孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  新たな核施設の存在をIAEAに報告

2009-09-26 09:24:27 | 国際情勢

(IAEA主催の舞踏会 熾烈な国際政治の場でもあります。 天野新事務総長は大丈夫か?
“flickr”より By Guss
http://www.flickr.com/photos/zooberts/3318161155/)

【「追加制裁などをかわす材料にする狙いがある」】
イランの核開発問題については、昨日も少し触れたように、ロシアの協力も得て追加制裁に向けた6カ国の包囲網が進みつつあります。
6カ国側はイランに「アメ」(対話・支援)と「ムチ」(制裁)の両にらみで臨んできており、昨年7月の協議では「イランがウラン濃縮を停止すれば原子力平和利用に協力し、停止中は追加制裁を実施しない」との見返り案を示しましたが、イランが濃縮停止を拒否。その後もイラン側から停止要求の受け入れを示唆する発言は出ていません。
ジュネーブでの交渉を来月1日に控え、国連総会は「核兵器のない世界」の流れのなかで、欧米首脳がイランに外交圧力を強める場となった感があります。

そして、ここにきてイランが2カ所目となるウラン濃縮施設の存在を認める書簡をIAEAのエルバラダイ事務局長に送っていたことを明らかにしたことで、事態は更に加速しそうな状況です。
IAEAはこの施設について、イランが未申告のまま建設した保障措置協定違反の疑いがあるとして、イランに対し具体的な情報提供と施設立ち入りを要求しています。

****イラン、第2の核施設あった IAEAに書簡で告白*****
国際原子力機関(IAEA)は25日、核開発疑惑が指摘されているイランが21日、同国で2カ所目となるウラン濃縮施設の存在を認める書簡をエルバラダイ事務局長に送っていたことを明らかにした。
イランはこれまでIAEAに対し、同国中部ナタンズの施設以外にウラン濃縮施設は存在しないと報告していた。国際社会から強い反発が起きるのは間違いない。

IAEAによると、新たに判明した核施設は一部建設中か試験運転の段階で、本格的なウラン濃縮活動は始まっていない模様だ。イラン側は「完全な情報は適切な時期に提供する」としている。
IAEAはイランに対し速やかに情報を提供し、査察を受け入れるよう求めている。
AP通信によると、施設はテヘランの南西約160キロに建設され、来年中に3千基の遠心分離器が稼働可能な状態にあるとの情報もある。
イランは現在、ナタンズの核施設で、国連安全保障理事会の決議に反してウラン濃縮活動を継続。IAEAの報告では8月時点で約4600基の遠心分離器を稼働し、これまでに製造された低濃縮ウランの総量は約1.5トンに達した。専門家によれば、高濃縮にすれば核爆弾1個分に相当するとされる。
IAEA内では、イラン核問題を巡り、イランが報告している以外にも核兵器開発を進めている可能性を示す証拠があるとの疑惑が以前から取りざたされていた。
国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランとの協議が10月1日にジュネーブで開かれる予定で、この時期にイランが新事実を明らかにしたのは、隠し事はしていないという態度を見せることで「追加制裁などをかわす材料にする狙いがある」との観測が外交筋の間で広がっている。
イラン核施設を巡っては今回の施設と別に、同国反体制派が24日、核兵器に必要な高性能爆発物の研究施設と製造施設の存在を指摘している。 【9月25日 朝日】
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【「何も恐れていない」】
オバマ大統領は会見で、イランが数年前からIAEAへの通告なしに建設を進めていたことを重視し、「(ウラン濃縮凍結を求める)国連安保理決議とIAEAの要求に従う意思がないことを示した」と批判しています。また、イランには原子力の平和利用の権利があるとしながらも、「(新たな)施設の規模や構造は平和開発と一致しない」と軍事利用の可能性があることを指摘しています。【9月26日 毎日】

イラン・アフマディネジャド大統領は25日記者会見し、「国際原子力機関(IAEA)の規制の枠内であり、法に従っている」と述べ、建設を秘密裏に進めていたとの非難に反論しています。
****イラン大統領、「核施設は法に従って建設」 批判に反論****
大統領によれば、IAEAの規則上、新たな施設についてはウラン濃縮を始める6カ月前までに報告義務があるが、イランは1年半前に報告したとしている。「もし秘密の施設なら、なぜ規則より1年以上早く報告する必要があるのか」と、IAEAへの協力姿勢を強調した。
新施設の査察に関しては「受けることに関して何の問題もない。何も恐れていない」と語った。【9月26日 朝日】
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IAEA規則についてはわかりませんが、イランはこれまでナタンズの施設以外にウラン濃縮施設は存在しないと報告していただけに、批判と不信感の高まりは止むを得ないところでしょう。

イランでは7月の大統領選不正疑惑を巡り、改革派を中心に国民の間に政権に対する不信と不満が蓄積されたままだ。石油製品などの追加制裁により国内経済が一層悪化すれば、政権への不満が再び噴き出し、反政府運動が活発化する可能性もあります。ガソリン価格値上げ・不足などは国民の生活を直撃します。
もとより、アフマディネジャド大統領に対しては、欧米との危険な対立を煽るような外交ではなく、もっと国内経済問題に専念すべき・・・との批判が、保守派内部からもあったところですので、政権内部の混乱も引き起こしかねません。
“中国はイランの立場に理解を示しているものの、かばいきれなくなる可能性が出てくる。”【9月26日 毎日】とも。

それと、IAEAの対応も注目されるところですが、IAEA事務局長には日本の天野氏が9月14日のIAEA総会での正式承認されており、12月に5代目の事務局長に就任します。任期は4年。
最も厳しい国際的せめぎあいの場のひとつを取り仕切る訳ですが、大丈夫でしょうか?
国連の潘基文事務総長は非常に厳しい評価を突きつけられていますが・・・・。


コメント
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