車で走り出して、すぐのところに一旦停止がある。
車を止めた。
複数のイヌの鳴き声が聞こえた。
犬の声も大きいが、それよりも異常な声なのに気がついた。
その交叉点の近くにイヌのトリミング屋さんがある。
そこの犬がいっせいに吠えているのだ。
トリミング屋さんの隣は貸し駐車場になっている。
そこに大きめのネコが歩いていた。
イヌの声には無関係とばかりにゆっくり歩いている。
私はとっさに「このネコが原因で犬が騒ぐのかな?」と思った。
ネコは毛のつやがよく尻尾が長い。
袋が付いていたのでオスだ。
きっと血統の良いネコなのだろうと推察した。
行き先とは違う方向だが、車をその駐車場に入れた。
ネコはなおも悠々と歩く。
駐車場の端まで来て車を止めた。
振り向いたネコ。
「あっ!!」
ネコではなかった。
顔が細くて白い線が鼻筋にクッキリ入っている。
ハクビシンだった。
ケータイで写真を撮った。
ハクビシンはゆっくりと目の前の家の横にある車庫の車の下に消えた。
私は、その家に知らせるべきだと感じ呼び鈴を押した。
奥から玄関に歩き寄る音が聞こえた。
「はい」と言って黙っている。
私はドアが開くものだと思って佇んでいた。
「どちらさん?」と聞くので
「北小の前の◎◎です」と答えた。
ドアは開かない。
「何ですか?」と言う。
「今ね、お宅の車の下にハクビシンらしい動物が入っていったものですから」と伝えた。
「あぁそう」と言い終らないうちに奥に戻っていく音が聞こえた。
なんだ!ハクビシンより私の方が怪しいのかと気付いた。