モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番*
ブルックナー/交響曲第4番『ロマンティック』(ノヴァーク版第2稿)
〈ブルックナー生誕200年〉
ブルックナー/交響曲第4番『ロマンティック』(ノヴァーク版第2稿)
〈ブルックナー生誕200年〉
(ソリスト・アンコール)
マルチェッロ作曲/J.S.バッハ編曲
オーボエ協奏曲 二短調 BWV974 Ⅱ アダージョ
選曲に「?」という感を抱く人は多いと思うが、ブルックナー生誕200年、ダン・エッティンガー氏の東フィルとの初コラボから20周年、モーツアルトのピアノコンチェルト20番は阪田さんの意向らしい。
もっとも、「20」「200」というのは、主催者が仕組んだのか、はたまた偶然なのか、判然としない。
それはともかく、私は阪田さんのコンサートには極力行くようにしているので(眠くならないクライスレリアーナ)、選曲がどうであれチケットは買っていたはずである。
その20番だが、例によって阪田さんの端整な演奏で、必要以上の自己主張がなくて好印象である。
1楽章のカデンツァも定番のベートーヴェン版で問題なし、2楽章もメリハリが聴いていて心地よい。
ちょっと「おや?」と思ったのは、3楽章のカデンツァで、今まで聴いたことのないバージョンで、ロマン派色が強いように感じた。
アンコール曲は、マルチェッロ/バッハのアダージョ。
この時点で私などは、阪田さんの「古典派への転向」を勘ぐってしまう。
というのも、阪田さんはもともとリスト・コンクールの覇者で、2枚のCDには古典派の曲が1曲も入っていないことが示すように、ロマン派専門のピアニストだと思っていたからである(これは私だけではないはず)。
それが、今回はモーツァルトとバッハというのだから。
だが、映像を観ると、モーツァルトのコンチェルトは、昔練習していたそうなので、たまたま演奏機会が少なかったということなのかもしれない。
さて、メイン・ディッシュのブルックナー4番だが、この曲はメロディーが美しいので、ブルックナーが苦手な人も受け入れられると思う。
エッティンガ―「天才建築家の仕事を思わせる、建築的構造の美意識です。長い音楽の伝統と一体の素材と天啓を一切の夾雑物(混じりけ)なしに直接結びつけ、オルガンのように響かせるブルックナーの作曲手法はまさに、偉大な宮殿を思わせます。私の個人的な考えでは、とても正直な音楽です。何かを暗示したり投影したりはせず、極めて古風で純粋なままの音の素材から独自の響きを成し遂げてしまうブルックナーのサウンド・コンセプトに惹かれます」
なるほど、ブルックナー=オルガニストという観点から入ると分かりやすい。
この響きは、オルガンの世界からやって来たものなのである。
視覚的に言えば、「偉大な宮殿」なのだそうだ。