孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・習近平政権 国内外で強権的引き締めを強化 ポストコロナはリーダー不在の世界へ?

2020-06-30 22:50:27 | 中国

(北京市内に掲げられた中国の習近平国家主席の写真【6月26日 共同】)

【中国が国際社会の懸念を押し切る形で成立を強行】
今日、国際面で一番大きなニュースは、やはり中国で「香港国家安全維持法」(国安法)が成立したというものでしょう。

予定されていたもので、驚きも意外性もありませんが、それでも「来るべきものがきた」という感じでしょうか。
各メディアには、香港の「一国二制度」や「高度な自治」に関して、“形骸化”“瀕死”“転換点”といった文言が並んでいます。

中国・習近平政権が法案の成立を急いだ背景には、7月1日に予定されている香港が英国から中国に返還されて23年となる大規模なデモ、更には9月に予定されている香港立法会(議会)選挙における民主派の台頭を封じ込める狙いがあるとされています。

****新華社「香港国家安全維持法が成立」報道 異例の秘密審議 97年返還以後、最大の転換点に****
中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は6月30日、香港の統制を強化する「香港国家安全維持法」(国安法)案を全会一致で可決し、国安法が成立した。同法を香港に適用する手続きも完了した。国営新華社通信が伝えた。

今後、香港政府が公布し、施行される。一部香港メディアは、早ければ同日中にも施行されると報じた。

「1国2制度」は崩壊の危機に直面し、香港は1997年の返還以来、最大の転換点を迎えた。中国が国際社会の懸念を押し切る形で成立を強行したことで、米中関係も不安定化するのは必至だ。
 
6月18日の審議入りからわずか13日間のスピード成立であり、法案全文が成立前に公表されない異例の秘密審議となった。国安法は66条で構成され①国家の分裂②中央政府転覆③テロ行為④外国勢力との結託――の四つを犯罪行為と規定した。
 
中央政府が香港に治安維持機関「国家安全維持公署」を新設し、中央の判断により現地で直接、執行力を行使できる。香港の法律と矛盾した場合、国安法を優先させると付則で明記した。
 
香港の民主派は「1国2制度を破壊した」と反発している。香港が英国から中国に返還されて23年となる7月1日に大規模なデモを呼びかけている。
 
習指導部は2019年6月から続く香港の抗議デモが反中運動と化し、米国が関与を強めることを極度に警戒。5月の全人代で国安法の制定を正式決定すると、全人代常務委は6月に2度という異例のペースで会議を重ね、通常より審議回数を減らす特例を適用してまで成立を急いだ。
 
香港では9月に香港立法会(議会)選挙があり、7月18日に立候補者の届け出が迫る。中央政府としては、国安法の施行を後押しに、民主派の勢いを封じる狙いがあるとみられる。

一方、香港の旧宗主国である英国と中国が84年に結んだ「中英共同宣言」は、97年の返還から50年間は「高度な自治」が保障されると明記する。欧米を中心に「中国は『国際公約』を守るべきだ」と自制を求める声が強まっていた。
 
米国のポンペオ国務長官は29日の声明で、米国が香港に認めてきた優遇措置の見直しを発表。香港への防衛装備品の輸出を停止し、軍民両用技術の輸出などを中国本土と同様に制限する。
 
中国外務省の趙立堅(ちょうりつけん)副報道局長は30日の定例記者会見で「国安法の立法は純粋に内政問題だ」と述べたうえで、対抗措置を示唆した。【6月30日 毎日】
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これ以上、香港の勝手なふるまいはメンツにかけて許さない・・・という習近平政権の強い意志が感じられます。

【異様なほどに国内引き締め強化】
香港政治・社会・経済の変質、台湾・アメリカなど国際社会への影響など論点は多々ありますが、中国国内の“締め付け”も以前にも増して強化されているようにも見えます。

****中国、人権派弁護士に懲役4年、非公開で判決****
中国江蘇省の徐州市中級人民法院(地裁)は17日、国家政権転覆扇動罪に問われた人権派弁護士、余文生氏に懲役4年、政治的権利剥奪3年の実刑判決を言い渡した。余氏の妻が産経新聞に明らかにした。
 
判決公判は弁護人にも家族にも知らされないまま非公開で開かれた。余氏は2018年1月、憲法改正に関する書簡を公開し、その後逮捕された。【6月17日 産経】
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このあたりは、これまでも再三指摘されてきた習近平政権の強権的体質を示すものですが、下記のような話になると、「いったい、どうしてそこまで神経質になるのだろうか?」という感も。

****習近平氏の“陰口”家族とも禁止 中国、共産党員の統制強化****
中国の習近平指導部が共産党・政府の機関に勤める党員に対し、家族との会合を含むプライベートの時間に習総書記(国家主席)の地位をおとしめ、党・政府に批判的なウェブサイトの閲覧を禁じる内部通知を出していたことが26日、分かった。中国筋が明らかにした。
 
通知は5月20日付で、職務時間外の20の禁止事項を列挙。習氏の地位を否定する発言をしたり、党幹部らを皮肉ったりしてはならないと規定。家族や身近な人物の「誤った言動」を放置し、政治や思想面の教育をおろそかにしてはならないとも明記。故郷で同窓会を行い、同級生や職場仲間を集めてグループをつくることも禁じた。【6月26日 共同】
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****政権批判への「いいね」、中国が禁止を通達…エリート党員に絶対服従求める?****
中国の習近平政権が、共産党中枢や国家機関で働く党員に対し、インターネット上で政権に批判的な文章に「いいね」で賛意を示すことなどを禁じる通達を出した。米国との対立が深まる中、エリート党員に絶対服従を要求し、引き締めを図る狙いとみられる。
 
通達は5月に出され、中国外務省傘下の教育機関・外交学院系のサイトが今月10日、内容を掲載した。勤務時間外の禁止事項として約20項目を並べ、党中央の方針に批判的な文章や動画を発表することに加え、転送したり、賛意を示したりすることも禁じた。
 
党は従来、政治的に敏感な内容を描いた発禁本を中国本土外から持ち込めば幹部でも責任を問う方針を示しているが、今回の通達では反動的とされる書籍の所持も禁じられた。こうした内容の海外テレビ番組の視聴やサイトの閲覧でも「許さない」としており、一部の党員からは「やり過ぎだ」との声も出ている。【6月29日 読売】
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国民の政権批判を極度に警戒しているようにも見えます。
新型コロナ対応への国内の批判があるといった話も聞きますが、それだけでしょうか?

経済が“V字回復”とはいかず、厳しくなりそうだ・・・ということもあるのでしょうか?

例によって、政権内の権力闘争みたいなものが激しくなっているのでしょうか?

「中国には月収1000元(約1万5000円)の人が6億人もいる」と遅れを認め、屋台に自ら出向いて経済回復の切り札として称賛する李克強首相に比べると、習近平主席はどうも陰湿なイメージがぬぐえません。あくまでもイメージの話ですが。

【「命の神聖さと人間の基本的な尊厳を完全に無視するものだ」】
全く別方面から、中国指導部の陰湿さを示すニュースも。

****中国、人口抑制でウイグル人に不妊強制か 報告書****
中国当局が新疆ウイグル自治区の人口抑制策として、ウイグル人など少数民族の女性に対し不妊手術を強制しているとする報告書が29日、発表された。国際社会からは直ちに非難の声が巻き起こっている。
 
報告書は、新疆ウイグル自治区での中国当局の政策を告発してきたドイツ人研究者エイドリアン・ゼンツ氏が、現地の公式データや政策文書、少数民族の女性への聞き取り調査に基づいてまとめたもの。

中国はその内容を事実無根と批判。

米国のマイク・ポンペオ国務長官は、報告書が指摘する政策の即時廃止を要求した。
 
報告書によると、当局はウイグル人などの少数民族の女性に対し、既定の人数を超えた妊娠の中絶を拒否した場合、罰則として再教育施設への強制収容を科すと警告。

さらに、子どもの数が中国で法的に許可されている2人に達していない女性に対しても子宮内避妊具の装着を強制しているとされる。聞き取りに応じた女性の中には、不妊手術を強要された人もいたという。
 
報告書ではまた、少数民族が人口の多数を占める新疆ウイグル自治区で公式に記録された不妊手術の施術率が2016年に急増し、全国水準を超えたと指摘。

2017年から2018年にかけ、同自治区の人口増加が、漢民族が多数を占める省の人口増加の平均を下回ったとした。 【6月30日 AFP】AFPBB News
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ポンペオ国務長官はここぞとばかりに、“「中国共産党の数十年間にわたる政策と一致しており、「命の神聖さと人間の基本的な尊厳を完全に無視するものだ」と語った。”【6月30日 ロイター】と中国批判を強めています。

中国からすれば、人種問題を抱えるアメリカが何を言っている・・・という話にもなるのでしょうが。

【コロナで早まる米中の主役交代 しかし、今の中国に国際社会をリードする資質はなし】
問題はこの国がアメリカを抜いて世界でも最大の経済規模になる日が、新型コロナの影響で更に早まった・・・と見られることです。

しかし、今のままの政治体質では世界をリードすることはかないません。
トランプ大統領によってアメリカへの信頼も低下が加速し、リーダー不在の世界へ向かうようにも思えます。

****新型コロナで中国のGDPアメリカ逆転はかなり早まったか****
「アフター・コロナ(コロナ後)」の日本企業は、海外で感染拡大が終息しない最悪のケースに備え、次善策の「プランB」を周到に準備しておかねばならない、と提言した。
 
簡単におさらいをすると、教訓とすべきは、第一次世界大戦終盤の1918年から3年間にわたって世界中で猛威を振るった100年前のパンデミック「スペイン風邪」だ。

その後、景気刺激策を連発した欧米ではインフレが加速、1929年にアメリカの株バブル崩壊に端を発した世界恐慌へとつながっていった。
 
世界恐慌はスペイン風邪から約10年後に到来したわけだが、今回の新型コロナ禍でもアメリカや日本をはじめとする世界各国が緊急経済対策のために国債を乱発しまくるので、これから世界経済が大混乱することは避けられない。

もしかすると、身勝手なリーダーによる「一国主義」の加速や原油価格の暴落が引き金となって、戦争が勃発する恐れさえあるだろう。
 
実際、新型コロナ禍への対応では、各国指導者の危機管理能力のなさが露呈した。アメリカのトランプ大統領は、失業急増と株価下落などで支離滅裂な言動を繰り返し、もはや常軌を逸している。

安倍晋三首相も対応が後手後手かつ粗略で、事業規模200兆円超の緊急経済対策は中身がなく、実効性が非常に疑わしい。自らがコロナウイルスに感染したイギリスのジョンソン首相しかり、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領しかりである。
 
また、米中首脳は新型コロナをめぐっても責任をなすりつけ合う不毛ないがみ合いを続けているが、ここで想起されるのは、スペイン風邪の前後に起きた「世界の主役」の交代だ。
 
19世紀の世界の主役は、七つの海を支配したイギリスだった。しかし、1870年代末にアメリカがGDP(国内総生産)でイギリスを超え、第一次世界大戦・スペイン風邪後に1人あたりGDPでも逆転が決定的となり、それ以降、イギリスがアメリカを上回ることは二度となかった。

そして、主役が交代すると、世界秩序が大きく乱れる。その時と同じことが、もしかすると、現在のGDP第1位のアメリカと第2位の中国の間で起きつつあるのではないかと思うのだ。(中略)


そういう中でも、「GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)」をはじめとするアメリカの優良企業は生き残るだろう。だが、大勢として世界経済全体のバランスは、アメリカから中国に大きくシフトしていくと思われる。
 
従来のペースで行くと、GDPで中国がアメリカを抜くのは今から10年後の2030年頃と見られていた。しかし、それが今回の新型コロナ禍によって、もっと早まる可能性もある。
 
ただし、その前に大きな問題がある。中国共産党の一党独裁体制である。自国の経済圏を世界的に拡大するための「一帯一路」構想は21世紀の“新・植民地主義”であり、そのドクトリン(基本原則)のままで中国企業を受け入れる国は少ないだろう。
 
したがって、これから中国企業がグローバル化するためには、(情報を全部共産党に吸い上げられるような)一党独裁体制が弱体化するプロセスと同時進行することが前提条件になる。逆に言えば、共産党による一党独裁支配が終焉しない限り、世界のリーダーにはなれないと思う。【6月4日 大前研一氏 NEWSポストセブン】
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