模の問題で声高に主張すれば、中国が「国内問題」と位置づける台湾やチベットの問題で揚げ足を取られ、国際問題化することを恐れたからだ。
しかし、台湾で昨年5月、中国との融和路線を訴える馬英九政権が誕生し、中台関係の改善が進んだ。チベットやウイグルなどの少数民族問題はエスカレートしているが、中国批判の急先鋒(せんぽう)だった米国は昨年以来の金融危機に足を取られ、世界一の米国債保有額を誇る中国の協力を必要とするようになった。気候変動や核不拡散、金融危機は「新興国、途上国の協力なしには解決できない問題ばかり」(同行筋)という事情もある。
ピッツバーグに舞台を移して開かれる主要国・地域(G20)の金融サミットでも「新興国、途上国の発言権拡大や最貧国支援を訴え、中国に負担を求める先進国側をけん制していく展開」(北京外交筋)になりそうだ。【9月24日 毎日】
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“責任ある発展途上国の大国”というのは従来からの中国の主張ですが、使い方によっては“都合のいいときだけ発展途上国としての立場を主張する”ということにもなりかねません。
くれぐれも“責任ある”の部分にも最大限に留意してもらいたいものです。
【「核兵器は中国にとって政治的に有用なものをもたらした」】
ところで、胡錦濤国家主席はこの演説で、「核軍縮推進」の必要性を強調していますが、国内には“核途上国”としての主張が根強いようです。
****核軍縮 中国主導に反対の声 国連演説、胡主席は推進強調****
米国とロシアの核軍縮が動き出す中、軍拡を続ける中国の動向が注目されている。胡錦濤国家主席は23日、国連総会で行った一般討論演説で、「核軍縮推進」の必要性を強調してみせた。しかし、共産党機関紙・人民日報系列の国際情報紙「環球時報」は24日、「核兵器は中国にとって政治的に有用なものをもたらした」と指摘、中国が核兵器廃絶に向けたイニシアチブをとることに反対する姿勢を示している。
胡主席は23日の演説で、「核兵器の全面禁止と廃絶、核兵器のない世界をつくることは中国の一貫した主張だ。国際社会は核軍縮推進に向けた確実な措置を進めるべきだ」と表明。4月のプラハ演説で「核兵器のない世界」の実現を提唱したオバマ米大統領と足並みをそろえた。
しかし、中国の核兵器数は米露に比べ圧倒的に少ない。
中国は1950年代から核兵器や、運搬手段である弾道ミサイルの開発を進めてきた。保有する核兵器は400発程度と見積もられてきたが、最近の専門機関の報告では、旧型の退役や通常弾頭型への転換などで配備数約130発、備蓄約70発の計約200発と指摘されている。
これに対し、米露は配備済みの戦略核弾頭だけで2千発を超す。このため、中国では「(廃絶の)責任は主に米露で、中国主導ではない」(環球時報)との立場が一般的だ。
今年5月に訪日した人民解放軍の馬暁天・副総参謀長も、シンポジウムで「中国の核兵器量は少ない。(米露の削減交渉に)中国は参加する資格はない」との見解を述べたとされる。
中国は核兵器の質的向上を続けており、建国60周年の10月1日の国慶節では「国防の重要な支柱」(同紙)として核兵器を大々的に披露する予定だ。
こうしたことから、環球時報は「(核兵器は)中国の政治的影響力の核心的要素のひとつ」で、まずは米露などの核軍縮の行方をみるべきだと強調。「米露など核大国が最後の1発を破棄するときに、中国も全面廃棄すべきだ」と主張している。【9月25日 産経】
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こうした対応は別に中国だけのものではありませんが、“責任ある大国”として、世の中の流れを妨げることのないように願いたいものです。
【今後の中国の対応が焦点】
国際的には、こうした中国の協力が不可欠になっています。
経済問題や温暖化対策もですが、イラン・ミャンマー・北朝鮮といった“問題国”への対応も中国が鍵を握っています。
イランの核問題では、イラン包囲網に向けてロシアの協力を取り付けた形ですが(実際問題となったときロシアがどのように行動するかはまだ不透明ではあるようですが)、包囲網が実効を持つためには中国の協力が欠かせません。
****イラン核問題:追加制裁は中国の出方焦点*****
オバマ米政権はイランの核問題でロシアから追加制裁への同意を取り付け、10月1日にジュネーブで開かれるイランとの核交渉に向けて国際社会の圧力を強めることに成功した。だが、イランに石油製品を輸出しているとされる中国は制裁強化に消極的な姿勢を崩しておらず、制裁論議がイランに軟化を促す「ムチ」として有効に機能するかどうかは中国の出方にかかっている。
交渉は当初、トルコ開催が有力視されていたが、関係国間の調整の末、変更された。イランは協議相手である国連安保理常任理事国(米英仏露中)とドイツの6カ国にあてた文書で対話姿勢を打ち出しながらも、安保理が停止を求めるウラン濃縮活動には触れていない。このため6カ国側はイランに核問題での「真剣な返答」(ミリバンド英外相)を要求する方針だ。
6カ国側はイランに「アメ」(対話・支援)と「ムチ」(制裁)の両にらみで臨む。昨年7月の協議では「イランがウラン濃縮を停止すれば原子力平和利用に協力し、停止中は追加制裁を実施しない」との見返り案を示したが、イランが濃縮停止を拒否した。今年6月の大統領選の混乱が尾を引く中、イラン側から停止要求の受け入れを示唆する発言は出ておらず、交渉は難航が予想される。
交渉を1週間後に控え、国連総会は欧米首脳がイランに外交圧力を強める場となった。サルコジ仏大統領は、イランが国際社会の足並みの乱れを期待して「悲劇的な過ち」を犯さないように警告し、12月を協議打ち切りの期限に設定すべきだとの考えを示した。ブラウン英首相も「さらなる制裁を検討する」用意を強調した。
オバマ米政権が検討中とされる追加制裁は石油製品の取引停止だ。イランは産油国だが、ガソリンなどの石油精製品を輸入している。ロシアは制裁強化に同調姿勢を示したが、中国は「制裁や圧力は問題を解決する方法ではない」(外務省報道官)との立場だ。23日付の英紙フィナンシャル・タイムズは中国の国営企業が第三国を通じた貿易でイランの石油製品輸入の3分の1をまかなっていると報じており、今後の中国の対応が焦点となる。【9月24日 毎日】
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中国が“責任ある大国”として国際社会と歩調をそろえてくれると、現在の国際社会の抱える問題の多くが進展するのですが・・・。
そうした発想は“欧米先進国” 的な一方的見方なのでしょうか。