クリスタル・パイトは、個人的に最も注目している振付家である。
その彼女が率いるKIDD PIVOTが、初来日公演を行った。
彼女は今や最も委嘱依頼の多い振付家の一人であるが、その理由は、彼女が「言葉」を起点として振付をつくるところにあると思う。
というのは、「音楽」を起点として振付をつくる手法は、"See the music, hear the dance. "のバランシン(共通感覚と共感覚)以降既に飽和状態に達していると思われるものの、「言葉」を起点とする手法は、まだ究められていないからである。
「まずジョナサン・ヤングが原作をもとに脚色した茶番劇の台本があって、それをベースに8人のダンサーたちがボイスオーバーの録音をしました。その声はまさにこの作品のサウンドトラック、つまり音楽として使われ、各キャラクターに扮したダンサーたちが、そのラジオのように流れてくるボイスオーバーの言葉にリップシンクをします。口だけでなく、全身を使って。
場面が進み茶番劇と言う仮面が剝がれると、ダンサーたちの動きはとても抽象的になっていきます。それが何を示しているのかひと目で認識できるようなジェスチャーからはどんどん遠ざかり、極限まで達する身体の探求に入っていきます。この作品は言語を使っていますが、それを極端に抽象化することにより、新たな意味が生まれます。私たちは言葉を超えた表現を目ざしていて、表現できないものを表現しようとしているのです。」(公演パンフレットより)
「茶番劇」段階の状況については、実際の映像(Kidd Pivot | Revisor | Marquee TV)を観ると分かりやすい。