孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アイルランド  EU政治統合に向けたリスボン条約について再投票

2009-09-30 23:13:52 | 国際情勢

(リスボン条約賛成のポスター 首都ダブリンで “flickr”より By infomatique
http://www.flickr.com/photos/infomatique/3959145179/)

【「ユーロ圏は安定を提供した」】
アイルランドで、EUの新基本条約「リスボン条約(改革条約)」の是非を問う国民投票が、昨年6月の否決を受けて、10月2日再度実施されます。
リスボン条約は、EUが27カ国に拡大したのに伴い、欧州委員数の削減など効率化をはかるとともに、意思決定手続きの簡素化、大統領や外相にあたるポストを創設、外交力の強化を目指すものとされています。
一方で、アイルランドのような“小国”は主権が脅かされるのではないかとの不安もあるようです。
条約発効には全加盟国の批准が必要ですが、アイルランド、ポーランド、チェコが批准を終えていません。

****アイルランド:EU条約批准是非 2日、2度目の国民投票*****
欧州連合(EU、加盟27カ国)の新基本条約「リスボン条約(改革条約)」の是非を問う国民投票が10月2日、アイルランドで実施される。国民投票は、条約批准に「ノー」が突き付けられた昨年6月に続き2度目。再否決ならEUの現状に不信任が突き付けられ、欧州統合の歩みやEUの拡大路線にブレーキがかかる。アイルランド政府やEUは条約への賛成を呼びかける運動に力を入れている。

27日付アイルランド2紙の世論調査によると、条約批准賛成は55~68%で反対の17~27%を上回っているが、「態度未定」もいる。昨年6月の前回投票では反対53.4%、賛成46.6%で否決され、EUの運営を円滑化し、国際発信力を強めるための作業が足踏みを強いられた。
アイルランドの政府や主要政党は前回の取り組み不足を教訓にEUを積極的に売り込む作戦を展開している。カウエン首相は29日、英紙に「ユーロ圏は安定を提供した」と述べ、金融危機を経て世論が条約賛成に傾いているとの見方を示した。
前回、表立った運動を控えたEU機関も今回はバローゾ欧州委員長なども現地入りして賛成派を後押し。欧州委員会はEUの業績と条約の必要性を説明した冊子を地元紙の折り込み広告として配布し、条約反対派からは「大がかりな介入」との批判が出ている。

EUは今年6月、カウエン首相の要請を受け、リスボン条約下でもアイルランドの軍事的中立性や人工妊娠中絶禁止が脅かされないと文書で保証する特例措置を取った。すでに加盟27カ国中24カ国が批准手続きを完了していることから、イタリアのベルルスコーニ首相は批准否決なら「(EUを二つに分け)統合を先導する中核国集団を作る」と圧力をかけている。
投票は2日午前7時から午後10時まで。3日午前9時から開票・集計され、同日午後に結果が発表される。【9月30日 毎日】
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欧州連邦化も視野にいれた04年の「欧州憲法」は、フランス・オランダの国民投票で否決され頓挫。
内容を絞った改訂版のリスボン条約もアイルランドの昨年6月の否決によって瀕死の危機に追い込まれましたが、今回の再投票は“賛成”の見通しが強いように報じられています。

外資導入・移民受入れで経済成長を実現してきたアイルランドですが、昨年の金融危機で状況は一変しました。
それでもユーロ圏のアイルランドはある程度救済され、非ユーロ圏の英国やアイスランドに比べれば被害が軽かったとのことで、「寄らば大樹の陰」というか、国民の「強いEU」への期待感が高まっていることが背景にあるとも言われています。

【チェコ大統領 署名を遅らせる】
人口400万人のアイルランドの判断を、5億人のEUが固唾を呑んで見守っている状況ですが、チェコでもクラウス大統領が消極姿勢を崩していないようです。

****チェコ:「リスボン条約は違憲」上院議員グループ申し立て****
欧州連合(EU)の機能強化を目指す新基本条約「リスボン条約」に批判的なチェコの上院議員グループは29日、「条約は国家の主権を侵害し違憲」として、条約が合憲かどうかの判断を求める申し立てをチェコの憲法裁判所に提出した。
リスボン条約の発効にはEU加盟27カ国すべての批准が必要。チェコ上下院は5月までに承認を終えたが、クラウス大統領は批准手続きに必要な署名をしていない。
大統領はEUへの権限集中を警戒し、憲法裁の判断が出るまで署名しない意向とみられ、アイルランドで10月2日に予定される2回目の国民投票で、賛成多数で可決された場合もチェコでは批准手続きが遅れる可能性が出てきた。【9月30日 毎日】
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【しぶとい取組み】
単一通貨ユーロを導入し、経済統合が急速に進む一方で、加盟国数が27カ国にまで増えたEUは、経済政策をたばねるだけでなく、外交や安全保障、地球環境などグローバル化する諸問題に一体的に対応するため、政治統合も強める必要に迫られていることから、今回のリスボン条約の動きとなっています。

「欧州憲法」の頓挫、前回のアイルランドの否決と、障害は多々ありましたが、個人的な印象としては、“なにがしらかの国家主権制約にもつながる政治統合に向けて、EUは随分しぶとく取り組んでいる・・・”といったところです。
欧州の生き残りをかけた取組み・・・でしょうか。
鳩山政権は“東アジア共同体”構想を提起してアメリカの不興をかっていますが、日本の生き残りをかけた戦略はどこに見出せばよいのでしょうか。

コメント
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