孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「核なき世界」は近づくのか? 24日、国連安保理首脳会合

2009-09-23 22:32:56 | 国際情勢

”flickr”より By damian 78
http://www.flickr.com/photos/damian78/726830658/)

【「具体的な対策をとる緊急性」への関心】
オバマ米大統領が主宰して今月24日に開かれる国連安保理の首脳級特別会合で、アメリカが採択を目指す「核なき世界」決議案について、日本を含む15理事国が最終合意したことを明らかにしており、核保有五大国も含め全会一致で採択されることが確実となっています。

“米政府の「コンセプト(概念)ペーパー」によると、安保理首脳会合は、来年開催される核拡散防止条約(NPT)再検討会議を前に、「死活的な安全保障上の問題に焦点を当てる機会」となり、各首脳に核の脅威への「具体的な対策をとる緊急性」への関心を高めてもらう狙いがある。
核拡散の脅威に取り組む責務を世界が共有し、核の危険を減らすため、前向きに前進することを目標としているという。
具体的には、NPT体制の強化のほか、兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約締結に向けた交渉▽国際原子力機関(IAEA)の抜き打ち査察を認める追加議定書▽核実験全面禁止条約(CTBT)批准▽米露核軍縮交渉--などへの支援を確認する。
また、核不拡散のために、核の平和利用に向けた技術支援や核燃料サイクルへの多国間の取り組みなども協議対象になる。さらに、NPTからの脱退を防ぐなど、条約順守も各国に求める。”【9月18日 毎日】

アメリカの思惑は、核拡散への懸念、核兵器や核関連物質がテロリストに渡る危険性、核を維持する財政的な問題、通常兵器での突出した優位性などもあるのでしょうが、いずれにしても「核なき世界」が近づくのであれば、非常に結構なことです。
しかし、問題はパキスタン、北朝鮮やイスラエル、イランといった国々をどのように動かすかという点であり、総論で賛成しているロシア、中国、フランスといった国々も具体的な議論になると異論があるところです。

【イランも核廃絶支持?】
重要なのは具体的施策であり、行動ですが、焦点のひとつであるイランも、言葉のうえでは核兵器を否定しています。

****ハメネイ師「核兵器を根本的に拒否」****
イランの最高指導者ハメネイ師は20日、国営テレビで演説し、「われわれは核兵器を根本的に拒否し、その製造、使用を禁止している」と述べ、イランのウラン濃縮の狙いが核兵器開発にあると懸念する米欧について「それが虚偽の非難であることは、彼ら自身もそれを知っている」と批判した。最高指導者としての同師の発言が宗教的な権威に基づいたファトワ(宗教裁定)に基づいたものかは不明。同師がすでに核兵器を禁じたファトワを出したと説明をする一部のイラン当局者もいるが、ファトワの存在は確認されていない。【9月22日 産経】
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宗教的指導者の立場あってここまで明言しながら、もし実際が言っていたことと違ったらどのように説明するのだろうか?そんなことが許されるのか?国益のためなら嘘でもなんでもいいのか?・・・と、首をかしげてしまいます。

イランのモッタキ外相も、岡田外相と22日夕(日本時間23日朝)国連本部で会談した際、岡田外相が「国際社会の信頼を獲得し、疑念を晴らすよう努力すべきだ」と、国連安全保障理事会決議などが求めるウラン濃縮活動停止を要求したのに対し、イランの核活動は平和目的だとして拒否したうえで、「日本とイランは核兵器を地球上からなくすことで協力できる」と述べています。
オバマ米大統領との話し合いを要請したことについては、「米大統領はチェンジのスローガンを掲げているが、言葉だけでなく行動を見極めている」と慎重な姿勢を示しています。

【やはり交渉できなかったカットオフ条約】
「核なき世界」を掲げるオバマ米政権の登場で高まった核軍縮への期待を受けて、これまで実質的な議論ができず空転していた、核軍縮の柱の一つである兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の交渉開始が5月29日合意されました。

しかし、予想されたことではありますが、交渉は結局、一回も行われませんでした。
“当初は中国が手続き論で引き延ばしを図り、最後はパキスタンが頑強に抵抗したからだ。軍縮会議は全会一致が原則で、一国でも反対すれば前へ進めない。来年は再び、「交渉を行うかどうか」という議論から始まるが、パキスタンはすでに来年もブロックすることを示唆している。
日米などはパキスタンを説得しようとしたが、効果はなかった。一方で、表立って発言をしないものの、パキスタンに陰から声援を送っている国も複数あるとみられている。皮肉なことに、カットオフ条約をめぐるこの4カ月間の動きは、一部の国にとっての「核兵器の魅力」を改めて印象づけ、核開発をあきらめさせるのが非常に困難な仕事だという現実を思い起こさせるものとなった。
ただ、同時に確認できたのは、多くの国が核軍縮の必要性を真剣に考え始めたという、新しい現実だ。今年の軍縮会議は不発に終わったが、オバマ大統領が議長を務める国連安全保障理事会首脳会合(24日)は、新たな流れを作り出す契機になると期待されている。”【9月21日 毎日】

24日の安保理首脳会議がそうした“新しい流れ”をつくる契機となればいいのですが。

【ベルギーの場合】
核をめぐる具体的な提言として、ベルギー議会が、アメリカ議会にあてて核爆弾の撤去を呼びかける書簡を送ったそうです。

****ベルギー:米国に核爆弾撤去要請の書簡 議会*****
北大西洋条約機構(NATO)加盟国として米軍の戦術核兵器が配備されているベルギーの議会が、米議会にあてて核爆弾の撤去を呼びかける書簡を送ったことが22日分かった。書簡は米政府が計画している戦術核爆弾の改良に異を唱え、戦術核を含む米露核軍縮の推進を促している。
毎日新聞が入手した書簡は17日付で、ベルギー上下両院の国防委員長らが署名している。関係者によると、オバマ米大統領が議長を務め、核軍縮を討議する24日の国連安保理首脳会合に先立ち、21日に送付された。

米紙ワシントン・タイムズによると、オバマ政権は欧州における「核の傘」として配備されている古い戦術核爆弾B61を刷新し、性能を向上させるための予算の承認を議会に求めている。これについて、書簡は「現状ではB61が担う抑止の役割は通常軍事手段(通常兵器)によって実現が可能」であり、追加配備は「軍事的な価値はない」「無駄」と指摘している。
また、書簡は欧州配備のB61が米露間の「取引材料」とみなされている点に触れ、「B61の配備継続はロシアに戦術核の配備を続ける口実を与えている」と分析。より効果的な手段として、核兵器の先制不使用協定を含む意欲的な核軍縮の推進を提唱している。その上で、「ベルギーではB61の配備終了が最善との超党派の政治的な総意が形成されている」と強調している。

ベルギーはNATOの本部や欧州連合軍最高司令部を擁し、米科学者連盟(FAS)によると、北部のベルギー空軍クライネ・ブローゲル基地には推定10~20発の米軍のB61が配備されている。ベルギーでは、フィリップ・マウー上院議員が国内での核兵器の製造、貯蔵、移送などを禁止する法案を議会に提出しており、近く審議が始まる。【9月23日 毎日】
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国を二分する民族対立を抱えて組閣すらできない状態が続き、一時は国の分裂さえ懸念されていたベルギーですが、そうした問題とは別に、議論すべきことはきちんと議論しているようです。

【韓国では】
もちろん、隣国に中国・北朝鮮を抱える日本とベルギーでは事情は異なります。
同様のというか、北朝鮮とはより切実な緊張関係にある韓国は、北朝鮮の金正日体制に「安全の保証」を与えることで核放棄を導き出す考えを正式に表明しています。

****北朝鮮に「安全の保証」、核放棄迫る 韓国大統領が講演****
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は21日、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)体制に「安全の保証」を与えることで核放棄を導き出す考えを正式に表明した。この取引に応じることが、体制の存続にとって「最後のチャンス」とも語り、核の放棄と6者協議への復帰を決断するよう求めた。国連総会で訪れた当地での講演で語った。
大統領は北朝鮮が核放棄の意思を見せず、「対話と緊張の繰り返しに終始してきた」と批判。このパターンを打破するため、北朝鮮を除く5者が「明確な行動計画」で合意する必要を強調し、北朝鮮が核兵器開発計画の主要な部分を放棄する見返りに、5者は安全の保証や経済支援をすべきだとの考えを示した。
李大統領は、これを受け入れることが北朝鮮にとって「生き残りを確かなものにする唯一の道」と述べた。(後略)【9月22日 朝日】
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日本でも密約問題が表世界に出されるようですが、単に責任問題に終わらせず、これからの日本・東アジアそして世界の核をどうするのか・・・という議論が期待されます。

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