(「暴力の賛美についてのTwitterルール違反」で非表示になったトランプ氏のツイート【5月29日 IT media NEWS】
【「天安門事件」に触れないという中国要求に応じた「ズーム」】
多くの世界市場を見据える企業にとって、今後さらに拡大が予想される中国という巨大市場を無視することができないのは言うまでもないところですが、政治体制が異なる中国での活動が(日本や欧米の基準からすると)多くの問題をはらんでいることも、これまた言うまでもないところです。
特に、考え方・規制が全く異なる「情報」を扱うIT企業やソーシャルメディアにとっては、非常に厄介な問題が伴います。
****米IT企業、中国政府対応に苦慮 巨大市場魅力も検閲懸念****
新型コロナウイルス感染拡大に伴うビデオ会議ブームで急成長した米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズが中国政府の要請に従い、人権活動家の利用を停止したことを11日に発表した。
ズームに限らず米IT企業は中国政府への対応に苦慮。14億人の巨大市場は魅力的な半面、インターネット上の検閲に懸念は根強い。対中協力姿勢は自由な企業イメージを損なう危険もある。
「われわれは間違えた」。在米活動家のアカウント停止を欧米メディアが報じると、ズームは対応の誤りを認めた。ニューヨーク・タイムズ紙は「米中両国で事業展開する企業の厄介な問題」と伝えた。【6月12日 共同】
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上記「ズーム」の件は、中国にとっても最も敏感な部分でもある「天安門事件」に関して生じたものです。
****ズーム、会議閉鎖とアカウント停止は「中国の要求に応じた」****
米ビデオ会議サービス「ズーム」は11日夜、中国の天安門事件に関するビデオ会議を閉鎖し参加していた米国や香港の人権活動家らのアカウントを停止したことについて、中国政府からの要求に応じた措置だったと明らかにした。
ズームの声明によると、天安門事件を追悼する4つのビデオ会議について「中国政府が、中国国内で違法とされている活動だと通告してきた。会議の閉鎖と主催アカウントの停止を要求された」という。
これらのビデオ会議には中国本土在住のユーザーも参加していたが、「特定の参加者を会議から除外したり、特定の国からの会議参加を阻止したり」する機能は現在ズームには備わっていないため、「ビデオ会議4つのうち3つを閉鎖し、それらに関与していた主催者アカウントを停止する決断に至った」と説明している。 【6月12日 AFP】
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“ズーム側は、中国政府の要求に応じたとしたうえで、「ズームは開かれた議論の促進を目指しているが、事業を行う国の法律を守る必要がある」などとコメントしている”【6月12日 FNNプライムオンライン】とのことですが、政治的立場からの情報管理を否定する欧米・日本の基準には著しく反する行為であり、中国の要請に従えば、今度は欧米からの「中国に屈して重要な価値観を損ねた」と厳しい批判にさらされることになります。
【おびただしい中国プロパガンダアカウント 削除してもスピードと量で圧倒】
「天安門事件」といった敏感な問題にかぎらず、中国と西側では「情報」の位置づけが異なります。
中国にあっては、「情報」は国家の政治的意図を反映したプロパガンダの一環です。
一方、「公正中立」を旨とする西側基準からすれば(現実問題として、そういうものがありうるのかは議論の余地が多々ありますが)、中国政府の意図を反映した「情報」(虚偽情報も含め)を意図的にまき散らすような行為は許されないということにもなります。
****米ツイッター、中国関与疑いの偽情報アカウント17万件削除****
米交流サイト大手ツイッターは12日、中国政府主導の偽情報拡散作戦と関連があるとみられるアカウント17万件超を削除したと発表した。これらのアカウントは香港の民主化運動を標的にしていたほか、米国の信用をおとしめようともしていたという。
中国をめぐっては、米ビデオ会議サービス「ズーム」が天安門事件に関するビデオ会議に参加していた米国や香港の人権活動家らのアカウントを停止したことについて、中国政府からの要求に応じた措置だったと明らかにしたばかり。
また、中国はニュースや情報へのアクセスを制限するため「万里のファイアウオール」と呼ばれるネット検閲システムを導入しており、ツイッターはユーチューブ、グーグル、フェイスブックなどと同様に中国では利用が禁止されている。
だが近年、中国の外交官や国営メディアは政府の主張を広めるため、これらのサービスをこぞって利用している。
専門家や一部の欧米政府は、中国政府が自らの主張や虚偽の情報を拡散するため、国が直接管理するか、つながりのあるアカウントを一見そうではないように偽りながら大量に展開しているのではないかとの懸念を示している。
ツイッターの発表によると、同社は「非常に積極的な中核」の役割を果たしていたアカウント2万3750件に加え、「拡散係」に当たるアカウント15万件超によって運用・拡大されていた「国家が関与する」ネットワークを解体。
また同社の分析によると、これらのアカウントは「主に中国語でツイートしており、中国共産党に都合の良い地政学的な話題を拡散する一方、香港の政治の動きについては虚偽の情報を拡散し続けていた」という。 【6月12日 AFP】
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しかし、中国の情報工作は、スピードと量で「圧倒」するものがあり、対応は困難なようです。
****中国のSNS情報工作、未熟だが「執拗さ」で圧倒 *****
中国政府が背後にいるとみられる欧米のソーシャルメディア上における情報工作は、手口は未熟だが極めて執拗(しつよう)であることが、新たな分析結果から分かった。時間ともに洗練される可能性があり、注意が必要だという。
豪シンクタンク、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が2万人以上のユーザーを分析した。大半は中国語によるもので、親中メッセージを展開していた。
ツイッターは11日、中国政府が運営する偽アカウントと判断した約17万4000件のアカウントを削除したと発表したが、ASPIが分析対象としたユーザーは、削除された一連のアカウントの中核をなしていた。
ASPIが公表した分析によると、すでに新規のアカウントや別の目的にすり替えたアカウントがツイッターやフェイスブック上に存在しており、黒人男性の殺害事件を発端とする米国内の抗議デモなどに問題に乗じて、これまでと同じく中国寄りのメッセージを拡散させている。
ASPIのリサーチャー、エリーズ・トーマス氏は、中国のツイッター上の情報工作は、2016年の米大統領選に干渉したロシアの「洗練度に比べると足元にも及ばない」レベルだと指摘する。むしろ、大量のスパム攻撃でネット上の議論を圧倒するようなやり方だという。
だが、中国は2019年9月以降、複数のアカウントが削除されても「驚くほど執拗に続けている」とし、「今後改善する可能性があり、注視する必要がある」と話す。(中略)
ASPIによると、ツイッターが大規模なアカウントの削除に乗り出しても、中国の工作員は時には数日以内で、新たなアカウントを立ち上げるか、従来のアカウントを別の目的にすり替えるなどして、空白を埋めているもようだ。
ツイッターは今年1-3月に偽アカウントを一掃しているが、すでに似たようなアカウントが出現している。
6月に米国内で警察の残虐行為や人種差別に対する抗議デモが拡大すると、米国の人権に対する「二重基準」を批判する中国政府系とみられる投稿が増えた。米国は二重基準だとの批判は、中国外務省も繰り返し唱えている。
他には「非現実的な幻想をすぐに捨て、米国側との関係を断ち切れ」、「過ちを犯す前に再考しろ」といったツイッター投稿もあり、民主化で米国に支援を求める香港市民をけん制しているとみられるものもあった。 【6月13日 WSJ】
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なお、ツイッターが中国政府系のアカウントを削除したことに対し、中国外務省の華春瑩報道官は12日、削除されるべきなのは、中国を組織だって非難中傷するアカウントだと主張。「中国は偽情報の最大の犠牲者だ」と反論しています。
****ツイッターは中国中傷するアカウント閉鎖すべき=中国外務省****
中国外務省の華春瑩報道官は12日の定例会見で、中国は偽情報の最大の被害者だと主張、米ツイッター<TWTR.N>が偽情報対策に取り組むのなら中国を中傷するアカウントを閉鎖すべきだと述べた。
華報道官は、ソーシャルメディアなどの多くのプラットフォーム上で中国に関する虚偽の情報が多く出回っており、中国側の客観的視点に立った意見が求められていると述べた。【6月12日 ロイター】
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【トランプ大統領のつぶやきを垂れ流して謝罪に追い込まれたフェイスブック】
情報操作・偽情報の問題は中国のような政治体制の国に限った話ではありません。
中国を激しく非難するアメリカでも、その政治トップが怪しげ、あるいは偏った情報をまき散らしているという問題があります。
ミネアポリスで起きた白人警官による黒人暴行死事件に関して、トランプ大統領のツイートに「暴力賛美」の警告をつけたツイッターと大統領のバトルは周知のところですが、このときフェイスブックは特段の対応を取ることなく、その姿勢に対し従業員からも厳しい批判が出ていました。
****投稿規制強化、米分断に揺れる フェイスブックCEO「謝罪」 SNS「公正中立」に限界 ****
白人警官による黒人暴行死事件への大規模な抗議デモに揺れる米国で、SNS(交流サイト)が表現の自由と安全や安心の間で揺れている。
米フェイスブックが投稿に対する制限を強める方針を5日に示し、運営各社の足並みがそろってきた。ただ、自由な発言を求めるトランプ米大統領らが反発するのは必至で、米社会の分断と軌を一にして各社の苦悩も深まっている。
「自分の先週の決断が多くの仲間を怒らせ、失望させ、傷つけたか分かっている」。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は5日、社内SNSを通じて1400語近い長文のメッセージを発信した。このなかで国家による武力行使などに関する投稿の制限を見直す考えを示した。
ザッカーバーグ氏が実質的な謝罪に追い込まれたのは、トランプ氏の1週間ほど前の投稿を黙認したためだ。「略奪が始まれば銃撃も始まる」。黒人男性の暴行死事件に抗議するデモを武力で抑えつけるととれる内容を放置し、社内外で批判が高まった。
1日にはストライキが起き、複数の社員が辞職している注意を促す注記を加えることも検討すると盛り込んだ。
同様の取り組みでは米ツイッターが先行し、若年層の人気が高い画像・写真共有アプリ「スナップチャット」を運営する米スナップも3日、トランプ氏の投稿の表示を減らす方針を示している。
SNSの運営企業は公正中立を掲げ、利用者の投稿を制限することに慎重な姿勢をとってきた。今回の動きにより、直前まで「当社が真実の仲裁人になるのは適切ではない」と公言していたザッカーバーグ氏が率いるフェイスブックを含め、各社が制限を強める姿勢を鮮明にする。だが、先行きは見通しにくい。
「過激なエバン・シュピーゲルCEOは極左の暴動の動画を拡散し、利用者に米国を破壊させようとしている」。スナップがトランプ氏の投稿の拡散を制限する方針を打ち出すと、同氏の選挙陣営は強い調子で非難した。
本人もツイッターが自分の投稿に注記を付けると激怒し、表現の自由を盾にSNS運営企業への保護を弱める大統領令に署名した。
トランプ氏のめざす法改正が思惑通りに進むかは不透明だが、公正中立の姿勢を維持しきれなくなったSNSの運営企業の先に広がるのはいばら道だ。
そもそも注記を付ける行為が思想や信条を反映しているととられる可能性が高く、社会の分断が深まるなか反発を招きやすくなっている。判断を独立した第三者委員会に委ねる動きもあるが、効果は未知数だ。
11月の大統領選まで5カ月を切り、政治に巻き込まれやすくなっているのも悩みだ。特にフェイスブックでは前回の大統領選で個人情報の不適切な利用や外国政府の介入といった問題が噴出し、対応に追われた経緯がある。
ザッカーバーグ氏は5日のメッセージで選挙対策に自信を示す一方、こう漏らした。「取り組みを進める中でやるべきことがさらに見つかるはずだ」【6月7日 日経】
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【投稿などへの監視強化 どういう基準で?】
フザッカーバーグCEOの謝罪でもフェイスブックへの反トランプ側からの不満は収まっていないようで、バイデン氏が投稿などへの監視強化を求める書簡を公表しています。
****バイデン氏陣営、投稿への監視強化をFBに要求…「トランプ氏の言うことを何でも許容」****
米大統領選で民主党候補となることが固まったジョー・バイデン前副大統領の陣営は11日、米フェイスブック(FB)に対し、「公正な選挙を確保するため」として投稿などへの監視強化を求める書簡を公表した。
書簡でバイデン陣営は「FBは、ドナルド・トランプ(大統領)が言うことを何でも許容し続けている」と指摘し、「選挙への参加方法についてウソをつくことなどを禁止する明確なルールが必要だ」と規定の見直しを求めた。
トランプ氏は5月、郵便投票について「詐欺だ」などとツイッターやFBに投稿した。11月の大統領選挙で西部カリフォルニア州が郵便投票を認めていることを念頭に置いているとみられている。ツイッターは警告を表示したが、FBは対応をとっていない。
FBは、運営会社によるSNS上の監視活動に慎重な姿勢をとっている。FBは11日に声明を出し、「選挙で選出された国民の代表がルールを設定し、それに従う。賛同できない内容であっても、政治的言論は保護する」との考えを示した。【6月12日 読売】
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ただ、「監視」には基準が必要で、どういう立場で「監視」するのか・・・そのこと自体が一定の政治的立場を示すものともなって、反対意見を認めないことになる懸念も。
明確なフェイクはともかく、表現の自由とのかねあいで、なかなか微妙な問題です。
トランプ大統領のように、あることないことまき散らすような存在があると、こうした厄介な問題が表面化します。