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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナワクチン 進行する開発競争 記録的な早期完成は可能か? 先進国のワクチン争奪戦も

2020-06-29 23:09:28 | 疾病・保健衛生

(【5月25日 毎日】)

【各国で開発競争が進む多様なワクチン】
新型コロナに関する状況は、有効なワクチンが完成すれば劇的に変化します。
逆に言えば、ワクチンがない限り、第2波、第3波・・・・の脅威が続くことになります。

現在世界各地で多くのワクチンのし烈な開発競争が進行しています。
一番早いものでは、英オックスフォード大/英アストラゼネカのワクチンが5月下旬から臨床試験に入っています。
国内でも多くの製薬企業が開発を進めています。

****新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ****
(中略)
WHOの6月24日時点のまとめによると、現在、臨床試験に入っているCOVID-19ワクチンは、▽英オックスフォード大/英アストラゼネカのウイルスベクターワクチン「ChAdOx1-S/AZD1222」▽米モデルナのmRNAワクチン「mRNA-1237」▽中国カンシノ・バイオロジクス/北京バイオテクノロジー研究所のウイルスベクターワクチン▽米イノビオ・ファーマシューティカルズのDNAワクチン「INO-4800」▽独ビオンテック/米ファイザーのmRNAワクチン「BNT162」▽米ノババックスのナノ粒子ワクチン「NVX CoV2373」――など16種類。このほかに125のワクチンが前臨床の段階にあります。

オックスフォード大とアストラゼネカのアデノウイルスベクターを使ったワクチンは、英国で5月下旬からP2/3試験に入りました。モデルナのmRNA-1237もP2試験が始まっており、7月にはP3試験を始める予定です。

一方、感染の拡大が落ち着いてきたことで、ワクチンの有効性を検証するのは難しくなっています。オクスフォード大ジェンナー研究所のエイドリアン・ヒル所長は英テレグラフ紙に対し、「(開発は)収束するまでの時間と戦い」と指摘し、「現時点では結果が全く得られない確率が50%」と語りました。
 
ワクチン開発には欧米の大手製薬企業も続々と名乗りを上げています。(後略)【6月26日 AnswersNews】
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日本企業の状況については後出記事で。

【本来は時間を要するワクチン開発 今回はスピードアップをはかる方策も それでも完成は・・・】
こうした状況を受けて、「今年何末までには」とか「12カ月から18カ月で」といった、楽観的な発言も耳にしますが、仮に記録破りのスピードでそうした短期間に完成したとしても、それは緊急用の特別使用のワクチンであり、一般国民が安全に利用できるようになるまでには、まだ相当な時間がかかりそうです。

通常は、ワクチンは10年から15年かけて開発されるものです。新型コロナの緊急性に鑑みて、大幅に期間短縮はされるでしょうが・・・・来年というのは難しいのでは。早くて再来年か・・・もちろん全く根拠のない想像です。

****新型コロナウイルスのワクチン開発には、なぜ時間がかかるのか? その理由を専門家が解説****
いま、世界中の科学者たちが新型コロナウイルスのワクチン開発に取り組んでいる。

一般的なワクチンの開発には10年から15年かかるとされるが、今回は緊急下において開発が急ピッチで進められていることから、年内の実用化を期待する声もある。

さまざまな課題が山積するなか、史上最速のワクチン開発は実現するのか? 医師でスタンフォード大学スタンフォード・ヘルスコミュニケーション・イニシアチヴ所長のシーマ・ヤスミン博士が解説する。

新型コロナウイルスのワクチン開発競争が始まっているが、その速度はウサギというよりはカメの歩みに近い。それも無理はない。有効で安全なワクチンの開発とは、入念に行われる骨の折れる仕事だからだ。

「新型コロナウイルスのワクチンは2020年末までにできるだろうと専門家が楽天的に言うとき、それはあくまで緊急用に使用を許可されたワクチンの話をしているのであって、全面的に認可されたワクチンの話をしているわけではありません」と、医師でスタンフォード大学スタンフォード・ヘルスコミュニケーション・イニシアチヴ所長のシーマ・ヤスミン博士は言う。

ワクチン開発はいくつもの段階からなり、各段階のスケジュールは極めて変化しやすい。このため、新型コロナウイルスのワクチンがいつ完成するのか、確信をもって予測することは誰にもできない。

「とはいえ、比較対象はあります」と、ヤスミンは言う。「これまでにわたしたちが最も速く開発したワクチンは流行性耳下線炎のもので、開発に4年かかりました。ワクチンの開発には通常、10年から15年かかります。ですから、12カ月から18カ月で完成すれば史上最速になります」

INFORMATION
新型コロナウイルスのワクチンは、いつできる? 基礎から最新事例まで「知っておくべきこと」
加速する技術開発、多額のコスト、安全確認に必要な試験や行政手続き──。新型コロナウイルスのワクチンが完成するのは、いつになるのだろうか? ワクチンの基礎から最新事例を交えて「知っておくべきこと」を紹介する。

通常は調査だけで2〜4年
それでは、開発段階について説明しよう。最初は調査段階で、製薬会社はさまざまなアプローチを試す。たとえば新型コロナウイルスについては、数社がヌクレオチドをベースにしたワクチンを開発しようとしている。これはウイルスのたんぱく質の代わりに遺伝子コードを使う方法だ。

この調査の段階には通常2年から4年かかるが、新たな技術が前進を加速させている。また、この新型コロナウイルスは最初のSARSウイルスに似ていることから、研究者は有利なスタートを切ることができる可能性がある。

次に来るのは前臨床段階だ。この段階でワクチン候補を細胞培養及び動物で試し、免疫反応を引き起こすかどうかテストする。「免疫反応が起きなかったり、ワクチンが細胞に対して有害だったりすれば、振り出しに戻って調査段階からやり直しです」とヤスミンは言う。「この段階をスピードアップする方法はありませんし、たぶん少なくとも1年はかかるでしょう」

もしすべてうまくいけば、ワクチン候補は臨床試験へと移行する。試験的ワクチンが、まずは少人数に、次により多くの参加者へ、そして通常はアウトブレイクが起きた地域において、もっと多くの人々に接種される。この一連のテストは完了までに数年かかることがある。

量産までにはいくつもの課題
最近、数人の生命倫理学者が、新型コロナウイルスのパンデミックはあまりに深刻であることから、開発を加速するためにいわゆる「チャレンジトライアル」の実施を考慮すべきと提言している。

チャレンジトライアルでは、研究者は管理された環境下でワクチン接種済みの参加者を故意に病原体に晒し、薬の有効性を検証する。このような研究はこれまで一度も承認されたことがない。

次の段階は規制当局による審査で、メーカーがワクチンの生産許可を申請する。米国では、これには通常は10カ月を要する。食品医薬品局(FDA)が認可するのだが、規制当局は新型コロナウイルスのワクチン認可をまず間違いなく急ぐだろう。

ところが、これでもまだ終わりというわけではない。製造施設の建設といった生産規模の拡大には、数年の歳月と数億ドルの資金を要する可能性があるのだ。

新型コロナウイルスのワクチンはもちろん大急ぎで生産されるだろうが、製薬会社は数十億人に接種できるだけのワクチンを生産しなければならない。

動画ではヤスミンが、新型コロナウイルスのワクチン開発競争についてさらに詳しく語ってくれている。【5月30日 WIRED】
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ヤスミン博士が解説する動画はhttps://wired.jp/2020/05/30/why-creating-a-covid-19-vaccine-is-taking-so-long/
で見られます。

開発段階を大幅にスピードアップさせているのが、ウイルスのたんぱく質の代わりに遺伝子コードを使う方法ですが、これは今年1月に中国がコロナウイルスの遺伝子配列情報を公開したことで世界各国で研究開発が進みました。

中国の情報公開に関していろいろ指摘はされていますが、その点では大きな貢献はあったようです。

ただ、いずれにしても通常のやり方をとっていたのでは、早くて数年、場合によっては10年といった時間が必要になります。そのため、いくつかの段階を並行して進める方法がとられています。

****新型コロナワクチン開発で「加速並行プラン」─厚労省****
厚生労働省は、新型コロナウイルスワクチンの接種開始の時期を大幅に前倒しするため、基礎研究から薬事承認、生産までの全過程を加速化する「加速並行プラン」を公表しました。

厚労省は日本医療研究開発機構(AMED)に開発資金を補助し、ワクチン生産体制等緊急整備基金を創設。現在AMEDが支援している国内のワクチン開発の中で、DNAワクチンは早ければ7月から、ウイルスベクターワクチンは早ければ9月から臨床試験がスタートする見通しです。(中略)

加速並行プランは、通常、基礎研究、非臨床試験、臨床試験と段階的に進めるワクチン開発を、基礎研究と非臨床試験・臨床試験を並行実施し、これらの研究開発と並行して生産体制の整備も進めることで加速させ、さらに薬事承認プロセスも迅速化することで接種開始の時期を大幅に前倒ししようというもの。(中略)
  
現在AMEDが支援している国内のワクチン開発は①組換えタンパクワクチン(感染研/UMNファーマ/塩野義)、②mRNAワクチン(東大医科研/第一三共)、③DNAワクチン(阪大/アンジェス/タカラバイオ)、③不活化ワクチン(KMバイオロジクス/東大医科研/感染研/基盤研)、④ウイルスベクターワクチン(IDファーマ/感染研)─など。
 
このうちDNAワクチンは早ければ7月から、ウイルスベクターワクチンは早ければ9月から臨床試験がスタートする見通しだが、それ以外は臨床試験の時期は未定とされており、激しい国際競争の中、国の支援で国内のワクチン開発がどこまでスピードアップするかが注目される。【6月3日 メディカルサポネット】
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【ワクチン開発競争の主戦場となっているブラジル】
ただ、中国・欧州・日本では“感染の拡大が落ち着いてきたことで、ワクチンの有効性を検証するのは難しくなっています”【前出 AnswersNews】という皮肉な状況にも。

そこで各国企業が注目しているのが、感染拡大が止まらないブラジル。

****ブラジル、ワクチン1億回分確保…英アストラゼネカが開発****
ブラジル政府は27日、英製薬大手アストラゼネカが開発を進めるワクチンについて、接種回数で1億回分を確保したと発表した。
 
世界保健機関(WHO)によると、世界では140種類を超えるワクチンの研究が行われている。WHOは、アストラゼネカのワクチンを「最も開発が進んでいる」と評価している。

ブラジル政府は1億2700万ドル(約136億円)を支援し、まずは来年1月までに約3000万回分と、その後の現地生産のための技術提供を受ける。ブラジルは最終段階の臨床試験にも協力している。
 
来月には、サンパウロ州で中国企業が手がけるワクチンの治験も始まる予定だ。ロイター通信によると、イタリアの研究機関も治験を実施する方針だといい、感染者が世界で2番目に多いブラジルは、ワクチン開発競争の主戦場になっている。【6月28日 読売】
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ブラジルとしては臨床試験の場を提供する見返りに、ワクチンを確保する・・・ということでしょうか。
各国各企業が開発競争に血眼になっていますので、人体実験まがいの試験も横行するのでは・・・というのは私の根拠なき想像です。それによって欧米・日本の国民が利益を享受するという構図。

【すでに始まっている欧米・日本のワクチン争奪戦 カネ・政治力だけによらない協力体制構築の必要性】
それはともかく、ブラジルが開発の場を提供してまでワクチン確保に躍起になるように、各国(欧米・日本といった先進国)のワクチン争奪戦が青田買い的にすでに始まっているようです。

****欧米でワクチン確保競争 完成前に先手 途上国に回らない恐れも****
欧米で新型コロナウイルスのワクチン開発はもとより、将来のワクチン確保に向けた競争が激化している。先進諸国がワクチン争奪戦に終始すれば、経済力の乏しい発展途上国に行き渡らなくなる恐れもある。
 
世界保健機関(WHO)が公表した28日時点のリストによると、現在140以上のワクチンの開発計画が進んでおり、うち欧米などの17剤は人に投与して安全性や有効性を確かめる臨床試験(治験)に入った。

WHOの主任科学者、スワミナサン氏は26日、英製薬大手アストラゼネカのワクチンが開発面で最も進んでいるとし、米バイオテクノロジー企業モデルナが開発中のワクチンも「(アストラゼネカに)大きく遅れはとっていない」と述べた。
 
ワクチンはまだ完成に至っていないが、欧米諸国は可能な限り早く国民に投与できるよう先手を打っている。早期の実用化が期待されているワクチンを購入する権利を得ようと躍起だ。
 
中でも、米国は他国に先駆けてワクチンの確保に力を入れてきた。米生物医学先端研究開発局(BARDA)は5月、英アストラゼネカに10億ドル(約1070億円)を支援し、ワクチンの供給を受けることで合意。英メディアなどによると、トランプ米政権は3月ごろ、ワクチンを開発する独企業を誘致するなどして、米国に独占的に供給させようと画策したという。
 
欧州でもドイツ、フランス、イタリア、オランダの4カ国はワクチン確保のために製薬会社との交渉で協力。13日にアストラゼネカと契約し、ワクチン最大4億回分を調達するめどをつけた。

日本政府も今月、アストラゼネカ日本法人とワクチンの調達をめぐり、協議入りすることを決めた。(後略)【6月29日 産経】
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この争奪戦が無秩序に進めば、札束を積める国が独り占めする・・・ということにも。
マスク争奪戦でも、アメリカが欧州向けに決まっていたマスクを強引に“奪い取る”といったことが問題になりました。

欲しいのは何処の国も同じですから、カネや政治力だけによらない何らかの協調体制が必要でしょう。

****EU、コロナワクチンの事前購入巡り各国に協力要請 競争回避へ*****
欧州連合(EU)の欧州委員会は17日、新型コロナウイルス感染症ワクチンを巡る「有害な競争」を回避し、貧困国が利用可能なワクチンを確保するために、各国首脳に対しワクチンの大量購入に協力するよう呼び掛けた。

現在、臨床試験中のワクチンは10種類強。承認が得られ次第、十分な供給量を確保するために、富裕国は製薬会社から事前にワクチンを買い占めようとしている。

欧州委は、こうした競争はワクチンの価格上昇につながるほか、貧困国を中心に多くの国がワクチンを得られにくくなるとの懸念を表明。フォンデアライエン委員長は「パンデミック(世界的大流行)と戦う上で『われ先に』という考え方はない」と述べた。

フォンデアライエン委員長はワクチンの事前の共同購入を巡り、世界各国首脳の協力を求める考え。EUは来週、ワクチン戦略に関するオンラインでの首脳会議を開催する。【6月18日 ロイター】
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EUの欧州委員会などは27日、途上国を含む全世界にワクチンを行き渡らせる方策を話し合うため、オンライン首脳会議を開催。

フォンデアライエン欧州委員長や英仏独首脳らが会議に参加し、国際的な共同調達などのために計約61億5千万ユーロ(約7400億円)の拠出を約束しました。【6月29日 産経より】

【「国内生産をしないと日本で必要な分を確保できない」が、日本企業の開発状況は「周回遅れ」】
とは言え、「自国ファースト」が横行しそう。日本政府も対応をとってはいますが・・・。

****日本は「周回遅れ」***** 
「(国民に)一番早くワクチンを届けられるよう応援したい」。西村康稔経済再生担当相は24日の国立感染症研究所の視察後、記者団にこう述べた。 
 
国内では政府がワクチン開発を後押しする。日本医療研究開発機構(AMED)は21日、国内の9件の研究に72億円を補助すると発表。その一つが、塩野義製薬と同研究所の研究だ。(中略)21年3月までに感染リスクの高い医療従事者に優先的に供給し、将来的に1000万人分の生産を目指す。 
 
AMEDは大阪大と製薬ベンチャーのアンジェスの研究も支援する。7月に臨床試験の第1段階を始める計画で、ウイルスの遺伝子の一部を投与して免疫を作る「DNAワクチン」に取り組む。医療従事者30人に試験を始め、来春の実用化を目指す。同大の森下竜一教授は「年内に20万人分を生産できる」と意気込む。 
 
国産ワクチンに期待が集まるのは、「国内生産をしないと日本で必要な分を確保できない」(自民党厚生労働族)との思いがあるからだ。

政府は20年度補正予算に、AMEDを通じた研究開発支援として100億円を計上。第2次補正予算案にも企業のワクチン生産や接種体制の整備費を盛り込む見通しだ。 
 
ただ、国内のワクチン開発について、厚労省幹部は「(海外に比べ)周回遅れだ」と指摘する。厚労省は海外で実用化が先行した場合に備え、輸入品の確保や、生産拠点の日本への誘致も検討する構えだ。 

開発力が弱い理由について、厚労省の有識者会議は16年に「国内市場では(企業の)統廃合が進まず極めて小規模のままだ」と指摘し、開発に投資する資金力の弱さを問題視した。だが、製薬業界のある関係者は「いまだに小さな企業がほとんどだ」と話す。 
 
ワクチンは国が政策として推進する定期接種に採用されれば大きな収益が見込める一方、1000億円もの開発費がかかり、9割は失敗に終わるとされる。厚労省幹部は「ばくちのようなもの。それができる体力のある日本企業は減っている」と指摘する。 
 
「企業が投資を控えてきたのは、国の感染症対策の議論がこの10年間進まなかったからだ」。先の関係者はこう主張する。

13年に定期接種となった子宮頸(けい)がんを予防するHPVワクチンは、健康被害を訴える人が相次いだため国は接種の積極的な勧奨を控えたままだ。「次にやってくる感染症対策のためにも、国は新型コロナの教訓を忘れないでほしい」【5月25日 毎日】 
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