笛吹きの芸人役のMさんと、ご近所の人限定の出版を祝う会の打ち合わせ。打ち合わせといっても、その件は早々に終わり、後はほとんど柔らかいにも程がある話に終始する。 近所のド素人の方々に演じてもらうことについては、集合しやすい、気心が知れている。誰も知らない。ギャラがかからない。ということもあるが、私のコントロール外の要素を入れる、ということも期待していた。これは最近書いたような書いていないような。良く覚えていないので書いてみるが。 河童の三郎は常に霧吹きで濡らしながら撮影したが、その際、目玉にかかりさえしなければ、髪には一切手を加えていない。どんなカットであろうと乱れるにまかせている。編集者が顔に貼付いた髪が気持ち悪いといったのは、そのせいであろう。 手持ちで撮影していた当時は、後ろを偶然人が通るのを期待し、私の意図しない物を画面に入れることを常に考えていた。そうすることによって動かない人形までが生き々してくる。そしてそんな心構えの撮る側が、準備万端で被写体に対していてはおかしいので、カメラは常に手持ちであり、本作でもついに一度も三脚を使わなかった。ついでにいえば、光を反射させて足りない光を補足するレフ版も使わない。 素人の皆さんは、私の意図していない想定外の動きをしたカットをかなり採用した。素人衆の意外な演技も乱れるにまかせた河童の髪も、コントロールの及ばない要素を画面に入れる、という意味では同じである。そして一冊の本ということでいえば、動かない造形物が主役の作品が、素人の皆さんのおかげで生き々して見えていれば成功である。
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