連休中に作曲家のクルト・ワイルの評伝を読みました。著者の田代櫂さんは、1947年、長崎県生まれのクラシック・ギタリスト、著述家で、著書に「アントン・ブルックナー 魂の山嶺」、「グスタフ・マーラー 開かれた耳、閉ざされた地平」、「リヒャルト・シュトラウス 鳴り響く落日」などがあります。2017年4月に逝去されました。
クルト・ワイル(ドイツ語だとクルト・ヴァイル)は、1900年生まれで1950年に亡くなっています。ナチスに迫害を受け、ドイツから1933年にフランス、1935年にはアメリカに渡り、アメリカの市民権を得ています。ワイルの作ったミュージカル中の曲「スピーク・ロウ」や「セプテンバー・ソング」は、よく耳にするのですが、ミュージカル畑でも成功できた理由に興味があったので、この本を読んでみました。
元々の才能に加え、フンパーディンクやブゾーニについて勉強し、基礎はもちろん高度な芸術性を得たことが、アメリカでの活躍につながっているようです。ドイツでオペラや演劇に作曲をしていますが、その際には既にジャズなどの要素も取り込んでいて、新しいものに躊躇しないことも、後年、成功できた要因だったと理解しました。
ミュージカルなどにおいて作曲と編曲(オーケストレーション)の仕事は別々の人が当たるのが通例でしたが、ワイルの場合は、作曲ばかりでなくオーケストレーションも自ら行っていたことは特筆すべきです。自分の作品に対するこだわりがあったと推測しますが、高い能力を備えている作曲家としての面目躍如です。
オペラ「マハゴニー市の興亡」やミュージカル「ワン・タッチ・オブ・ヴィーナス」など、ワイルは、オペラとミュージカルの両分野で有名作を残し、しかもスタンダード曲を書いていて、メロディメーカーとしてもすごい作曲家です。生きた時代がほとんど現代で、親近感もわき、彼の音楽をもっと聴いてみたい気持ちになりました。
以下、この本を読みながら聴いたレコード・CDです。今回新たに、フェリシア・サンダースのクルト・ワイル集を購入しました。
「交響曲第1番・第2番」 エド・デ・ワールト指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
テレサ・ストラータス「シングス・クルト・ワイル」(3枚組CD)。劇音楽中の主な曲がストラータスの歌で聴くことができます。ケント・ナガノ指揮リヨン国立歌劇場管弦楽団による交響曲第2番も収録されています。
フェリシア・サンダース「Sings of Kurt Weill」(TIME)。ジャズ畑のアルバムですが、原曲に沿った歌が聴けます。「Speak Low」や「September Song」は入っていますが、「My Ship」は入っていません。「My Ship」で僕が好きなのは、キャロル・スローンの歌です。
三文オペラから「Moritat」(「Mack The Knife)。ソニー・ロリンズのSaxophon Colossusで聴いてみました。
「Speak Low」は、ソニー・クラークの演奏で聴きました。
「September Song」をサラ・ヴォーンの歌で聴きました。