最近、東直己のススキノ探偵シリーズ(ハヤカワ文庫)を読んでいます。いわゆるハードボイルドで、ジャズが流れている場面も登場します。第8作目の「ライト・グッドバイ」にも、DJが『さて、それじゃピアノ小特集、ってことで、ジャズの古典を四曲、聞いてくれ、レイ・ブライアントで“ナウズ・ザ・タイム”、ニーナ・シモンで“セントラル・パーク・ブルース”、レッド・ガーランドで“Cジャム・ブルース”、そして最後に、ウイントン・ケリーで“朝日のようにさわやかに”。』という場面がありました。今夜はケリーで。
WYNTON KELLY (ウイントン・ケリー)
KELLY BLUE (RIVERSIDE 1959年録音)
著者の東直己(あずまなおみ)さんは、1956年生まれという年齢からすると、学生時代にはジャズ喫茶に通っていたのではないかと想像しています。ブライアントなど3人のピアニストはともかく、ニーナ・シモンが出てきたのには驚きました。札幌が主な舞台となる、ススキノ探偵シリーズは、1992年の「探偵はバーにいる」から書き継がれていますが、ストーリーばかりでなく細部へのこだわりもあって、そういうところが面白いです。
「朝日のようにさわやかに」を含む「Kelly Blue」は、知らない人がいないほどのアルバムですが、メンバーと曲目を記しておきます。ケリー(p)、ナット・アダレイ(cor)、ベニー・ゴルソン(ts)、ボビー・ジャズパー(fl)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)。このセクステットで3曲、管楽器の3人が抜けたトリオで5曲が演奏されています。曲数は、CDのボーナス・トラック2曲が入ったものです。
曲は、セクステットの演奏で、「Kelly Blue」、「Keep It Moving」、「Keep It Moving(take3、CD追加)」、トリオの演奏で、「Softly, As In A Morning Sunrise」(朝日のようにさわやかに)、「On Green Dolphin Street」、「Willow Weep For Me」(柳よ泣いておくれ)、「Old Clothes」、「Do Nothin' Till You Hear From Me」(CD追加)。「Kelly Blue」、「Keep It Moving」、「Old Clothes」は、ケリーの自作ですが、後はよく知られた曲です。
このトリオは、当時のマイルス・デイビス・グループのリズム・セクションで、キャリアの最高の時期に当たっていたのでしょう、素晴らしい演奏を繰り広げています。「朝日のようにさわやかに」は、ケリー(p)の美しいシングルトーン、適度なブルージーさ、音に強弱をつけてメリハリがあることに加え、チェンバース(b)の豊かな音など、聴きごたえがあります。ボーナス曲「Do Nothin' Till You Hear From Me」は、ピアノとベースのやりとりがよく、本当のボーナスとなりました。余談ですが、アート・ペッパー(as)のリーダー作「Gettin' Together」中の「朝日のようにさわやかに」では、ペッパー、そしてケリーが乗りのいいプレイをしています。
【ススキノ探偵シリーズ】
第8作目の「ライト・グッドバイ」です。
第5作目の「探偵はひとりぼっち」が、「探偵はBARにいるススキノ大交差点」として映画化されたので、見てきました。飯田市にある映画館「千劇」に貼ってあったポスターです。映画は原作とはかなり離れたストーリーになっていました。