コンサートで、ベートーヴェンやブラームスの交響曲を聴いていると、ティンパニが大きな役割を果たしていて、クラシック音楽の要の楽器だという気がしていました。そんな思いでいたところ、書店で、ティンパニのことを書いてあるこの本を見つけたので購入しました。
著者の近藤高顯(こんどうたかあき)さんは、1953年神戸市に生まれ、東京芸大卒業後、1980年からベルリンに2年間留学し、帰国後の85年に新日本フィルハーモニー交響楽団に入団。89年からは、同楽団の首席ティンパニ奏者を務めながら、エキストラとして国内外の演奏会に出演を続けています。
面白い本で一気に読み通しました。内容は大きく分けると2つで、著者がティンパニストになったきっかけや勉強、交友など自身に関わる私的部分と、指揮者との練習や演奏時におけるエピソード、ティンパニという楽器の紹介や同楽器の活躍する曲目について記した音楽創造の部分からなります。それらが、相互に関連しながら記されています。
目次を簡単に記します。
第1章 叩き上げ 人生のはじまり
第2章 オーケストラの現場で 叩き上げ
第3章 他流試合で学んだこと
第4章 ティンパニストの恐怖の一瞬
第5章 大作曲家たちはティンパニをどのように書いたのか
近藤さんがカラヤン指揮のベルリンフィルハーモニーの日本公演に出演した際の「カラヤンの振り違い事件」などが出てくる第3章は、音楽ファンからすると本書のハイライトでしょう。アバド、チェリビダッケという著名指揮者も登場します。
第2章の「オーケストラの現場で叩き上げ」では、新日本フィルの指揮者だった小澤征爾さんのことがでてきますが、小澤征爾がすごい指揮者なんだということが僕にも伝わってきました。読了後、ティンパニが親しみを覚える楽器になりました。良書です。
(著者写真)