岡田暁生著「西洋音楽史」(中公新書)を読みました。2005年初版で、ずっと前に一度読んだのですが、再読しました。
表紙
(帯裏に記載された本書の内容)
(著者略歴)
1960年京都市生まれ。 大阪大学文学部助手、 神戸大学発達科学部助教授を経て, 京都大学人文科学研究所教授。専門は、19世紀から20世紀初頭の西洋音楽史。主な著書に、『音楽の聴き方』(吉田秀和賞受賞)、『オペラの運命』(サントリー学芸賞受賞)、 『西洋音楽史』(以上3冊は中公新書)、 『リヒャルト・シュトラウス』(音楽之友社)、『すごいジャズには理由がある』(共著、アルテスパブリッシング)など。
(感想など)
一般の音楽ファン向けにわかりやすく書かれた良書です。著者は、『音楽を歴史的に聴く楽しみ』を読者に伝えたいとし、「このような音楽はどこからうまれてきたのか」などを考えることで、音楽を聴く歓びの新しい次元が生まれてくると、通史の意義について語っています。
初めに、「西洋芸術音楽」を『楽譜として設計された音楽』と定義し、民謡やポピュラーとの違いをはっきりと説明していて、目から鱗でした。第6章の「フランス音楽の再生」部分では、場末の音楽やロココ時代の音楽への興味などが記され、印象派の音楽を改めて聴きたくなりました。
第7章では、20世紀後半の音楽史風景は『前衛音楽、巨匠の名演、ポピュラー音楽』だと指摘し、前衛音楽における公衆(聴衆)の不在について述べています。歴史に関する本ですが、その先の展望も訊いてみたいところです。なお、モダン・ジャズについても触れていて、ファンとして、嬉しかった。
(目 次)
(本書記載の詳細な著者略歴など)
(参考)中公新書の岡田暁生さんの本
(読了後、聴いたCD、レコード)
ドビュッシー「交響詩 海」。シャルル・ミュンシュ指揮フランス国立放送管弦楽団(1966年録音)。
著者の岡田さんは、『ドビュッシー〈牧神の午後への前奏曲〉や〈海〉やラヴェルの管弦楽曲の名作〈スペイン狂詩曲〉や〈ダフニスとクロエ〉は、フランクらがドイツから持ち込んだ交響詩のジャンルから発展したものと考えていいだろう』と記しています。
ラヴェル:クープランの墓。ヴラド・ペルルミュテール(p)(1973年録音)。
著者の岡田さんは、『印象派の霊感の源が、クープランやラモーのロココ鍵盤音楽である。・・・ラヴェルの〈クープランの墓〉についてはいうまでもなく、』と記しています。
ジョン・コルトレーン「A Love Supreme(至上の愛)」(Impulse)。レコードです。
著者の岡田さんは、『コルトレーンのポリリズムは、・・・ストラヴィンスキー並みの複雑さだ(有名なアルバム「至上の愛」(1965年)には、もはや娯楽音楽の要素は全くない。)と述べています。