孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカの混乱 黒人は何に怒っているのか? 「#WalkWithUs(一緒に歩こう)」

2020-06-01 23:10:35 | アメリカ

(「一緒に歩こう」と、デモ参加者とハイタッチをかわす保安官・スワンソンさん【6月1日 CNN】)

【地下シェルターに避難したトランプ大統領】
米ミネソタ州で黒人男性のジョージ・フロイドさんが死亡した事件をめぐる抗議行動の拡大および一部暴徒化の状況は報道のとおり。

****米抗議デモ、各地で暴徒化 黒人暴行死、4千人拘束****
米ミネソタ州で黒人男性のジョージ・フロイドさん(46)が白人警官に暴行され死亡した事件を巡り、5月31日も米各地で抗議デモが起き、一部が暴徒化した。

米メディアによると、デモ激化を受けて夜間外出禁止令が出たのは、首都ワシントンなど全米の40都市以上に達した。AP通信によると、この数日間に少なくとも4100人が拘束された。
 
米紙ニューヨーク・タイムズは、外出禁止令を出した都市の数は公民権運動を率いたマーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺された1968年以来の規模だと伝えた。一連のデモはこれまでに全米の75都市以上に拡大した。【6月1日 共同】
********************

TVで、今の事態は1910年代のスぺイン風邪と1930年代の大恐慌と1968年のキング牧師暗殺が一緒に起きているような状況だとの解説。なるほど。それは大ごとです。

更に言えば、それらは別個に重ね合って起きているのではなく、白人よりも高い感染リスクの仕事・生活を余儀なくされ、失業の恐怖にさらされている黒人たちの怒りが爆発しているというように、複合・連鎖して起きているのでしょう。

この件に関してまとまった意見を述べるほどの見識は持ち合わせていないので、印象に残った記事をいくつか。

警官隊との衝突は首都ワシントン、ホワイトハウス近くでも。ワシントンでは31日、夜間外出禁令が出されています。

****トランプ氏、地下に避難 抗議デモ激化受け一時****
米メディアは1日までに、ワシントンのホワイトハウス前で白人警官による黒人男性暴行死事件に対する大規模な抗議デモが起きた5月29日夜、トランプ大統領が地下に一時避難したと報じた。大統領警護隊(シークレットサービス)の判断だったとしている。「バンカー」と呼ばれる地下室は核シェルターにもなる。
 
ニューヨーク・タイムズ紙は実際に危険が迫ったという事実はないが、トランプ氏やその家族はデモに「動揺した」と伝えた。

CNNテレビによると、近くで炎が上がった31日夜にも避難したという。米誌アトランティックは「トランプ氏は怖がっている」などとやゆした。【6月1日 共同】
********************

【因縁の反ファシズム運動「アンティファ」をテロ組織に指定すると息巻くトランプ氏】
そのトランプ大統領は、今回の混乱は反ファシズム運動を展開する「Antifa(アンティファ)」に扇動されたもので、同組織を「テロ組織」に指定すると息巻いています。

****トランプ米大統領、反ファシスト「アンティファ」をテロ組織に指定すると発言****
ドナルド・トランプ米大統領は5月31日、反ファシズム運動を展開する「Antifa(アンティファ)」をテロ組織に指定すると発言した。トランプ氏は、黒人男性が白人警官に殺害された事件を受けた抗議活動が、アンティファのせいで暴動に発展したと非難している。

(中略)これまでに15州で、州兵が鎮圧に投入されている。アメリカ各州の州兵は、国内の緊急事態に対応するのが任務。ミネアポリスではフロイドさんの死後、5日にわたって放火や盗難などが横行している。

なぜ抗議行動が暴動に発展したのか、米政府当局者は大幅に異なる見解をそれぞれ示している。外部のグループや個人の関与を示唆する意見もある。

ミネソタ州のティム・ウォルツ知事(民主党)は30日、外国勢力や白人至上主義者、違法薬物カルテルなどが暴力の背景にいると話したが、詳細は説明しなかった。

一方でトランプ大統領はツイッターで、「アンティファ主導の無政府主義者」や「左翼の無政府主義者」が騒ぎを起こしていると書いているものの、こちらも詳細は明かさなかった。

その上でトランプ氏は、「アメリカ合衆国はアンティファをテロ組織に指定することになる」とツイートした。
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1267129644228247552

ただし、アンティファのテロ組織指定をいつ、どのように実施するのかについては説明はなかった。
米政権が特定の団体や個人を外国テロ組織に指定する方法は、法制化や大統領令などいくつかある。

しかし、法曹関係者からは、アンティファに「国内テロ組織」というレッテルを貼る権限が、トランプ氏にあるのかどうか、疑問視する声が出ている。

元司法省高官のメアリー・マコード氏は、「国内組織をテロ組織に指定できる法的権限は現在、存在しない」と説明した。「そのような指定を追求すれば、合衆国憲法修正第1条に違反する懸念が出てくる」
修正第1条は、表現の自由や平和的集会の権利、信教の自由などを保障している。

一方で、連邦議会の上院では昨年、共和党の議員団が、アンティファを「国内テロリスト」に指定する拘束力のない決議案を提出した。

暴動は誰のせいだと
抗議活動は当初、フロイド氏の死や、アフリカ系アメリカ人に対する警察暴力に怒る市民らが、平和的に市街地を占拠するものだった。

その怒りが加速して暴動に発展したが、その原因ははっきりしていない。

しかしここ数日、連邦当局や各州の高官らは、証拠を示さずに断定的な主張を重ねている。
トランプ大統領は30日に、「アンティファと極左のしわざだ。それ以外の人を責めないように!」とツイートした。

ウィリアム・バー司法長官も大統領に調子を揃え、アンティファなどの「扇動者」らがアメリカ全土に広がる抗議活動をハイジャックしていると批判した。(中略)

一方マイク・ポンペオ国務長官は、それよりも慎重な姿勢をとっている。フォックス・ニュースに出演したポンペオ氏は、暴徒は「アンティファのような」グループだと述べながらも、平和的な抗議がどうやって暴力的なものに変質したのかは、「まだ分からない」と強調した。(中略)

アンティファとは?
アンティファは「Anti-Fascist Action(反ファシスト活動)」の略語で、ネオナチやファシズム、白人至上主義者、差別主義などに強く反対する抗議活動を指す。指導者などはなく、ゆるやかに連携する活動家たちの集まりだと考えられている。

メンバーの大半があらゆる人種差別、性差別に反対しており、トランプ氏の様々な政策を国粋主義、反移民、反ムスリム的だとして、強く反対している。

一方で反政府主義かつ反資本主義であるため、アンティファのメンバーは主流左派よりも、無政府主義に近いとみなされることが多い。

アメリカでは、2017年8月に米ヴァージニア州シャーロッツヴィルで開催された極右集会に抗議するいわゆる「カウンター」行動が注目され、その名前が知れわたった。

トランプ大統領はこの集会と、それに抗議する人たちの衝突について「双方に非がある」と述べたほか、当初は集会を主催した白人至上主義者を非難しなかったことで、大きな批判を浴びた経緯がある。【6月1日 BBC】
*********************

「アンティファ」は、2017年8月に米ヴァージニア州シャーロッツヴィルの件以来、トランプ大統領にとっては苦々しい存在だったようです。

ただ、話を極端に単純化した「○○のせいだ!」というのは、新型コロナ禍での中国叩きと同様に、問題のすり替え的なところがあって、話の本質は、なぜ黒人たちがこれほど怒っているのか?というところでしょう。

一国のリーダーとしては、そこに踏み込むべきですが、それをトランプ氏に期待してもないものねだりでしょう。

【白人の進歩派で、ヒラリー・クリントンの支持者こそが問題と怒る黒人も】
黒人の怒りの矛先は、必ずしも人種差別主義者や差別的なトランプ大統領ではなく、“共和党、民主党の区別なく米国の白人の意識に染みついているもの”に向けられているとの指摘も。

****人種差別は政治的対立を越えたのか アメリカ社会の固定的問題なら抗議は収まらない****
「問題なのはKKKではなく進歩派だ」
「問題なのは(白人至上主義秘密結社の)KKKの人種差別主義者じゃない。(ニューヨークの)セントラルパークを犬を連れて散歩をする白人の進歩派で、ヒラリー・クリントンの支持者なのだ」

米国ミネアポリス市で、警察官が黒人男性の首を膝で押さえつけて殺害した事件をめぐって29日(現地時間)に放送されたCNNの番組内で、コメンテーターのバン・ジョーンズ氏はこう言った。

ジョーンズ氏は黒人で、トランプ大統領が当選した時の番組では「悪夢だ」と涙声で語り、民主党支持で知られる。そのジョーンズ氏が、今回白人の警察官がリンチ(私刑)にも例えられる方法で黒人を殺害した事件の背景にはKKKよりも進歩派の方に問題があると言ったのには含みがある。

「アフリカ系アメリカ人に襲われている」と通報
ミネアポリスの事件と同じ日、ニューヨークのセントラルパークを散歩していた白人女性から911番(日本の110番)で「アフリカ系アメリカ人の男性に襲われている」と通報があった。

この女性、犬と散歩していたのだが、パークの規則に従わずリードをつけていなかったのでバードウオッチイングをしていた黒人男性に注意されると口論になり警察に「助け」を求めたのだった。

その様子は黒人男性の妹がビデオに撮っていてSNSに投稿すると全米に拡散し、女性が警察を呼ぶのに「アフリカ系アメリカ人」という言葉を重ねて使ったことが「人種問題を利用した」と非難され女性は投資会社を解雇されてしまった。

この女性が民主党支持者だったかどうかは明らかではないが、「警察は人種差別的だからアフリカ系アメリカ人に襲われていると言えばすぐに駆けつけてくれる」というのは民主党支持者によくある偏見だと考えられ、いつしか女性は「リベラルでヒラリー・クリントンの支持者」とSNSなどで取り沙汰されるようになった。

もう一つ最近人種差別が問題になったのが、民主党の大統領候補が確実なジョー・バイデン 氏の発言だ。バイデン 氏は22日のラジオのインタビューで「トランプと私とどちらを支持するか決められないのは黒人じゃない」と言ったが、黒人は民主党を支持するのが当然だという態度こそ人種差別的と批判された。

また「黒人じゃない」というのも、英語でain't blackと黒人口調で「クロじゃねぇよ」と言ったことに「背筋が凍るような思いになった」と、黒人で米下院のジム・クライバーン副院内総務は語っている。(ニュースサイト「ポリティコ」5月26日)

今度のミネアポリスの事件で、当局が白人警察官をすぐに訴追しなかったことが抗議運動を煽ることにもなったが、ミネアポリス市の市長もミネソタ州の知事も民主党系の民主農労党の党員だ。

冒頭のジョーンズ氏の指摘は、人種差別に共和党、民主党の区別なく米国の白人の意識に染みついているものだが、民主党支持者は建前では公平さを口にしながらも心の底では差別的な志向を抱えているので、よりたちが悪いと言ったように受け取れる。

今度の事件に反発するデモが全米に広がり激化しているのも、人種差別が政治対立を越えた米国社会の固定的な問題だと黒人側が意識したからかもしれない。

もしそうであれば、この事件に対する抗議活動は当分収まりそうもないように思える。【6月1日 FNN PRIME】
***********************

【不安に駆られる白人は銃購入へ】
一方で、今回のような混乱は白人層の不安を一掃掻き立てることにもなっているでしょう。
アメリカ社会では、混乱が起きるたびに、「自分の身は自分で守らねば」ということで銃保有に流れる傾向がありますが、新型コロナ禍でもその傾向は一掃強まっています。おそらく今回暴動で更に・・・。

****新型コロナで銃販売数が過去最高に 社会不安と密接にリンク、あぶり出された米国の闇****
新型コロナウイルスのまん延は世界中の人々の生活に大きな影響をもたらしている。175万人を超える感染者がいる米国もそうだ。

外出の制限で24時間眠らなかった大都市から人けがなくなった。生活必需品の品薄状態が続き、行列嫌いとされる米国人が食料や消毒液などを求めて店の前に並んだ。いずれも半年前には考えられなかったことだ。
 
今回の騒動では、米国社会が内包する暗部もあらわになった。アジア系の人々が攻撃や嫌がらせの標的にされたことは知られているだろう。

その影で銃や銃弾の売り上げが大きく伸びている。米国人の心の中で何が起きているのだろうか。

 ▽大手スーパーでも購入可能
米国内で新型コロナウイルスが感染拡大し始めたのは3月初めだった。このことを伝えるニュースなどに触れた人々が水や食料、トイレットペーパーなどの買い占めに走り多くの店で商品棚が空っぽになった。

このことはテレビや新聞で連日のように報道された。その裏で銃や弾薬も小売店から消えていた。しかし、大きく報道されることがなかった。
 
米国で銃を購入するのはそれほど難しいことではない。銃器販売店に加えてウォルマートなどの大手スーパーやスポーツ用品店などでも販売されている。(中略)

それが、飛ぶように売れたというのだから尋常ではない。中でも弾薬は品切れが続出し、CNNテレビなどが報じた。銃や弾薬を求める人々が販売店の周りを取り巻いている映像は筆者にとって衝撃的だったが、新型コロナウイルスに関する報道に埋もれて注目されることはなかった。(中略)

3月と4月で少なくとも約665万丁の銃の購入希望があったと推定される。(中略)

 ▽自分で身を守るしかない
銃購入希望者数は、社会不安の高まりと見事にリンクしている。米国人にとって、銃は一種の精神安定剤のようなものと指摘する識者もいる。そのため、不穏な事態が起こる度に人々が銃や弾薬の購入に走ることになる。(中略)
 
今回の敵は目に見えないウイルス。銃で対抗できるとは思えない。販売店に走った彼らは銃で何を守ろうとしたのだろうか。
 
米国の銃社会に詳しいジョージア州立大学のティモシー・リットン教授は、二つの理由を挙げている。それは①感染者の爆発的増加を目の当たりにして、政府が機能不全に陥る恐れがあると判断。その際は自分で身を守るしかないと考えた②非常時において銃の販売が規制されることを恐れた―だ。
 
銃規制が予想される状況になると、一種の駆け込み需要が発生するというのは皮肉といえる。銃規制を掲げたバラク・オバマが大統領選挙に勝利した08年11月も、申請数は前月比で30%上昇した。

 ▽新たな問題
不安ゆえに銃を求める―。米国が陥っている依存症かもしれない。友人の米国人は次のように語る。「外出が規制されてずっと家にいると精神が不安定になってくる。誰かが押し入ってきたら、という不安を持つ人がいるのは理解できる」。そして、彼はこう続けた。「だからと言って銃を買おうとは思わないけれど」
 
米国における新型コロナウイルス感染は終息に向かいつつあるが、この2カ月間で全米にばらまかれた銃を回収する手だてはない。米国は新たな問題を抱えてしまった。【6月1日 47NEWS】
********************

【デモ隊に笑顔で「一緒に歩こう」との保安官も】
そうした中で、非常に印象的な行動を示した保安官も。

****デモ隊に笑顔で「一緒に歩こう」 米保安官に共感広がる****
黒人男性が警官に取り押さえられて死亡した事件を受けて全米で警察に対する抗議デモが激化する中、1人の保安官の行動をめぐってソーシャルメディアで共感が広がっている。

米ミシガン州フリントタウンシップで5月30日に開かれた抗議デモ。暴動鎮圧の装備で出動した警官隊とにらみ合う市民らに語りかけたのは、ジェネシー郡の保安官クリス・スワンソンさんだった。地元放送局WEYIが伝えた。

スワンソンさんは警棒を下ろすと、「抗議ではなくパレードにしたい」とデモ参加者に語りかけ、「私たちがここにいる唯一の理由は、あなた方が確実に声を上げられるようにするためです。ここにいる警官たちはあなた方を愛しています」と訴えた。(中略)

スワンソンさんが笑顔でデモ参加者とハイタッチを交わすと、集まった人たちの中から「一緒に歩こう」という声が巻き起こった。スワンソンさんは「レッツゴー」と応じ、歓声を上げる人たちと一緒に歩きながら、「どこまで歩きたい? 一晩中歩こう」と声をかけていた。

ソーシャルメディアにこの映像が流れると、「#WalkWithUs(『私たちと一緒に歩こう』の意味)」のハッシュタグとともに、スワンソンさんの行動を称賛する声が広がった。

ツイッターには「これこそ警察の正しい対応」「WalkWithUsこそ、ジョージ・フロイドさんを殺害した体制を変える方法だ」といったツイートが相次いでいる。

スワンソンさんはこの前日、フェイスブックに「この恐ろしい犯罪に関与した警官それぞれの即時逮捕と訴追を求める」と投稿していた。【6月1日 CNN】
*********************

こういう人が大統領になれたらいいのにね。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする