「なぜ“冤罪”は起きたのか―。3年前、軍事転用が可能な精密機器を不正に輸出したとして横浜市の中小企業の社長ら3人が逮捕された事件。長期勾留ののち異例の起訴取り消しとなった。会社側が国と東京都に賠償を求めている裁判で今年6月、証人として出廷した現役捜査員は「まあ、ねつ造ですね」と語り、捜査の問題点を赤裸々に語った。公安部の中でいったい何が起きていたのか。法廷の証言と独自資料をもとに徹底取材で検証する。」
うっかりして前半を見逃してしまったが、非常に重要なくだりがラスト近くにあった。
本件が「ねつ造」であることは、実は、匿名の手紙によって明かされていた(但し、この手紙を書いたのは、公判で「定年も視野に入ると、自分がどこまで上がれるかを考えるようになる」 などと述べた証人らとは違う人物である。)。
本件は、警視庁公安部の一部の捜査官たちが、功績を挙げる目的で、経産省などを巻き込んででっち上げた事件だったようである。
警察官の場合、階級が高いほど退職金も高くなるシステムをとっているが、手っ取り早く階級を上げるためには、大きな事件で手柄を挙げる必要がある。
(それ自体筋悪の)「経済安保」が声高に叫ばれ、警察庁出身の官僚が国家安全保障局長に就任したタイミングであり、「経済安保」がらみの事件を立件することは、出世への近道と考えられたのかもしれない。
そこに、「捜査員の個人的な欲」が作用して、事件の「ねつ造」につながったというのは、自然な見立てと言える。
・・・と、ここまで見てくると、これは、どのカイシャ(S銀行、Bモーター、Sジャパン等々)でも起きる可能性のある不祥事の一種であることが分かる。
しかも、警察は実力組織であり、「ねつ造」は必然的に犠牲者を生み出すこととなる。
つまり、「功績」のために「犠牲」が要求される構造となっている。
こうした冤罪の発生メカニズムを見ると、証人らが指摘するとおり、「人が変わらない限り、今後も冤罪は再発するだろう」というのは、残念ながら否定できないところである。