明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



冷房の寒さで目が覚める。書籍表使用の庶民的変身ヒーローの顔を作りながら、今から作る必用はないと判っていながらスライド上映用のデータを作る。老眼で活字が読めない人に対し、というのも一方では本気である。なじみのない鏡花の文体に拒絶反応を示す人もいるだろう。朗読は一応駄目元で某俳優さんに録音での参加をお願いしているが、おそらく気分を込めれば1時間を超えるだろう。まずとりあえず近所の人や、K本の常連席に岸壁のカラス貝のようにへばりついている人達相手にそこまで、という気もする。区内に朗読のボランテイアグループもあるらしい。 風濤社より色校はでたが、不満があったのでやり直しをさせているという。それでも印刷された状態を見たいので向かう。印刷の場合、紙がインクを吸うので、その辺りも考慮する必用がある。やり直しをしたくない印刷会社の営業と、多少のバトルがあったようである。それでも想像したほど酷いわけではなく、金曜に改めて届く色校を見た後に案配すれば済みそうである。安心して社長、編集者と飲みにいく。 昨年この作品のビジュアル化はどうですか、と編集者が持って来た話が海外作品で、挿絵ならともかく丸ごとビジュアル化するには長い。だったらこれはどう?と私がいって決まったのが『貝の穴に河童の居る事』である。その後何かのおりに「石塚さんがやりたいっていったから」。というセリフを私は確かに耳にした。一緒に飛び降りたのに、着地寸前にクルっと私を地面側にしようとしたろ?そして編集者はいう。「次は江戸川乱歩ですかね」。腹に一物あるような笑みである。「冗談じゃないよ。正式に依頼するっていうなら考えてもいいけどさ」。何をいっているんだ私。

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