長野市でも映画「セッション」が上映されたので、観てきました。上映館は、長野グランドシネマズです。長野市における上映は遅い方なので、既にご覧になった方もいらっしゃると思いますが、備忘的に記事にしました。
〈あらすじ〉
名門音楽学校へと入学し、世界に通用するジャズドラマーになろうと決意するニーマン(マイルズ・テラー)。そんな彼を待ち受けていたのは、鬼教師として名をはせるフレッチャー(J・K・シモンズ)だった。ひたすら罵声を浴びせ、完璧な演奏を引き出すためには暴力をも辞さない彼におののきながらも、その指導に必死に食らい付いていくニーマン。だが、フレッチャーのレッスンは次第に狂気じみたものへと変化していく。
〈監督・出演者〉
デミアン・チャゼル(監督)
マイルズ・テラー(アンドリュー・ニーマン、主役)
J・K・シモンズ(テレンス・フレッチャー)
ポール・ライザー(ジム・ニーマン)
メリッサ・ブノワ(二コル)
2014年アカデミー賞では、J・K・シモンズが助演男優賞を受賞し、音響賞、編集賞にも選ばれています。
〈感想など〉
1時間47分の上映時間中、退屈するところがなくて、面白く見ました。ストーリーの展開も早いし、音楽学校に学んでいる学生と鬼教師のやりとりが中心となりますが、教師の台詞や厳しい態度が緊迫感があって、惹きつけます。ただし、ここまでジャズを学ぶ現場が過酷なものだと誤解される恐れもあり、ジャズはそこまでしなければ習得できないものだと受け取られかねないのが、気にかかりました。
監督のデイミアン・チャゼル(1985年生まれ)は、実際に高校生の頃、同校のバンドを全米一のジャズバンドに変えた教師の元で、実際にドラムを演奏していたとのことです。その経験を下敷きに脚本を書き、監督をしているので、事実に基づいたところのある映画です。生徒に向かって物を投げつけたり、車の事故など、アクションものと間違えそうな場面も登場します。ミュージカル映画を撮る予定もあるようで、この新鋭監督の次の作品が楽しみです。
主役のアンドリュー・ニーマンは、実際にドラムをたたいていますが、かなりの特訓を受けたはずで、演技とはいえ演奏に力が漲っていて、目を見張らせます。役の上で、アイドルとして聴いているドラマーは、バディ・リッチで、このあたりは、僕の気持ちにフィットします。
教師役のJ・K・シモンズの略歴は、1955年、ミシガン州生まれ、父は指揮者で、本人もモンタナ大学で作曲を学んで、俳優活動を始めました。ミュージカルやオペラへの出演経験もあるようです。サム・ライミ監督の「スパイダーマン」三部作で演じた編集長、J・ジョナ・ジェイソン役で日本で知られているようです。
過去の出演作では、極悪非道役もやっていて、この鬼教師役にはぴったりの人選です。身振り手振りもそうですが、声もドスが効いています。学校を首になったあと、ジャズクラブでピアノを弾いている場面がありますが、ゆったりめのテンポで普通の人に戻ったような仮の姿を見せるところも記憶に残ります。
音楽の方は、ビッグバンドによる、タイトでスピーディーな演奏が中心です。映画のテンポの早さに対応したものと思います。「キャラバン」、「Whiplash」などドルビーシステムによる映画館での音響も聴きものでした。
青春映画的なストーリーもからめてあります。
最後に、音楽祭の出演場面で、ニーマンをフレッチャーが認めるような仕種が出てきて、まあよかったなということになり、観客のカタルシスというか感情移入を起こすようになっています。映画なので、こういう場面がなければいけませんが、ちょっと予定調和的に過ぎるのではないかと考えました。