goo blog サービス終了のお知らせ 

孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  マスメディアで高まる「中国脅威論」

2009-09-22 18:05:40 | 国際情勢

(今年4月、中国と領有を争うアルナチャルプラデシュ州を訪れたインドのプラティバー・パーティル大統領 “flickr”より By ahinsajain
http://www.flickr.com/photos/ahinsajain/3420767662/

【過熱報道】
世界の流れは、いわゆる新興国の影響力が高まる方向に急速に向かっています。

****G20:恒久開催へ 米提案に各国同意 新興国の台頭で*****
主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会議)に参加する日米欧と、中国など新興国は、昨秋からの金融危機対応のため、開催してきた同サミットを、今後も定期的に開催していく方針を固めた。世界経済の安定には先進国だけでなく、急速な経済発展を遂げた新興国を含めた議論が不可欠になったことが背景にある。世界の外交の主舞台がG20に移ることで、日米欧露8カ国によるG8サミットを重視していた日本は、存在感の低下が課題になりそうだ。(後略)【9月19日 毎日】
*********************

その新興国を牽引するのが中国とインドである訳ですが、互いに政治・軍事的影響力、資源獲得を争うライバルでもあると同時に、重要な貿易パートナーでもあります。
両者は国境紛争を抱える関係でもありますが、最近インドメディアで「中国脅威論」が高まっており、両国政府を苦慮させているとか。

****印メディアに国境「中国脅威論」 最大の貿易相手、政府は自制要求****
インド政府が、中国との国境沿いの情勢をめぐる過熱報道を自制するよう、印メディアに求める事態になっている。政府にとって、スリランカやパキスタンなどインドの周辺国で存在感を高め根強い不信がある中国は、いまや最大の貿易相手国でもある。それだけに対立は得策ではなく、メディアの“刺激”が続けば「誰かがどこかで冷静さを失い間違った方向に向かうかもしれない」(ナラヤナン国家安全保障顧問)と懸念を強めている。

「インド・チベット国境警察の兵士2人が、2週間前に中国側からの発砲で負傷」。インド紙タイムズ・オブ・インディアは15日付の1面で、情報筋の話として報じた。外務省報道官は「報道は事実に反する」とすぐさま反論。シン首相やカプール陸軍参謀長も「中国首脳とは連絡を取っている」「国境沿いで何ら深刻な事態はない」と、事態の沈静化を図った。同時に、内務省は発砲記事を書いた記者2人を刑事告発し、情報源を明らかにさせる方針だとの報道もある。

今年に入ってインドでは(1)東北部アルナチャルプラデシュ州での水資源開発に対するアジア開発銀行(ADB)の融資を、中国がつぶそうとした(2)8月下旬にシッキム州ナトゥラ峠で両国軍が衝突した-などの報道が相次いだ。政府はいずれも否定するか、沈黙を守っている。クリシュナ外相は「国境は平和だ」と明言し、メディアは「外務省は中国の“侵入”に目をつぶるのか?」とかみついた。

政府がここまで火消しに躍起なのには、いくつか理由がある。
印中両国の2008年の貿易額は、前年比34%増の520億ドルに達する見通しだ。また、世界貿易機関(WTO)や地球温暖化をめぐる問題では、同じ新興国として先進国と対峙(たいじ)するために、中国との連携がインドには欠かせない。西側に緊迫した状況が続くパキスタンとの国境を抱えるだけに、東側の中国との国境問題で必要以上に波風を立てたくないとの思いも強い。
「合意された国境がないこと」(クリシュナ外相)が問題の根源だが、05年以降、両政府による国境問題特別代表者会合が開催されており、インド側はこの場での協議を優先させたい考えだ。インド側による中国側への“国境侵入”もあり、中国側を過度に追及できない弱みもある。
こうした中、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は、アルナチャルプラデシュ州を11月に訪問する計画だ。これまで中国に配慮し訪問を阻止した経緯もあるとされるインド政府は、今回は容認する方針を明確にしている。

サブラマニアン・スワミー元法相は産経新聞に「最近の印中間の緊張はメディアがあおっている。両国間には相互不信があり関係は疎遠になっている。状況改善は可能だが、努力が必要だ」と語る。戦略専門家のP・Nケーラ氏は「両国間の戦争の可能性は低い。経済があらゆる方面に影響を及ぼしており、今以上の経済発展を遂げるには戦争をする余裕はないことを、両国とも痛いほどわかっている」と指摘する。 【9月22日 産経】
***********************

両国の軍が衝突したかどうかはともかく、“越境”については、“インド側が実効支配しているアルナチャルプラデシュ州(中国名・蔵南地区)を中国領と主張しているため、中国軍がこの地域での活動を「越境ではない」と主張するのは当然だ。”【9月22日 産経】とも。
上記記事に “インド側による中国側への“国境侵入”もあり”とあるように、お互い様というところでしょうか。

【「誰かがどこかで冷静さを失い間違った方向に」】
マスメディアの過熱報道の背景に、“軍のタカ派がメディアを通じた世論操作を狙っているとの見方もある。”【9月21日 時事】とも報じられていますが、どうでしょうか?
西にパキスタン国境を抱えて、そんな危険なことをするものでしょうか?

インドメディアの報道に対し、中国国内でも反発が強まっているようです。
“中国国内の反インド感情が高まり、ネットでは「不当に占拠した中国の領土を取り戻せ」「チベット独立に手助けしているインドに報復を」といった書き込みが殺到した。中国政府の対応を「弱腰だ」と批判する声も少なくない”
【9月22日 産経】

少なくとも政府間においては、いくら競合する面があるかといって、軍事衝突をするような愚を犯すほど“お馬鹿”ではないでしょう。
ただ、世論を煽るメディアとか、無責任なネット世論というものは往々にして厄介なものではあります。
特に、民族主義的な論調を帯びると・・・。

間違っても「誰かがどこかで冷静さを失い間違った方向に向かうかもしれない」なんてことのないように、冷静さ保ってほしいものです。
それにしても、ダライ・ラマの件は、ひと悶着ありそうです。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする