孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランス  感染残る中での日常生活再開  黒人に関する米同様の事件に対する追悼抗議デモ

2020-06-03 23:33:26 | 欧州情勢

(パリにおける、抗議デモと警官隊の衝突【6月3日 BBC】)

【感染が残る中での日常生活再開 C'est la vie「人生って、こんなものさ」】
フランスでは5月11日の規制緩和の第1段階に引き続き、今月2日から飲食店(これまではテイクアウトのみ)や美術館、スポーツ施設などの営業が再開、自宅から100キロ圏内に制限されていた自由な移動の制限の撤廃され、「ほぼ通常通りの生活ができるようになる。試練の後にようやく一息つける」(フィリップ首相)状態になっています。

****仏でレストランやカフェなど再開、2か月半ぶり…テーブル1メートル以上離すなど条件****
フランスで2日、レストランやカフェ、バーなどが約2か月半ぶりに営業を再開した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う営業禁止令が解除された。外出制限を緩和していく計画の第2段階にあたる。
 
ただ、感染予防策として、テーブルの間隔を1メートル以上離すことなどが営業再開の条件となっている。

パリを含むイル・ド・フランス地域圏は感染リスクが高いとして、屋外のテラス席のみ営業が許された。【6月3日 読売】
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もっとも、ピークアウトしたとは言っても、感染状況は日本基準からしたら相当なレベルですが。

*****仏、新型コロナ死者2.8万人 13日ぶりに100人超増加*****
フランスで確認された新型コロナウイルス感染症による死者が2日、107人(0.4%)増え2万8940人となった。1日当たりの死者数が100人を超えるのは13日ぶり。フランスは新型コロナ死者数で世界で5番目に多い。

新型コロナ感染症による入院者数は260人以上減少し1万4028人。集中治療室(ICU)で治療中の患者は49人減少し1253人だった。【6月3日 ロイター】
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日本での1日の死者数は、ピーク時で30人余り、現在は数人レベルですから、100人超の死者が出る状況で「ほぼ通常通りの生活」というのは、感覚が違います。

街のテラスで飲食を楽しむフランス人にそのあたりを尋ねれば、おそらく「まあ、運が悪ければ感染して大変なことになるかもね。でも人生なんてそんなもんさ(C'est la vie)」って肩すくめるでしょう。

【フランスでも4年前、黒人男性が警察に拘束され死亡した事件 当局禁止にも関わらずアメリカ事件と連帯して追悼抗議デモ】
アメリカで起きた白人警官による黒人男性の拘束死事件に対する抗議運動は、日常を取り戻したフランスにも及んでいます。

****米黒人拘束死 パリで2万人以上がデモに参加 一部は投石や放火など暴徒化****
パリでは2日、米国で起きた白人警官による黒人男性の拘束死事件に対する抗議運動に合わせたデモが催され、地元テレビ局BFMによると、警察の発表で2万人以上が集まった。デモの終了後、参加者の一部が投石や放火をするなど暴徒化した。
 
デモを呼びかけたのは、2016年にパリで警察に逮捕された後に死亡した黒人男性の遺族らで作るグループ。参加者はパリ北西部の裁判所前に集まり、全米で広がる抗議運動へ連帯を示しながら、警察の暴力と人種差別に反対の声を上げた。
 
フランスでは2日、新型コロナウイルス対策のため営業停止していた飲食店などが再開したばかり。カスタネール内相はツイッターで「集会は感染予防のため禁止されており、正当化できない」と表明した。【6月3日 毎日】
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黒人と警察との軋轢は、フランスにも存在します。
4年前の事件の追悼デモに対し、当局は新型コロナ対策を理由にこれを認めていません。

*****仏当局、16年死亡の黒人男性追悼デモを禁止 米の飛び火警戒か****
フランスの警察当局は2日、2016年に警察に逮捕され、拘束中に死亡した黒人男性を巡る追悼デモを禁止すると発表した。

アダマ・トラオレさん(当時24)は16年7月、パリ北西のバルドワーズ県で口論を理由に警察に逮捕され、その後、車両で警察署に移送中に死亡した。

家族側はトラオレさんが警察によって殺されたと主張。これに対し警察当局は、検視で遺体に目立った暴行の跡は見られなかったが、本人は重篤な感染症を発症していたと報告した。この対応に住民の怒りが爆発し、数日間にわたって暴動が起きた。

今回の追悼デモ禁止について、警察当局は声明で、社会不安に加え、新型コロナウイルス感染を引き起こす恐れがあると説明。ただ、米国では白人警官による黒人暴行死をきっかけに全米各地で抗議活動が拡大しており、デモの飛び火を警戒しているもようだ。【6月3日 ロイター】
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【6月3日 毎日】にある「パリで2万人以上がデモ」というのは、単にアメリカの事件への連帯抗議だけではなく、4年前にフランスで起きた事件への(当局の禁止を無視する形で行われた)追悼デモとしての側面もあるようです。

****フランスでも4年前の黒人死亡めぐり抗議デモ 集会禁止に反し****
フランスで2016年に黒人男性が警察に拘束され死亡したことに対する抗議行動が2日、国内各地であり、数万人が参加した。新型コロナウイルス対策で警察は集会を禁じたが、それを無視した格好となった。

アダマ・トラオレさん(当時24)は4年前、パリ郊外で警官に逮捕された。警察車両の中で意識を失い、警察署で死亡した。

トラオレさんの死は、アメリカで警官に取り押さえられる際に死亡したジョージ・フロイドさんの事件に類似したものとして、フランスで再び注目されている。フロイドさんの死を機に、全米では各地で抗議行動が相次いでいる。

パリ郊外ではこの日、大規模集会の禁止令に逆らって、約2万人が抗議行動に加わった。はじめは平和的に行進していたが、やがて暴力的になり、警官隊に石が投げられ、警官隊は催涙ガスを発射した。

ツイッターには、群衆に向けて催涙ガスが使われる様子が投稿されている。抗議者たちはバリケードを作り、警官隊に物を投げつけたという。火災や道路閉鎖が起きていることを伝えるものもある。

参加者らは当初、抗議行動の許可を求めたが、警察はこれを拒否した。新型ウイルス対策で、公の場所における集会は10人までに制限されている。
パリ警視庁のトップは、警察は人種差別主義だとの批判を、断固として否定した。

抗議デモは、マルセイユやリヨン、リールなどの都市でも発生。「Black Lives Matter」と書かれたプラカードを手にした参加者もいた。この言葉を掲げた運動はアメリカで生まれ、フランスやイギリスなど他国へも広がっている。

「Black Lives Matter」は、2013年から2014年にかけて、アメリカの黒人に対する差別や暴力に抗議する運動の合言葉となり、2014年8月に南部ミズーリ州ファーガソンで18歳の黒人男性が白人警官に射殺されたのを機に、全国的な抗議運動と共に広がった。「白人と同じように黒人の命にも意味がある」という意味が込められている。

警官が体重をかけて押さえた
トラオレさんの死をめぐっては、警官の1人が、同僚2人とともにトラオレさんを体重をかけながら地面に押さえ付けたと調査で述べた。

公式報告書では、トラオレさんの死因は心不全で、基礎疾患が関係した疑いがあるとされた。トラオレさんを拘束した警官たちは先月28日、警察の調査により、責任はないとされた。

トラオレさんの死後数日間にわたり、パリで激しい抗議行動が続いた。

その後もトラオレさんの事件は、警察の暴力に対する抗議行動のスローガンとなっている。フランスでは少数民族の若者らが、警察のターゲットになっていると訴えている。

AFP通信によると、トラオレさんの姉妹のアサさんは抗議行動の参加者らに、「私たちはいま、トラオレの家族の闘いだけを訴えているのではない。これはみんなの闘いだ。ジョージ・フロイドのために闘うとき、アダマ・トラオレのためにも闘うのだ」と述べた。

一方で、パリ警視庁のディディエ・ラルマン警視総監は警官たちへの手紙で、「ソーシャルネットワークや特定の活動団体が、警察暴力や人種差別を再現なく攻撃している」なか、警官たちが感じているに違いない「苦しみ」に共感すると書いている。【6月3日 BBC】
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【強気のマクロン大統領、一方で国民融和に向けた対話姿勢も】
フランスでは、2018年11月から続いた抗議行動「黄色いベスト運動」において、一部若者らによる破壊行為が問題になりました。

マクロン大統領も抗議行動に対する強気の姿勢ということではトランプ大統領と似ていますが、ただ、その強気姿勢の一方で、国民の声に耳を傾ける姿勢は示しています。

****仏大統領、黄ベスト対策で「国民大討論」 本人も対話行脚へ****
フランスのエマニュエル・マクロン統領は13日、国民向けの手紙で、「国民大討論」と銘打った対話集会への参加を国民に呼び掛けた。

国民大討論は反政府運動「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」の沈静化を目指すもので、税制、民主主義、環境、移民などのテーマについて国民が直接話し合える場とする。
 
ジレ・ジョーヌ運動は料税引き上げに対する抗議行動から生活水準をめぐる反政府運動へと拡大し、広範な支持を得ている。デモは12日まで9週間にわたって土曜日ごとに全国で実施されており、中には暴力的なものもあった。
 
デモ参加者が増加に転じる中、マクロン氏は13日、「フランス国民への手紙」というメッセージを発表。討論を通じて「(国民の)怒りを解決策に変えたい」との意向を示した。
 
マクロン氏は国民大討論について「選挙でも国民投票でもない」と断り、「どの税を最初に引き下げるべきだと考えるか」「具体的にどのような案であれば、環境配慮型社会への移行が促されると思うか」といった35の議題をめぐって話し合ってほしいと訴えた。
 
実施期間は1月15日から3月15日で、結果は終了から1か月後にも「直接報告する」という。
 
マクロン氏本人も、15日に北西部ブールトルールドで地元首長らと行う対話集会を皮切りに、各地で集会に参加する予定。【2019年1月14日 AFP】
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トランプ大統領に欠けているのは、こうした対話の姿勢です。

****抗議デモに共感64%、大統領の対応は55%が不支持=米世論調査*****
2日公表のロイター/イプソス世論調査によると、米ミネソタ州で起きた白人警官による黒人暴行死事件への抗議デモが全米に広がっていることについて、抗議活動参加者に「共感する」と答えた人の割合が64%に達し、否定的な27%、「分からない」の9%を大きく上回った。

逆にトランプ大統領の対応を支持しないという割合は55%超、このうち「強く反対」が40%となり、支持は33%にとどまった。共和党員に限っても、トランプ氏の対応に肯定的だったのは67%と、大統領としての職務全般を評価する声が82%あったのと比べてかなり低い水準だった。

トランプ氏はデモへの強硬措置を打ち出し、暴動の鎮圧には軍を出動させる考えも示唆しているものの、調査結果から見ると、そうした姿勢は国民の反発を招き、政治的にマイナスとなる恐れがある。

日中に行われている多くのデモは平和的だが、夜間には一部が暴徒化し、警官隊との衝突も発生。共和党員、民主党員ともに平和的デモには賛成との意見が過半数を占めた半面、結果的に暴力に至った行動が適切だったと答えたのは25%弱だった。

別のロイター/イプソス調査では、11月3日の大統領選で共和党のトランプ氏対民主党のバイデン前副大統領の争いとなった場合、バイデン氏に投票すると述べた登録有権者は47%、トランプ氏が37%で、その差10%ポイントは、バイデン氏が民主党の大統領候補指名をほぼ手中にした4月上旬以降で最大になった。【6月3日 ロイター】
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