「革命によりロシア帝政が崩壊した翌年──1918年、ウクライナの首都キーウ。革命に抗う「白衛軍」、キーウでのソヴィエト政権樹立を目指す「ボリシェヴィキ」、そしてウクライナ独立を宣言したウクライナ人民共和国勢力「ペトリューラ軍」の三つ巴の戦いの場となっていた。
白衛軍側のトゥルビン家には、友人の将校らが集い、時に歌ったり、酒を酌み交わしたり...この崩れゆく世界の中でも日常を保とうとしていた。しかし、白衛軍を支援していたドイツ軍によるウクライナ傀儡政権の元首ゲトマンがドイツに逃亡し、白衛軍は危機的状況に陥る。トゥルビン家の人々の運命は歴史の大きなうねりにのみ込まれていく......。」
白衛軍側のトゥルビン家には、友人の将校らが集い、時に歌ったり、酒を酌み交わしたり...この崩れゆく世界の中でも日常を保とうとしていた。しかし、白衛軍を支援していたドイツ軍によるウクライナ傀儡政権の元首ゲトマンがドイツに逃亡し、白衛軍は危機的状況に陥る。トゥルビン家の人々の運命は歴史の大きなうねりにのみ込まれていく......。」
「白衛軍」というタイトルだが、ミハイル・ブルガーコフの戯曲「トゥルビン家の人々」の英訳版がもとの台本である。
つまり、二重の翻訳劇である。
主な舞台は、あらすじにもあるとおり、ロシア革命後のキーウで暮らす白衛軍(旧ロシア帝国軍)の将校一家:トゥルビン家。
キャスト表を見ると、いかにもニコライ(村井良大さん)が主人公であるかのようだが、実際は違う。
(余談だが、私などは、村井さんと言えば「戦国鍋TV 〜なんとなく歴史が学べる映像〜」を思い出してしまう。)
確かに、冒頭からギターで弾き語りをしたり、戦場で活躍したり、ラストは戦傷がもとでトラウマを抱えた姿で登場するなど、露出場面は多い。
だが、私見では、本当の主役は、レーナ(前田亜季さん)だろう。
「白衛軍」、「ペトリューラ軍」(ウクライナ人民共和国軍)、「赤軍」(ボリシェヴィキ)が互いに殺し合いを行う中で、「白衛軍」の家に属する彼女は、次の決め台詞を放つ。
「この人はラリオン。たった一人しかいない。どうしてこの人の命をもて遊んでいいのか?・・・」
絶望的な状況下での希望の光であり、「安心を与える人」といって良い。
おそらく、ブルガーコフには、「アンティゴネ」のセリフ(11月のポトラッチ・カウント(4))が念頭にあっただろう。
当然のことながら、登場する男たちは、いとこのラリオンも含め全員が彼女に求婚するのである。
なので、「主役」と認定して間違いないと思う。